2007年6月1日(金)「しんぶん赤旗」

主張

社保庁法案強行採決

吹き飛んだ「百年安心」


 自民党と公明党は、社会保険庁の解体・民営化法案と「年金時効特例法案」を衆院本会議で強行採決に持ち込みました。許しがたい暴挙であり、国民とともに強く抗議します。

「宙に浮いた」五千万件

 保険料の払い込み記録があるのに受給者が不明の「宙に浮いた」年金が五千万件。保険料を納めたのに未納扱いで年金を減額され、受給資格を奪われるなど年金が「消える」言語道断の事態が起きています。

 ずさんな記録管理は、国民の汗の結晶の保険料を預かり、老後の暮らしを支える年金を守るという重責を忘れた怠慢です。「記録が間違っている」と申し立てた「被害者」に証拠を出せと迫り、過去七カ月間に申し立てた約二万人の99%を却下した応対は悪質な居直りです。

 すでに十年前、基礎年金番号を導入したとき、政府は番号に一致させられない膨大な保険料の納付記録が存在することを知っていました。それにもかかわらず、抜本的な対策をとってこなかった国と厚生労働省のいいかげんな対応が今日の事態を招いたことは明らかです。

 与党は支給漏れ年金の「時効」をなくす「特例法案」をあわてて提出、たった一日の委員会審議で強行採決しました。

 もともと、国の怠慢で「消えた」年金を「時効」だからと門前払いしてきたこと自体が異常です。

 公明党は特例法案を「救済」法案と呼んでいます。基礎年金番号の導入後の厚生大臣のうち公明党の坂口力・副代表は在任四年で、最も長く年金行政トップの座にありました。「消えた」年金の責任者らが当たり前の措置を恩着せがましく「救済」と言うのはあまりに厚顔です。

 安倍首相は「宙に浮いた」五千万件を「一年以内にすべての記録と突合(照合)する」と明言しました。

 実行すれば調査件数は一日あたり十三万七千件に上ります。首相の発言直後の委員会で柳沢厚労相は、照合は膨大な作業なので、いつまでかかるか答えられないと答弁し、申し立てを却下した二万人の再調査の確約すらできませんでした。しかし、翌日には「一年でやらなければならない」と答弁し直すあわてぶりです。

 安倍首相は国民の受給権をどう保障するか追及され、「申し立てた人にはすべて支払えというのか」と繰り返しています。二十五日の衆院厚生労働委員会では「私のどこがいけないのか」と“逆切れ”して、大声を張り上げました。首相の態度は、消費者に被害を与えた不祥事の追及を受けて開き直る、無責任な大手企業の経営者と変わりません。

 宙に浮き、消えた年金は国が責任を持って解決すべきです。政府・与党が示した「救済」策の枠組みは、保険料納付の証明を最終的には被害者の国民に押し付けるもので、断じて認められません。

 社保庁解体・民営化は責任を果たすべき国の機構をなくし、国が責任を持って解決することを不可能にします。この点では社保庁を国税庁と統合する民主党案も同じです。

参院選で痛烈な審判を

 公的年金の管理・運営と「宙に浮いた」五千万件の解決に対する国の責任逃れ、党利党略の強行採決は、年金に対する国民の不信と不安をいっそうかき立てざるを得ません。

 今月から年金財源を口実にした住民税増税がくらしを直撃します。「百年安心」どころか、きょう・あすを不安に陥れるやり方を許さない痛烈な審判を、来月の参院選で突きつけようではありませんか。



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