2007年7月4日(水)「しんぶん赤旗」

安倍内閣の重大な危機


 久間章生防衛相の辞任は、昨年十二月、不透明な事務所費の支出をめぐる問題で佐田玄一郎行革担当相が辞任したのに続いて、安倍内閣で二人目の閣僚の辞任です。首相の任命人事では、本間正明政府税制調査会長が同月、官舎での女性同居問題で辞任したことを含め三人目です。

 今年五月末には松岡利勝農水相が、事務所費問題と緑資源機構をめぐる談合疑惑の中で、現職閣僚としては戦後初めて自殺しました。

 政権発足からわずか九カ月で二人の閣僚が辞任したのは、一年間で閣僚三人が辞任しおよそ一年という短命で幕を閉じた森内閣以来です。安倍内閣は重大な危機に直面しています。

 これら閣僚の辞任騒動の中で、安倍晋三首相は任命権者としての責任をまったく果たしてきませんでした。松岡農水相については、不誠実な国会答弁に批判が相次いでも「適切に処理している」とかばい続けました。

 今回の久間発言に対しても、安倍首相は「米国の考え方について紹介したと承知している」(六月三十日)と久間氏を擁護。野党による久間氏の罷免要求を拒否してきました。

 二日には、国民の批判の強まりと、選挙を前にした与党内からの突き上げの厳しさを前に、「誤解を与える発言は厳に慎んでもらいたい」と注意するなど“軌道修正”を余儀なくされましたが、罷免の要求に背を向け続けてきたのです。

 この中で、首相としての任命責任とともに、世界で唯一の被爆国の首相として、安倍氏自身の資格が厳しく問われています。

 久間氏自身、「不用意な発言だった」「(被爆者の)心情を思うとき大変申しわけなかった」などとのべましたが、本質的な反省はしていません。それどころか「今度の選挙で足を引っぱるようなことになっては大変申し訳ない」などと、参院選対策を辞任の理由にしています。久間氏を罷免しなかった首相の責任がいっそう問われます。

 重大なことは、安倍首相は、理由いかんによっては核兵器の使用も許されるという「久間発言」と同じ立場に立っていることです。

 安倍氏は小泉内閣での官房副長官時代、「いかなるものであっても核兵器と名がつけば憲法上持てない、憲法違反だということは、憲法の解釈としては私どもは取らない」(二〇〇二年五月二十七日、参院予算委員会)とのべています。

 核兵器という非人間的兵器の使用が国際法上絶対に許されないことを世界に向けて主張し続けることは、唯一の被爆国の政治家としての基本的責務です。安倍氏はこのことを理解しないどころか、こともあろうに一切の戦力の不保持を宣言した憲法九条のもとで、核兵器の保持が許されると主張しているのです。この意味で、「罷免せず」は確信にもとづく判断だったといえます。

 歴史わい曲、憲法否定に加え、核兵器保持の容認という安倍氏の立場は参院選挙での国民の厳しい審判を受けざるをえません。(中祖寅一)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp