2007年6月14日(木)「しんぶん赤旗」
ナチスの強制労働被害
独財団が補償金完済
100カ国以上の170万人に7140億円
【ベルリン=中村美弥子】第二次世界大戦時のドイツ・ナチス政権による国内や占領地での強制労働の被害者に補償を行ってきた「記憶・責任・未来」財団は十一日、被害者への補償金支払いを終了したと発表しました。十二日には、完済を記念する式典がベルリンで開かれました。財団の設立から七年。中東欧を中心に百カ国以上に住む被害者百七十万人に対し、四十四億ユーロ(約七千百四十億円=一人平均四十二万円)を支払いました。財団は今後、ナチ被害国で教育プロジェクトを運営していきます。
式典に出席したメルケル首相は、「強制労働の被害者はようやく約束通り人道的援助を受けることができた」と述べ、こう続けました。
「収容者の多くがこの苦難を生き延びなかった。生き残った人たちは身体的、精神的な傷を負い、非人道的な時代に背負ったトラウマをかろうじて克服したにすぎない」
「記憶・責任・未来」財団は二〇〇〇年夏、同財団設立法の発効によって活動を開始。補償金の半分は独政府が負担し、残りは企業が出資しました。
これには自動車大手フォルクスワーゲン、電機大手シーメンス、医薬・化学大手バイエルなど、ナチ政権下で一千万人もの強制労働者を使用していた企業だけでなく、戦後に事業を開始した企業も参加しました。ナチの被害者に対して、道義的、政治的な責任を負っているとの認識に基づいたものです。
財団設立の背景には、一九九〇年代後半に米国で相次いだ被害者による独企業への集団訴訟があります。当時の社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党連立のシュレーダー政権は、集団訴訟の回避を望む企業との協議を通じて財団の設立に合意しました。
一人当たりの補償額は、強制労働の種類に応じて二千五百ユーロ(約四十万円)―七千五百ユーロ(約百二十万円)と決められました。補償金はロシアやポーランド、チェコ、フランス、ベルギーなどナチの被害国に設けられた機関を通じて、申請した被害者に支払われました。財団は同時に、ナチの犯罪を記憶し、再発を防止する活動も行ってきました。
ケーラー大統領は十二日、ベルリンの大統領府で行われた式典での演説で、基金の設立は「平和と和解の過程で緊急に必要とされたイニシアチブだった」と振り返りました。さらに、「少なくとも、この象徴的な支払いで、何十年も忘れられてきた被害者の苦しみが公に認められることになった」と述べ、基金が果たしてきた役割を強調しました。

