2007年6月29日(金)「しんぶん赤旗」

福知山線脱線

「日勤教育」が事故誘発

事故調最終報告 JR西の安全管理批判


 百七人が死亡したJR福知山線脱線事故(二○○五年四月、兵庫県尼崎市)で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は二十八日、安全よりも運行を優先させていたJR西日本の経営体質と安全管理体制の問題点を浮き彫りにする最終報告書をまとめ、冬柴鉄三国交相に提出しました。

 同報告書は、死亡した運転士=当時(23)=によるカーブでの速度超過について「日勤教育を懸念するなどして、注意が運転からそれたことによるものと考えられる」と指摘。ミスをした運転士にペナルティーと受け止められる「日勤教育」や懲戒処分を科すことは「逆に事故を誘発する恐れがある」と、JR西日本の運行管理や安全管理体制を強く批判しました。

 国鉄民営化後、最悪の惨事となった同事故の原因をめぐって、事故調はJR西日本の安全管理体制にも一定踏み込んで分析。建議(提言)や所見として、非懲罰的な報告制度の整備や、運転士の注意力をそぐ運転中の赤鉛筆によるメモとり禁止や列車無線の交信制限などの再発防止策を求めました。

 報告書によると、JR西日本はATS(自動列車停止装置)の設定ミスや速度計の誤差などの対策を怠り、ブレーキが無作動になる重大な不具合も放置していました。

 感電の恐れがあるのに、事故後すぐに架線の停電措置を取らなかったJR西日本を「列車の運行を優先し、人命への配慮が欠けた」ときびしく批判。余裕のないダイヤでの運行など「万全の体制を取ってきたとは言いにくい実態がある」と、安全を軽視する企業体質にも言及しました。

 先送りした新型ATSの整備についても、「優先的に行うべきであった。使用開始されていれば、事故の発生は回避できた」と判断。しかし、ATS設置を義務化していなかった国の安全監督の検証はおこなわれず、事故調の限界を示しました。


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