2007年6月4日(月)「しんぶん赤旗」

1年迎えたシ社エレベーター死亡事故

原因究明待ったなし

心の傷いまだ癒えず


 東京都港区の公営住宅「シティハイツ竹芝」で、高校二年の市川大輔(ひろすけ)さん=当時(16)=が、シンドラーエレベータ社製のエレベーターに挟まれて死亡した事故から三日でちょうど一年を迎えました。しかし、事故原因の究明は遅れ、責任追及も進んでいません。(日本共産党国民運動委員会 高瀬康正)


 「シティハイツ竹芝の安全を守る会」書記長の北村和明さんは、「エレベーターが突然、ドアが開いたまま急浮上するという異常な事故にもかかわらず、原因究明と責任追及、遺族補償も遅々としてすすまない。もちろん居住者の気持ちはいまだに癒やされていません」と話します。

 エレベーターは、かごと昇降機のすべての出入り口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置とされ、それに必要な安全装置の設置が建築基準法で義務付けられています。

資料がない

 その安全装置がなぜ働かなかったのかが、事故原因を解明するうえで最大の問題点といえます。

 原因としては(1)ドアが閉まった状態を確認するスイッチに不具合があった(2)運転制御プログラムなど制御系に何らかの問題があった(3)電磁ブレーキなどの駆動系に異常があった―の三つが推定されます。

 原因究明に取り組む前川雄司弁護士は「報道や関係者からの情報などを総合すると、原因が電磁ブレーキの不具合に絞られた感があり、他の原因がおろそかにされている」とのべ、三つの推定原因を総合的に究明しないと原因解明にはつながらないと指摘します。

 原因究明のためには、製造メーカーのシンドラー社や当時保守管理に当たっていたエス・イー・シーエレベーターの全面的な協力が必要です。ところが、事故エレベーターの制動装置や制御盤、保守点検報告書などの関連資料はすべて警察が押収しています。

 そのため、住民側は「捜査機関に押収されているとの理由で、(シンドラー社等から)現時点においては提出が困難との回答があり、原因究明に必要十分な資料等の収集ができていない」(港区シティハイツ竹芝事故調査第一次中間報告書=〇六年八月)のが現状です。

姿勢変えず

 シンドラー社は事故当時から、「この事故がエレベーターの設計や設備によるものでないことを確信している」(同社ホームページ)という姿勢を変えていません。

 四月二十六日、港区はシンドラー社に対し、制御プログラムや設計図など情報開示を求めました。しかし、同社は「企業秘密を理由に開示に応じていない」(斉藤祐治・港区総合経営部安全対策課長)のです。

 建築物の高層化でエレベーターは全国で六十万基も普及し、エレベーターの重大事故が目立ちます。最近も、東京・六本木ヒルズ「森タワー」でワイヤロープの破断事故が起きたばかりです。

 「事故原因を徹底的に究明し、再発防止策につなげてほしい。息子の命を無駄にはできない」―。二日夜、会見した市川さん夫妻が繰り返した言葉です。

 原因の徹底究明と再発防止は待ったなしの課題です。シンドラー社など事故を起こした関係企業と行政の責任がきびしく問われています。


 シンドラー社エレベーター事故 事故は昨年六月三日夜に発生。警視庁捜査一課と三田署は、事故直後にシンドラー社や保守点検業者エス・イー・シーエレベーター(台東区)などを業務上過失致死容疑で家宅捜索。同課は、エス社の事故前の保守点検が不十分だったため、ブレーキが利かなくなり事故につながった疑いもあるとみて、捜査を続けています。


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