2007年7月30日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

気になる就職 夏 どう過ごす

先輩たちからアドバイス


 「夏休み、何しよう」「遊んでいてもいいのかな」―。就職活動を控え、夏休みをどう過ごせばいいのか迷う学生の声を、毎年耳にします。社会人の先輩たちや、専門家のアドバイスも交え、この夏の過ごし方を考えてみました。 塚越あゆみ・平井真帆


 今や“学生の常識”となった、企業での“就業体験”、インターンシップ。ここ数年、実施企業は増え続けています。

 東京都内の私立大法学部3年生の苑子さん(20)も、参加する一人です。

 参加企業は物流関係。「学生の目で社会人のライフスタイルを見たいんです。無駄は絶対ないと信じてる」と参加の理由を語ります。「友達にはボランティアに行く子もいます。自己PRとかに、この体験が役に立つかもしれないし」

 一方、「夏休みは目いっぱい遊びます!」と言い切るのは知弘さん(21)。「手当たり次第にいろいろ手を出しても時間がもったいないし。就活が始まるまでは、僕は遊び倒します」

 今年の求人倍率は、2・14倍。ちまたでは、就職状況は“氷河期”から“買い手市場”へ急旋回していると言われています。

 とはいえ、現状はそう簡単でもありません。

 1000人以下の中小企業の採用は増えているものの、大企業の新卒採用は少ないまま。一部の学生以外にとっては、依然厳しい状況が続いています。

 就職情報サイト「リクナビ」の前川孝雄編集長は、「夏休みは就職活動が始まる秋に向けて、徐々に情報収集を始めて」とアドバイスします。

 そのひとつはイメージトレーニング。1学年先輩の就職情報サイトを見ると、就職活動の流れがわかります。もうひとつは、たくさんの情報に流されないよう、自分の「軸」をクリアにしておくこと。「人生で楽しかった経験を思い返して、自分はどんなことに興味があるのか、何にたいして夢中になれるのか、ぼんやりでもよいから考えておくとよいでしょう」

 8月中旬からは、「業界を知ろう」「どんな働き方があるの?」という、これから就職活動を始める学生向けのイベントが、各地で始まります。

 悩める学生諸君は、ふらりと立ち寄ってみてもよいかもしれませんね。


 自己PR 企業へ提出するエントリーシートには、「志望動機」のほか、「自己PR」などの記入欄が設けられています。学生時代にどんな経験をしたか、自分はどんな人間か、具体的に書くことがポイントです。


やりたいこと力の限りやる

 報道関連会社 男性(28)

 大学3年の夏は、アルバイトやボランティアをしたり…多忙でした。

 以前から報道業界にあこがれていたので、少しずつ準備だけは進めていました。

 ボランティアは、いろんな業種に携わる、おとなの姿や生きざまを垣間見ることができました。アルバイトでも、たくさんの人に出会い、初対面の人にも物おじせずに話せるようになりました。これらは今の仕事に大きく役立っています。

 今言えることは、時間がたくさんあるこの時期に、やりたいことを力の限りやりきった方がいいということ。採用する側から見ても、すごく輝いてる学生に見えるに決まってる。ダイヤモンドの原石を、体にいっぱい詰め込んでおく。それがプラスなのかマイナスなのかなんて、就職が決まってからでないとわからない。「就活のために」と最短距離を選んで自分の可能性を狭めるのでなく、今はいろんなことをためこむ時期。たとえ就活に失敗しても、その「一生懸命」がいつか役に立つと思います。

「現地で学ぶ」実際に体験を

 ファッション誌編集 女性(22)

 短大2年の初めから、アルバイトで始めたのが今の仕事です。大手出版社から内定はもらったものの、卒業後もそのままアシスタントとして2年余り。この7月、晴れて契約社員になることができました。

 お勧めするのは「現地で学ぶ」こと。やみくもに合同説明会に行っても、気分はあおられるけどやりたいことが見つかるわけではない。それより、現場で実際に体験して、見極めた方がいいと思います。

 就活は、志望と違う業種でもどんどん行ってみて。友人の輪が広がるし、情報もたくさん得られる。貴重な人生勉強になりますよ。

アルバイトに明け暮れてた

 旅行会社勤務 男性(28)

 就職超氷河期世代にもかかわらず、3年の夏休みは、就活のことは全く考えず、アルバイトに明け暮れていました。

 3年の冬、今の会社が企画したスタディツアーに参加。韓国で「従軍慰安婦」の「ナヌムの家」などを訪れ、経験したことがないくらいに感動したことが決定打となり、「この感動をもっとたくさんの人に伝えたい」と4年の春に試験を受けました。

 周りに流されず、焦らず、自分のしたいことを見つければよいと思います。

進路を決めた保育園3週間

 保育士 女性(22)

 大学に入ったときは、小学校の先生か、幼稚園か、保育園か、まだ迷っていました。2年のとき幼稚園に実習に行き、「なんか、やりたいことと違う」。4年の夏、保育園で3週間、ボランティアとして子どもたちと過ごしたことで、決定的に進路が決まりました。「この保育園の先生に、絶対なりたい!」。気持ちが固まり、残っていた試験もがんばることができました。

強み持とうとがんばったが

 IT関連企業 男性(23)

 大学3年のころ、「自分の強みを持たなきゃいけない」と、コンピューターのプログラミングの勉強を始めました。夏には、「インターン」として2週間、システム開発の企業で働きました。でも、いざ就職してみると、「用件を的確に報告する」「上司に仕事上の問題点をきちんと伝える」といったコミュニケーション能力が思った以上に必要でした。

 企業は学生に、そんなに高い技術は求めていません。

 むしろ、学生のころは、もっと恋愛したり、バイトしたり、コミュニケーション能力をつけたほうがよかったかもしれません。


お悩みHunter

留学するための資金なかなかたまらない

  大学を卒業したら留学したいと思っています。でも、なかなか資金がたまりません。バイトは三つ掛け持ちしていますが、まだ目標の半分にもいきません。できるだけ無駄遣いをしないようにしているのですが、ついお金を使ってしまいます。(21歳、女性。東京都)

原点忘れず、手段は柔軟に

  貯金額は、収入と支出の差額ですから、貯金を増やすには、収入を増やすことと支出を削ることが考えられます。

 大学に在学して三つのアルバイトを掛け持ちしているあなたには、これ以上収入を増やすのは難しいでしょう。支出を減らすのに効果的な方法は、レシートを張り付けるなどの簡単なものでもいいですから、家計簿をつけることだと思います。一つ一つの支出が本当に必要だったかチェックしてみてください。

 以上はお金の話ですが、一つの目的を達成しようとするときに大切なのは、(1)「目的」の原点を忘れない、(2)「手段」は柔軟に考えることだと私は思っています。

 たとえば、なぜ留学したいのか、留学によってなりたい自分とはどんな自分なのか、原点に返って考えてみてください。語学習得が目的であれば、卒業後すぐに希望する留学ができなくても(1)留学時期を延ばす(2)留学期間を短縮して費用を節約する(3)国内でのレッスンを集中的にうける(4)特定の外国人と交流できる場所でバイトやボランティアをするなど、手段を柔軟に考えることもできるのではないでしょうか。

 こうして模索する間に、「目的=なりたい自分」の姿も変わってきます。ですから三つ目に、(3)目的を進化させること、も大切です。目標に向かって努力しているからこそぶつかる壁に、真剣にしかも柔軟に立ち向かうことで、あなたの新しい可能性が開かれることを祈っています。


弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。


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