2007年6月21日(木)「しんぶん赤旗」

主張

教育3法成立

憲法を力に国家介入を許さず


 自民、公明の与党が強行成立させた改悪教育三法は、教育への国家介入を強める改悪教育基本法の具体化をはかるものです。安倍政権が、教育基本法改悪につづき教育三法でも、反対や慎重審議を求める国民の声を無視して強行成立させたことは、民主主義にも、理解や納得を重んじるべき教育の条理にも反するものとしてきびしく抗議します。

競争原理との矛盾

 改悪教育基本法の成立とその具体化をはかるという安倍政権の「教育再生」は、改めて国民との矛盾を深めています。

 具体化の一つ、四月に実施された「全国いっせい学力テスト」(全国学力・学習状況調査)は、学校の序列化につながると批判されてきました。

 自治体のなかには、“教育への競争原理の持ち込みと子どもたちの豊かな人間関係の土台づくりは両立しない”と、全国いっせい学力テストに参加しなかった教育委員会もあります。

 実際、テストの点数をあげようと、町ぐるみで事前対策にあたる教育委員会が出るなど弊害も出ています。しかも、民間企業に委託された採点作業で、解答の正誤の判断基準が変わる混乱が起こっています。作業にたずさわる三千人の労働者のうち、二千七百人が派遣労働者です。日本共産党の井上さとし参院議員の質問に、伊吹文明文部科学相も実態を認め、「不利益がないよう、もう一度解答を見直すよう指示している」と、答えています。

 テストの一つひとつの解答に、子どもたちの思いや考えがつまっています。その採点作業を、学校現場や教育の専門家と切り離されたところで行っているために、混乱が起きています。点数のみを競い合い、学校の序列化のためにおこなわれている全国いっせい学力テストがもつ問題点の一つが露呈しました。

 成立した教育三法は、義務教育の目標に「愛国心」などを持ち込み、教員への統制を強化し、自治体の教育委員会にたいする文部科学相の「指示」「是正」の権限を盛り込んでいます。国家統制を強めるやり方に、与党推薦の公述人も「現場は抑圧されることが強くなり、意欲をなくしてしまうのではないか」とのべています。教育の自主性、児童生徒の内心の自由という教育にかかわる憲法の原則を踏みにじる教育三法に教育関係者は、強い懸念をもっています。

 安倍晋三首相は十九日の参院文教科学委員会で自民党議員から「戦後レジーム(体制)からの脱却」について問われて、「国を愛する心を子どもたちに教えていかなければ、日本はいつか滅びてしまう。今こそ教育再生が必要だ」とのべています。

 安倍首相が「教育再生の参考にする」といって、文部科学省が委託事業として採択したのは、「日本の戦争はアジア解放のためだった」とする靖国神社の主張とまったく同じ戦争観にたつ「靖国DVD」でした。過去の日本やドイツの戦争を侵略戦争と認めることは戦後の国際社会の土台であり、根本原則です。「靖国DVD」は、植民地支配と侵略への反省をのべた村山首相談話など政府の立場にも反し、批判の声があがっています。

子どもの成長を中心に

 教育三法は成立しましたが、私たちの手には憲法があります。日本共産党は、参議院選挙政策でものべているように、国が介入する競争・ふるいわけの教育に反対し、憲法に立脚した教育をすすめることを強くよびかけていきます。



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