2007年6月16日(土)「しんぶん赤旗」

高知地裁 国の違法認める

中国「残留孤児」訴訟

賠償、時効で棄却


 終戦の混乱の中で中国東北部(旧満州)に置き去りにされた中国「残留日本人孤児」らが国に「早期帰国義務違反と自立支援義務違反」があったとして一人当たり三千三百万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟で、高知地裁と札幌地裁の判決が十五日ありました。

 高知地裁(新谷晋司裁判長)は、国に「早期帰国義務違反」があったこと、原告らを「外国人として取り扱ったことは違法である」と認めました。しかし、賠償請求権は時効で消滅したとして、請求を棄却しました。同日、全国原告団連絡会と同弁護団連絡会は東京・霞が関の厚生労働省内で記者会見して「実質的な原告勝訴の判決」とする声明を発表しました。

 新谷裁判長は、旧満州への農業移民は国防の一翼を担わせる目的で送出したものと指摘。その結果、残留邦人を日本へ早期に帰国させる義務(召還義務)が国にあったし、また、所在不明となった中国残留邦人の国籍、所在を調査する義務(調査義務)などがあり、それを怠った国の義務違反を明確に認めました。原告五十六人のうち、十七人については国籍調査義務違反により帰国が遅れたと認定。また十七人を含む四十一人は外国人扱いされるなど、精神的苦痛を受けたと具体的に認定しました。

 一方、原告が主張する自立支援義務や「普通の日本人として人間らしく生きる権利」の法的根拠は「甚だ曖昧かつ漠然」と退けました。また、国の召還義務などの違法行為で生じた損害賠償の成立は認定しつつも、訴えを棄却しました。

 判決の後の記者会見で、藤原充子弁護団長は「訴訟から三年八カ月。判決は国の義務違反を認め、国家賠償を命じた神戸地裁の判決につぐ画期的なもの」と話しました。

 原告の一人は「私たちはなにも特別なことは求めていません。一般の日本人と同じように暮らしたい。年ですから早く解決してほしい」と語っていました。原告側は近く控訴する予定です。


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