2007年6月26日(火)「しんぶん赤旗」

主張

社保庁解体法案

国の責任も“解体”するのか


 「消えた年金」「宙に浮いた年金」で揺れる社会保険庁に問い合わせの電話が殺到し、なかなかつながりません。つながらない場合は最寄りの社会保険事務所へと社保庁は言いますが、そこも長い行列です。

 宮城・仙台東、東京・板橋、立川、愛知・名古屋北、大阪・今里、豊中、広島・広島南、沖縄・那覇など各地の社会保険事務所では、一時間並んでも窓口にたどりつけないほどの混雑が起きています。

 国民が不安の渦に巻き込まれているさなかに、安倍内閣と自民党、公明党は社保庁の解体・民営化法案を参院で採決しようとしています。これほど無責任なことはありません。

天下りも保険料流用も

 国民の保険料をあずかる社会保険庁のあまりにもずさんな年金管理には、だれもがあきれ、心の底から怒っています。

 厚生労働省は、少なくとも一九九七年の「基礎年金番号」の導入に向けた作業で、「宙に浮いた」年金記録が膨大な数に上ることをつかんでいました。

 安倍首相は九九年に自民党の社会部会長に就き、与党厚生族のトップの座を占めています。「知らなかった」では済まない立場です。安倍内閣としても、二月に五千万件を超える「宙に浮いた」年金記録があることを公式に発表したにもかかわらず、本格的なとりくみを先送りしてきました。

 この問題でもっとも重要なことは、歴代政権と厚生労働大臣、社会保険庁がないがしろにしてきた「国の責任」を文字通りまっとうし、“被害者を一人も残さない”立場で、一刻も早く解決を図るために全力をそそぐことです。

 このことに行政として直接責任を負っている社保庁を、安倍内閣と与党は六つに分割し、民間委託して解体してしまおうとしています。

 そうして新たにつくる「日本年金機構」の役員は、社保庁長官が負っている国会での答弁義務が免除されます。天下りも自由化され、保険料の流用も恒久化してしまいます。

 社保庁の抜本改革が必要であることは、はっきりしています。とくに保険料の流用をやめ、天下りを禁止することは改革の要をなす課題です。ところが安倍内閣の法案は、これらにことごとく逆行しています。

 解体・民営化は国が責任を持って問題解決に当たることを不可能にする責任放棄の「法制化」であり、国の責任そのものを「解体」し「宙に浮かせる」最悪の責任逃れです。

 「こんな状態で解体、再編されるというのは責任逃れとしか思えません」。安倍内閣と与党は、参院の厚生労働委員会の参考人質疑で、七年分の保険料の納付記録が「消えた」女性が吐露した切実な言葉を、心に刻みつけるべきです。

解決に知恵と力を

 数十年の単位で国民から保険料をあずかり、安全・確実な運用を図り、正確な記録を保証する体制を確立するには、国の責任を根幹に位置づけることが決定的に重要です。

 自公と民主党のように責任を相手方の大臣経験者に押し付ける責任のなすり合いや、解体・民営化で責任を投げ捨てるようなことをやっている場合ではありません。

 いま大切なのは、国民の不安に応えてすべての受給者・加入者にただちに納付記録を送ること、本人の説明に合理性があり、否定する反証がない場合は支給対象にするなど、国の責任で一日も早く問題を解決するために知恵と力を尽くすことです。



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