2007年6月21日(木)「しんぶん赤旗」

「君が代」不起立 解雇裁判

元教員の請求棄却

東京地裁判決


 職務命令に反して卒業式の「君が代」斉唱時に起立しなかったことを理由に定年後の再雇用を取り消され、事実上解雇された元東京都立高校の教員十人が、都を相手に地位確認と損害賠償などを求めた裁判の判決が二十日、東京地裁でありました。佐村浩之裁判長は、「起立・斉唱の職務命令は思想・良心の自由に反しない」として原告の請求を棄却しました。原告側は不当判決だとして控訴する意向を表明しました。


 判決は、「君が代」のピアノ伴奏を拒否した教師への処分を認めた今年二月の最高裁判決を引用し、「日の丸・君が代」を強制するために都教委が二〇〇三年に出した通達(10・23通達)と校長の職務命令について「原告らの精神活動それ自体を否定するものとはいえない」との判断を示しました。

 通達と職務命令は教育への不当な支配を禁じた旧教育基本法一〇条一項に反するとの原告側の主張については、「必要かつ合理的な関与・介入は禁止されない」として認めませんでした。

 都がいったん再雇用の合格通知を出しておきながら、新学期の直前に取り消したことについても、「不起立行為をもって勤務成績の良好性に欠けると判断したことは不合理ではない」とし、都側の主張を全面的に認めました。

「最悪の判決」

原告側弁護団が批判

 都立高校元教員らの請求を棄却した東京地裁判決を原告側弁護団は「最悪の判決」と批判しました。

 都教委が起立・斉唱を強制し、全校長に職務命令を出させ、卒・入学式に多数の職員を派遣して監視したことについて、判決は「やむを得ないことであった」としています。秋山直人弁護士は「戦前の反省に基づいて行政や政治権力が教育への不当な支配をしてはならないとした旧教育基本法一〇条一項の趣旨をまったく無視するものだ」と厳しく批判。「四十数秒間起立しなかったことだけをもって、都教委は再雇用を取り消した。判決はそれを認め、不起立はデモなどと同じ、示威行為だとしている。事実を見ない不当な認定だ」とのべました。

 尾山宏弁護団長は、「二月の最高裁判決に影響、支配されたふがいない判決だ。独自に検討し判断した形跡がまったくない」と指摘。「これにめげることなく、これからも控訴審やほかの裁判で思想・良心・信教の自由、教育の自由の民主主義における大切さを主張していきたい」と決意をのべました。



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