2007年7月19日(木)「しんぶん赤旗」

民主党

憲法問題 争点化避けるのは

「提言」で海外の武力行使容認へ


 自民党が政権公約のトップに二〇一〇年の改憲発議を掲げるなか、これに対抗する旗印を立てられる政党はどこかが問われています。

 日本共産党は安倍・自民党の改憲の狙いが「アメリカと肩を並べて武力行使をすることにある」と暴露。「世界の宝」ともいうべき憲法九条を守るため、思想、信条、党派の違いを超えた共同を発展させるために奮闘しています。

 一方、民主党はどうでしょうか。「憲法改正より生活維新」などと年金問題を前面に出して、改憲問題の争点化を避ける姿勢を示しています。

 しかし、決して改憲に消極的な立場ではありません。むしろ、先の通常国会で成立した改憲手続き法をめぐって自公民共同を一貫して主導するなど、自民党と改憲姿勢を競い合い、その立場を深化させた“実績”があります。

 「国民生活が向上するなら憲法改正すればいい」「護憲とか改憲とかいう形式的対立はよくない」。民主党の小沢一郎代表は十一日の日本記者クラブ主催の党首討論でこうのべ、改憲を排除しない姿勢を明確に示しました。同党は、参院選のマニフェストの各論末尾で「2005年秋にまとめた『憲法提言』をもとに…自由闊達(かったつ)な憲法論議を各地で行(う)」と改憲への積極姿勢を示しています。

改憲より改憲的

 民主党にとって改憲の方向を明確にする転機となったのは、〇三年十月の総選挙です。このときのマニフェストに「憲法を『不磨の大典』とすることなく…国民的な憲法論議を起こし、『論憲』から『創憲』へと発展させます」としました。経済同友会から「国家像や政策体系がやや不明確」などとする「提言」を受け、当初マニフェストに記述のなかった「改憲」を盛り込んだのでした。

 「創憲」とは何か―。

二〇〇五年二月に『新憲法試案

 尊厳ある日本を創る』(PHP研究所)を出版した鳩山由紀夫衆院議員(現幹事長)は、明解にその意味を述べています。

 「『創憲』は新しい憲法を創ることを意味するから、実は『改憲』よりも『改憲』的なのである」

 「創憲」が、民主党の「政権公約」に盛り込まれたことは、まさに「改憲政党」への“画期”となりました。

 自民党は、その直後に発表した政権公約「小泉改革宣言」において、「二〇〇五年に憲法草案をまとめ、国民的議論を展開する」としたのです。

九条二項の改定

 民主党「創憲」マニフェストから自民党と民主党の改憲構想づくりでの“競い合い”が始まり、自民党が〇五年十月に「新憲法草案」を発表するのに合わせて、民主党も「憲法提言」をまとめました。

 「提言」は、自民党が「新憲法草案」で九条二項の削除と「自衛軍」の保持を掲げたのに対し、「国連憲章上の制約された自衛権」の明記を主張しました。国連憲章上の自衛権には、海外での武力行使となる集団的自衛権(国連憲章五一条)が含まれます。

 また「提言」は、「国連多国籍軍の活動や国連平和維持活動への参加を可能にする」として、海外での武力行使に道を開いています。

 戦力不保持と交戦権否認を定めた九条二項のもとで海外での武力行使は禁じられ、集団的自衛権の行使も許されないとされてきました。

 「提言」は自民党「新憲法草案」と同様に九条二項の改定を明確に志向するものです。

 安倍流改憲路線をストップさせたいと思って民主党に投票することは、力にならないばかりか、逆に改憲の流れを、少し形を変えて促進することにつながりかねません。(中祖寅一)



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