2007年7月14日(土)「しんぶん赤旗」

主張

緊急1兆円プラン

ストップ貧困 まずここから


 「おにぎり食べたい」と日記に書き残して、北九州市の五十二歳の男性がひっそり息を引き取りました。昨年末から受けていた生活保護を四月に打ち切られ、そのわずか二カ月後のあまりにも痛ましい結末です。

 男性は以前タクシー運転手をしていましたが、内臓疾患などで働けなくなり、生活保護を受けるようになりました。今春、役所は男性に「就労指導」し生活保護を打ち切りました。男性は日記に「働けないのに働けといわれた」と記しています。

 こうした冷酷な行政が、「福祉から雇用へ」という聞こえのいい掛け声で進められています。

失った「福祉の心」

 安倍内閣は「福祉から雇用へ」の看板を、生活保護や母子家庭に対する支援を切り捨てる口実にしています。塩崎官房長官が経済財政諮問会議に提出した資料によると、母子家庭の「福祉から雇用へ」の「支援策」の第一の柱は、母子家庭の命綱である児童扶養手当の削減です。

 安倍内閣は児童扶養手当の大幅削減の無慈悲な切り捨てを、母子家庭の「支援」という看板で、いわば「胸を張って」進めようというのです。

 親切を装って命綱を奪う、これほど悪質なやり方はありません。

 「福祉の心」を失った自民党、公明党の政治が貧困をはびこらせ、行政の「福祉の心」もさび付かせて国民を苦しめ、命さえ奪っています。

 生活保護や母子家庭だけではありません。

 政府の医療切り捨てによって医療から見捨てられる「医療難民」が急増しています。週刊誌も「棄てられるがん患者」(『アエラ』五月十四日号)、「『患者漂流』の悲惨現場」(『週刊ポスト』六月十五日号)など、大きく取り上げるほどです。その中で「新たな『棄民』ではないか」「まさに“貧乏人は死ね”といわんばかりの事態」とリポートしています。

 介護では施設でも在宅でも、人間らしく生きる最小限のサービスまで奪われ、「介護難民」を生み出しています。政府が昨年決めた療養病床の大幅削減について検討した国会図書館の報告書は、新たな「『介護難民』発生の懸念」を表明しています。

 貧困が広がったときこそ社会保障の出番です。ところが、どの分野を見ても社会保障は切り捨てと負担増が横行しています。

 こうした事態を打開する第一歩として、日本共産党は「緊急福祉1兆円プラン」を提案しています。

 高すぎる国保料は一人当たり一万円の値下げを、介護保険は利用料と保険料の減免制度を国の制度としてつくらせる、子どもの医療費はせめて小学校入学まで国の責任で無料に、障害者自立支援法の負担増を撤回させる、生活保護は老齢加算と母子加算を復活し児童扶養手当の削減計画は中止させよう―。必要な財源は、五つの項目をすべて実行しても一兆円です。

十分やりくりできる

 いずれも草の根の住民運動の要求と一致する内容であり、部分的には自治体で実現している課題です。国にできないはずがない、野党でも実現させられる提案です。

 政府に財源の一兆円が出せないとは言わせません。政府はアメリカのためにグアムの米軍基地などにポンと三兆円、財界には五兆、六兆の減税を気前よく差し出そうとしています。一兆円は国の一般歳出五十兆円のわずか2%です。政治の姿勢しだいで十分やりくり可能です。

 参院選で日本共産党を前進させ、政府に「緊急福祉1兆円プラン」を実行させようではありませんか。



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