2007年6月1日(金)「しんぶん赤旗」
談合は上の言いなり
前農水相 地元業者が語る構図
松岡利勝前農林水産相の自殺は、農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」の官製談合事件の舞台となった地元、熊本県阿蘇地域に大きな衝撃を与えています。官製談合事件での政治家の関与は、そして松岡氏側に集まった政治資金はどこからきているのか―。関係者らは語り始めました。(藤川良太)
松岡氏に近い部分が受注
![]() (写真)緑資源機構が発注した事業の工事現場=29日、熊本・小国町 |
阿蘇地域では、緑資源機構の「特定中山間保全整備事業」で完成した真新しい道路が、農民の生活道路の先から突然現れます。工事は現在も続いており、重機が山を削る姿も見られます。
「(工事受注業者の)ほとんどが松岡に近い業者。すべてが上の言いなりだった」。特定中山間保全整備事業の入札調書を見てある業者はつぶやきました。二〇〇三年度から〇六年度の五十三工事を受注した業者の大半が、松岡前農水相の選挙を手伝うなどしていたといいます。
関係者によると、同機構九州整備局が阿蘇小国郷建設事務所を経由して発注していた工事の「天の声」は地元大手業者が出し、落札予定業者に落札価格やほかの指名業者が伝えられていたといいます。落札予定業者は、ほかの指名業者に「今度はうちがもらうことになる」と電話などで連絡。落札予定業者以外の指名業者への連絡は、大手業者が行うケースもありました。
連絡を受けた落札予定業者以外の指名業者は、阿蘇小国郷建設事務所に行き図面などを見て、価格を積算。予定価格を上回るように入札していました。
ある業者は「指名を受けていない大手業者から連絡があった。入札日も知っていた」と証言します。別の業者は松岡前農水相の自殺を受けて話します。「この際、徹底的に何があったのか(捜査を)やらんといかん。松岡氏に流れた裏金があったのか、何があったのか。命がなくなっているわけだから。そうしないと、正直者がバカを見るようになってしまう」と。
税金の還流明らか
「緑資源機構」が発注した「特定中山間保全整備事業」で熊本県小国町の林道工事などを請け負った阿蘇市郡内の十四業者が二〇〇三年から三年間で、松岡前農水相が代表を務める政党支部に一千万円を超える献金をしていたことが、本紙の調べでわかりました。
国民の税金である公共事業費が特定の政治家へ還流していたことが浮き彫りになりました。
このうち、毎年七十二万円と最高額を献金した杉本建設(阿蘇市)は、〇四年度の別所・江古尾団地区画整理工事(約六千三百万円)、〇五年度の原・大鶴団地工事(約一億五百万円)、〇六年度の基幹農林道一工区工事(一億八千万円)を請け負っています。
〇三年に百十四万円、〇四、〇五年に各二十四万円を献金した中島組(阿蘇市)は〇三年度の基幹農林道一工区工事(六千八百万円)、〇五年度の基幹農林道一工区工事(二億一千万円)を請け負っています。
杉本建設の代表は「阿蘇治山安全協会」「阿蘇地区生コン共同組合」「阿蘇中央生コン」の代表を務めており、それぞれ、三年間で約百五十万円、四十八万円、四十八万円を献金しています。


