2007年7月22日(日)「しんぶん赤旗」

原発“安全神話”大本からただせ

共産党が一貫して要求


 新潟県中越沖地震によって、柏崎刈羽原発で、耐震設計時の想定の三・六倍もの揺れが発生し、原発構内に多数の亀裂や地盤沈下が起き、火災対策の不備が露呈するなど、“安全神話”にもとづく日本の原発政策に衝撃を与えています。日本共産党のこの間の取り組みと合わせてみてみました。


防災不備

国会でいちはやく指摘

政府 改善に動く

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(写真)柏崎刈羽原発を視察する、日本共産党の志位和夫 委員長(中央)と吉井英勝衆院議員(右)=18日

 地震直後に発生した柏崎刈羽原発(東京電力)の変圧器火災では、作業員が初期消火に失敗し、地元の消防隊による鎮火まで約二時間かかりました。原発の火災対策の不備が大問題になっています。日本共産党は、問題点を早くから指摘し、改善に向けて積極的な役割を果たしてきました。

 「私が警告したとおりのことが起きてしまった」というのは、日本共産党の吉井英勝衆院議員です。今回の地震発生から約一カ月前の六月十四日の国会質問で、同原発の例をあげて原発の防災対策の不備を指摘し、改善を求めていました。

 吉井議員は質問で、国際原子力機関(IAEA)の運転安全調査団が同原発を査察して、東電が約五十人からなる自衛消防隊を設けているものの、「消防署に援助を得る際の消火計画が定められていない」「団員は、実際の火を消す訓練を受けていない」などと指摘した二〇〇五年の報告書を紹介。自衛消防隊を設けても、十分な訓練がなくては実際に機能しないと、体制の整備を求めました。

 東電は、その後のIAEAによる追跡調査で改善が確認されたとしていました。しかし今回の火災で、吉井議員が警告していた不備が実証される結果になりました。

 全国の原子力施設での火災発生は、消防庁が把握しているだけで、一九六七年から〇七年三月までの四十年間で百八件。東電の三原発(福島第一、同第二、柏崎刈羽)で計四十六件、そのうち柏崎刈羽原発は十五件です。同原発では、今年に入ってから五件相次いで発生しています。

 六月十四日の国会質問で吉井議員は「原発火災は、原発の制御や放射能汚染対策、大量の避難など、通常の工場火災とは異なる難しさがもともとある」として、全国の原発での火災対策の充実を求めました。菅義偉(すが・よしひで)総務相は「細心の注意をはらって消防防火体制をとっていかなければならない。絶対にそうした事故が発生しない対応策を考えたい」と答えていました。

志位氏の視察 テレビで反響

 「外部に消火を頼るのは、原発としては失格です」。七月十八日に柏崎刈羽原発を視察し、黒く焼け焦げた変圧器を目にした日本共産党の志位和夫委員長は、同原発の副所長に防災体制の不備をただしました。IAEAの報告書が「発電所には火災防護を専門に担当するグループがない」と指摘していることをあげて、グループを設置するよう要請しました。

 この問題を志位委員長は、同日夜に出演したテレビ朝日系「報道ステーション」でもとりあげて、大きな反響をよびました。志位委員長が「原発が自力で消火できないとなったら、非常に深刻な事態になるわけです。この根っこには、原発は安全だという安全神話がある。ここを大本から変えないとだめだと思います」と話すと、古舘伊知郎キャスターは「どうも志位さんのお話を聞いたうえでは、根本的な問題があったようですね」と応じました。

 志位委員長の指摘を追うように、マスコミもIAEA報告書について報道。今回の火災での消防署への連絡の遅れや、防火服を着用しないなど、対策のずさんさが次々と明らかになるなか、東電は二十日、三原発に自前の化学消防車と専用操作技師を配置すると発表しました。

 経済産業省も同日、原発と核燃料再処理工場を保有する十一社にたいして、火災発生時の人員確保、化学消防車の配備、消防署との専用回線の確保など、自主消防体制の強化へ具体策を検討するよう求めました。(中村秀生)

抜本的な地震対策くり返し求める 

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(写真)柏崎刈羽原発が、設計時の想定を超す大地震に襲われる可能性を指摘した本紙記事(2004年12月19日付)

 柏崎刈羽原発を視察した志位委員長は、設計値を大きく上回る揺れが観測されたことについて、「『想定を超えた』は、原発では許されない」と、耐震基準の見直しを強く求めました。

 日本共産党は、現在の原子力発電が、技術的にも安全性が未確立であるにもかかわらず、政府・電力会社が、“安全神話”をふりまいて、ずさんな管理・運営や建設を進めていることを厳しく批判してきました。とりわけ、世界の地震の一割が集中する日本列島に次々原発を建設することに対しては、政策の無謀さを指摘し、建設をやめるよう住民とともに運動してきました。建設が強行された原発に対しては、地震対策を抜本的に強化するように提起し続けてきました。

 一九八一年二月、衆院予算委員会で、不破哲三委員長(当時)は、震災対策の一環として中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)の問題をとりあげました。当時、浜岡原発では1、2号機が稼働しており、3号機の建設計画が進められていました。

 その三年前の七八年に、浜岡原発は東海地震の震源域の真上に位置することが明らかにされていました。不破氏は、浜岡では震度7が予想されていることを明らかにし、震源域の真上に原発を建設することの無謀さを指摘し、通産省(現・経済産業省)が建設を認可したことを「大ミスだ」と批判しました。しかし、政府は3号機どころか、4、5号機と増設を認めてきました。

 九五年の阪神・淡路大震災後、原発の耐震性が大きな問題になりました。観測された岩盤の揺れが、原発の設計で想定している揺れを上回っていたからです。

 原発の耐震基準の見直しを求める声は各方面からあがりました。しかし、政府の原子力安全委員会は同年九月、「現行の耐震設計指針は妥当」との結論を出しました。

 昨年に改定された耐震指針は事実上、対策を電力会社まかせにしており、具体的な耐震補強はほとんど進んでいません。

 日本共産党は国会で、くりかえし“安全神話”にたった原発推進政策を厳しく批判し、原発の耐震指針の抜本的な見直しを求めてきました。

 日本共産党は、今回の参院選挙の個別・分野別政策でも、「東海地震の想定震源域の真上に浜岡原発が存在するような政府・電力会社の原発立地のあり方は、無謀としかいいようがありません」と指摘。原発の総点検を行い、老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせることを掲げています。(前田利夫)



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