2007年6月19日(火)「しんぶん赤旗」

命削って勝ち取った

墓前に報告したい

トンネルじん肺訴訟和解


 「死んでいった仲間のことを思うと涙が…」「じん肺は治らないが、もう患者はださないで」――国にじん肺対策の転換を約束させた全国トンネルじん肺根絶訴訟の原告、遺族は声を詰まらせて、命を削ってかちとった国との「合意書」の喜びを語りました。


 十八日午後、厚生労働省で記者会見した八木沢義昭原告団事務局長は「国相手に勝利できるのか不安があった。たいへんな苦しみのなかの(国との)勝利和解に、胸のうちは夢じゃないかという思いです。最初の(じん肺)賠償請求から十七年目。この会見のときにも、仲間がまたひとり亡くなっているかもしれないと思うとつらい。この合意を仲間の墓前に報告したい」と言葉を詰まらせます。

 同原告家族会の山崎眞智子会長は「きょうは一生忘れることができない記念の日。亡くなった人のことを思い出してしまい、涙がとまりません。いまじん肺にかかっている人は、もう治りません。合意をちゃんと実行して、患者をださないようにしてほしい」。

 船山友衛・全国原告団長は「合意の中身は意義深いと思っている。しっかり、国、ゼネコンが(合意を)本当に守っているかを監視していきたい」と語りました。

 小野寺利孝弁護団長は「じん肺の患者がいのちがけで訴えたじん肺対策を、世論と国会と司法の力で国に転換させた歴史的な合意書だが、これまでに二百人を超える原告が亡くなった。いのちがけのたたかいが政府を動かした。迅速な実行を求める」と強調しました。


和解合意骨子

 トンネルじん肺訴訟の原告が十八日、国と和解合意した主な内容は次の通り。

 一、粉じん障害防止規則を改正し、掘削作業中の換気装置による換気などの措置の実施を事業者に今年度中に義務付けることを検討し、結論を出す。

 一、粉じん濃度測定を事業者に今年度中に義務付けることを検討し、結論を出す。

 一、トンネル建設工事のうち、コンクリート吹き付け、掘削などの作業で、電動ファン付マスクを使用させることを事業者に今年度中に義務付けることを検討し、結論を出す。

 一、発破退避時間について、適切な退避時間を確保することを事業者に今年度中に義務付けることを検討し、結論を得る。

 一、トンネル建設工事でのじん肺対策について、原告の意見を聞く場を持つ。

 一、原告は、全国の各裁判所に起こしている国を被告とする訴訟で、請求を放棄する。


 トンネルじん肺訴訟 新幹線や高速道路など公共工事のトンネル建設に従事してじん肺になった元作業員らが国やゼネコンに損害賠償を求めた訴訟。ゼネコンに対する訴訟は、企業側がじん肺患者に、一人当たり九百万―二千二百万円を支払う条件で一部和解が成立しています。国に対しては二○○二年十一月以降、全国十一地裁で訴訟が起こされました。昨年七月から東京地裁など五地裁で賠償責任を認める判決が相次ぎ、国側が控訴していました。十一地裁に起こされた訴訟は現在、二次提訴も含め四高裁(東京、仙台、高松、福岡)と十地裁(東京、札幌、仙台、新潟、長野、金沢、広島、松江、松山、熊本)で審理が係属しています。


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