2007年6月12日(火)「しんぶん赤旗」

「雇用改善」というが…

非正規3割 地域格差も拡大


 総務省が発表した四月の完全失業率は3・8%と、約九年ぶりに3%台になりました。政府は「雇用改善が進んでいる」(総務省)としています。しかし、依然として高水準なうえ、この十年、雇用の中身は大きく変化し、“雇用破壊”といわれる状況が進行しています。(矢守一英)


賃金水準低下も続く

 最も目立つのは、低賃金で不安定な非正規労働者の増大です。

 総務省の「労働力調査」によると、パート、派遣、契約社員など非正規の労働者数は一九九七年二月には千百五十二万人でした。ところが、十年後の二〇〇七年(一―三月平均)には五割増の千七百二十六万人にのぼっています。

 雇用者全体に占める割合も23・2%から33・7%に上昇。労働者の三人に一人が非正規です。女性は54・1%、二人に一人の割合。若年層(十五―二十四歳)でも48・1%と約半数を占めています。

 これは、企業が目先の利益追求のためにリストラとコスト削減を進め、低賃金の非正規社員の雇用を増やしてきたためです。

 東京都渋谷区にあるヤングハローワーク。「何とか正社員になりたい」という多くの若者が利用しています。求人の半数は正規社員ですが、なかには請負会社の「正規社員」として採用されるものの、請負先から会社が契約を打ち切られたため、まったく違う環境の請負先へ転勤を命じられ、通勤できないなどの理由で退職するケースもあるといいます。

 同ハローワークの降幡勇一さんは、「求人倍率は上がっているものの、企業側が安易に非正規雇用を確保する仕組みができてしまっており、フリーターから正社員に転職するためには、自分の意思を明確にして行動をおこさなければ状況は厳しい」と指摘します。

 非正規雇用の増加に伴って、労働者の賃金水準も低下が続いています。

 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で、現金給与総額(月額)を九七年(年平均)と〇七年(四月分)で比較すると、三十七万一千四百九十五円から二十七万八千百九十三円と、十万円の減少になっています。基本給など所定内給与も同じく、二十六万九千四百三十五円から二十五万九百六十九円にダウンしています。

 そもそも正規、非正規労働者の賃金には大きな格差があります。非正規の女性の賃金水準は正規の男性の五割弱です(〇五年の厚生労働省調査)。一つのパートの仕事だけでは生活が維持できず、二つ以上の仕事をかけもちする人もいます。

求人倍率格差2倍超

 十年間で地域間格差も広がっています。地域別の完全失業率(年平均)は、東京都、神奈川県などの南関東や、日本企業で初めて営業利益が二兆円を超えたトヨタ自動車とその関連企業が多い東海で低下傾向にあります。一方で北海道、東北、北陸、九州などは悪化しています。

 有効求人倍率(求職者一人当たりの求人数・年平均値)を東北と東海で比較すると、東北が〇・七前後で推移しているのに対し、東海は〇・九二から一・六二に上昇。格差が拡大しています。

背景に労働法制改悪

 “雇用破壊”の要因は、九〇年代後半から続いてきた一連の労働法制の「規制緩和」です。なかでも派遣労働の拡大、裁量労働制の導入と拡大、有期雇用制の拡大が大きな影響を与えました。

 派遣労働はもともと、労働者からの「ピンハネ」を防ぐため、職業安定法で禁止されていました。八五年にはその「例外」として労働者派遣法がつくられ、九六年には対象業務が十六から二十六に拡大。九九年には「原則自由化」と改悪が重ねられてきました。自民、公明などが推進しました。日本共産党は「大量の低賃金、無権利の派遣労働者をつくりだす」として、すべての労働法制改悪に反対してきました。

 民主党も「労働者派遣事業法改定」(九九年)に賛成するなど、非正規雇用の増大に手を貸してきた責任は免れません。

表

労働法制 各党の態度

◎1998年 労働基準法改定

 −8時間労働制を崩す裁量労働制など拡大

 (自民、公明、民主、自由、社民が賛成共産党は反対)

◎1999年 労働者派遣事業法改定

 −26だった派遣対象業務を原則自由に

 (自民、公明、民主、自由、社民が賛成共産党は反対)

◎2003年 労働基準法改定

 −有期雇用制を拡大、裁量労働制の規制緩和

 (自民、公明、民主、自由が賛成共産党、社民が反対)

◎同年 労働者派遣事業法・職安法改定

 −製造業への派遣拡大

 (自民、公明が賛成共産党、民主、自由、社民が反対)



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