2007年7月30日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

学童保育 と 子ども教室

まだ足りません

安心・楽しい放課後へ


 「共働きや一人親家庭の子どもの放課後や夏休みを楽しく安全に」―との親の願いに応え、増え続ける学童保育。「遊びたい、活動したい」と地域の子どもが参加する「放課後子ども教室」。二つの事業の充実を求め努力する、さいたま市と吹田市のとりくみをみてみました。


全小学校に設置 連携も

大阪・吹田

 大阪府吹田市の学童保育は、一九八二年に条例制定され、児童部が所管します。二〇〇七年度は八億二千万円余の予算を計上する事業として小学校全三十六校に設置され、二千八十三人の子どもたち(五月一日現在)が通っています。

 複数学級制、養護学校に通う障害児を受け入れていますが、定員は九十人、土曜開設なし、保育時間は長期休業中は午前八時半から午後五時、対象は小学三年生までなど、多くの課題を抱えており、改善を求める運動を保護者と指導員の共同で進めています。

 一方、〇三年十二月から教育委員会社会教育部が所管する「こどもプラザ事業」が始まりました。この事業は「地域のボランティアの協力の下、子どもたちが安全で、安心して過ごせる居場所(太陽の広場)や体験活動の場(地域の学校)」として「各小学校区において実施する」(実施要綱)事業です。

 対象は六年生までとされ、「太陽の広場」は毎週水曜の放課後、「地域の学校」は土曜日。時間や開設の日数の多いところは週二回など、地域の実情に合わせて決められています。

 今年度、七百八十四万円の予算を組み三十一校で実施されています。放課後の居場所として定着しつつありますが、地域によって運営に違いがあります。

 子どもの放課後を対象にした吹田市の事業として、ほかに二億六千五百万円余の予算がついた、十館の児童館があります。午前中は幼児をもつお母さん向けに育児教室を行い、午後は小学生の遊びの場として活用され、ボランティアの協力も得て、特色ある活動を展開しています。「さらに増設を」という新日本婦人の会を中心とした運動があり、あと二館の新設を検討中です。

 吹田市でも毎日のように不審者情報が流され不安が広がっています。

 学童保育の指導員は、留守家庭の子どもたちだけでなく、どの子にも安全・安心な時間を過ごしてほしいと願い、「こどもプラザ事業」との連携を模索中です。

 フレンドと呼ばれる「太陽の広場」を支える地域ボランティアの人々と連絡をとりあいながら学童保育独自の活動も保障するなど、意見交換を大切にして、活動内容を決めているところもあります。(吹田市学童保育指導員 上垣優子氏)

基準設け補助金を増額

さいたま市

 さいたま市は昨年、学童保育の「運営基準」を埼玉県に続き策定しました。さいたま市の民間学童保育には47%の委託金・補助金アップが実現し、二年間で新設・分離による二十一カ所の学童保育が誕生しました。市内百一の小学校に百三十七カ所(公設委託七十二、民設委託六十五カ所)となり、一小学校区に複数施設は三分の一の学区に広がりました。

 今年から「放課後子ども教室」が、市内十二カ所で試行的に始まりました。設置された「推進委員会」に学童保育のメンバーも加わり、子ども教室との「連携」を探っています。

 ここ数年、学童保育の児童数は爆発的に増加し、公設の待機児童は最大で五百人を超えました。

 市議会でも党派を超えて毎回のように、「何とかしなければいけない課題」として取り上げられ、二〇〇五年策定の「次世代育成支援計画」には、(1)増設・分離による待機児童の解消(2)公立と民間の保育料格差の解消と共通の運営基準の策定(3)児童一人当たり一・六五平方メートルの生活面積を確保する―保育施設改善の三点を盛り込むことができました。

 市当局は一年間かけて当事者と協議の上「運営基準」を定め、財政措置も「行政予算の目玉」扱いで実現しました。家賃は二割からほぼ全額を補助(上限月十五万円)。公立・民間の児童一人当たりの行政投入経費を公平にするため、民間に児童割り加算を新設し、民間の保育料は平均四割の軽減となりました。

 「整備促進補助」を創設し、八施設を父母会に無償貸与して、実質的な公設化をはかり、前払い家賃、礼金、整備備品費を補助します。年度途中からの開設も認め、新設と大規模な分離を支援します。

 「運営基準」を設置したことで、学童保育の予算は、二年間で三億円増の十三億五千万円に拡大しました。厚生労働省が「ガイドライン」策定に足を踏み出した今、まだまだ課題は残しつつも、「基準」を定めることの重さを実感しています。(さいたま市学童保育連絡協議会事務局次長 加藤哲夫氏)


それぞれ拡充、推進を

 学童保育は、共働き・一人親家庭の小学生の放課後や土曜日・夏休みなどの「生活の場」です。子どもたちは年間千七百時間近く(小学校には約千百時間)を学童保育で生活しています。

急激に大規模化

 共働きが一般的となり、放課後の安全対策が求められているなかで、なくてはならない施設として増え続けています。

 今年の五月現在、一万六千六百五十二カ所、入所児童数は七十四万人となりました。入所児童は、昨年比六万人増、四年前と比べると二十一万人増と激増しています。整備が追いつかず子どもに負担を強いる問題の多い大規模化が急激にすすんでいます。

 学童保育に補助金をだす厚生労働省は、二万カ所に増やす目標を立て、大規模化の解消、補助金の大幅引き上げ(前年比42%増の百五十八億円)、適正規模も含めたガイドラインを策定(八月末予定)するなど、量的拡大と質の向上をめざした対策を取りはじめています。

 文部科学省は今年から、すべての子どもたちを対象として放課後や土曜日に学校施設を活用して遊びや活動、学習を援助する補助事業として「放課後子ども教室推進事業」を始めています。昨年度実施していた「地域子ども教室推進事業」に学習援助などの機能を追加したものです(多くが週一―二回開催の行事的事業)。

現場に戸惑いも

 厚生労働省と文部科学省は、学童保育と「放課後子ども教室推進事業」を「一体的あるいは連携」してすすめる総合的な放課後対策「放課後子どもプラン」を、すべての市町村が策定するよう呼びかけています。

 しかし、市町村の中には「これまでも連携してきたが、『一体的』とはどういうことかわからない」という戸惑いと混乱が起きています。二つの事業は「一体化」できるものではないからです。それぞれの事業の拡充を基本にしながら連携をはかっていくことが求められます。(全国学童保育連絡協議会事務局次長 真田祐氏=さなだ・ゆたか=)


ガイドライン策定へ

共産党が要求

 日本共産党は、学童保育の設置・運営の基準をつくるよう要求しつづけてきました。厚労省はガイドラインの研究を約束、こども未来財団が「放課後児童クラブにおけるガイドラインに関する調査研究」をまとめました。

 六月十四日、石井郁子議員は国会でガイドラインの検討を要求、厚労省は「参考にしたい」と答弁、八月中にも策定される予定です。

 また、学童保育と「放課後子ども教室」のそれぞれを拡充するよう求め、高市早苗少子化担当相は、「無理に一体化せずニーズに応じた展開を」と答えました。


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