2007年7月24日(火)「しんぶん赤旗」

独でアフガン撤退の世論

“テロの危険高める”


 【ベルリン=中村美弥子】アフガニスタンで旧タリバン政権勢力が力を盛り返し、治安の悪化が進むなか、ドイツ国内世論や議会内で連邦軍兵士のアフガン駐留を疑問視する動きが広がっています。連邦議会は今秋、アフガン駐留の一年延長の可否について採決します。


 ドイツは現在、国連安保理決議一三八六(二〇〇一年十二月)に基づいて北大西洋条約機構(NATO)が主導するアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)の一員として兵士約三千人をアフガン北部に駐留させ、空中偵察を目的とする多目的軍用機トーネード六機を南部に展開させています。

 さらに、国連の枠組みの外で米国主導で行われている「不朽の自由作戦」にも特殊部隊兵士百人を投入しています。

 駐留の長期化にともない、〇一年の駐留開始以来、これまでに兵士二十一人が死亡しています。

 ドイツ政府は激戦地の南部に比べて北部は治安が安定している、独部隊は治安維持で重要な役割を果たしていると説明してきました。同時に、学校や診療所、道路の建設など開発援助の必要性も説いてきました。

独民間人に被害

 メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は連邦軍のアフガン駐留延長は必要だと主張。社会民主党(SPD)のシュタインマイヤー外相も今月初め、雑誌のインタビューで、「アフガン復興は期待されたより時間がかかっている」といら立ちをあらわにしながらも、アフガンの治安部隊や警察を訓練するために独軍の増派を求めました。

 ドイツのアフガンへの関与は、兵士だけでなく、復興作業にかかわるドイツ人にも危険を及ぼしています。タリバンは独軍への攻撃を警告し、部隊の撤退を要求。先週、復興作業にかかわるドイツ人二人がタリバンに拉致されるという事件が起き、一人の死亡が確認されています。五月には兵士三人が自爆テロの犠牲になりました。

 こうしたなか、連邦議会与党のSPDの議員から、独軍のアフガン駐留の見直しを求める声が上がっています。コルボウ副議員団長は、部隊が作戦を遂行するなかで民間人の犠牲が増加していることに懸念を表明。アンネン議員も、民間人犠牲者の続出は、「テロリストが新たな支持者を獲得することを助けている」と述べ、米主導で掃討作戦をすすめる「不朽の自由作戦」からのドイツ軍兵士の離脱を求めています。

 当初から独連邦軍のアフガン派遣に反対してきた左翼党のラフォンテーヌ議長は、派遣の影響で独国内でテロの危険が高まったと批判。「アフガンでの戦争と人権は両立しない」として、独部隊の撤退を求めています。

 シュレーダー前政権時代に与党としてアフガン派遣を承認した90年連合・緑の党は、駐留延長をめぐる党の立場を明確にするため、九月に特別党大会を開くことを決定。これは、アフガン駐留に疑念を深める同党の党員が要求したものです。

撤退支持6割超

 ドイツ国内の世論は、アフガン撤退を求める声が優勢です。N24テレビが五月二十二日に発表した世論調査では、撤退支持が68%に上りました。その翌日の『シュテルン』誌(電子版)の調査では、回答者の63%が撤退を支持しました。

 今月七日の最新の世論調査結果では、撤退支持は66%で、依然として六割を超えました。この調査結果で興味深いのは、連邦議会の最大与党、CDU支持者の55%が撤退を求めていること。アフガン撤退要求が国民の広い層から出されていることを示しています。


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