2007年5月26日(土)「しんぶん赤旗」

社保庁解体 採決を強行

自公、一方的に審議打ち切り

衆院委 高橋氏追及 穀田国対委員長が抗議


 「国民の年金不安にこたえていない」「採決は無効だ」――。国が責任を負うべき年金業務を民間まかせにする社会保険庁の解体・民営化法案について、自民、公明両党は二十五日の衆院厚生労働委員会で、質疑を一方的に打ち切って強行採決しました。与党は二十九日の本会議で採決、衆院通過を図る構えです。

 五千万件にのぼる年金記録ミスが大問題になるなか、傍聴者は約五十人を超え、傍聴席を埋めました。審議の行方をかたずをのんで見守るなかでの数を頼んでの暴挙です。与党は同法案の強行採決にとどまらず、与党単独で労働三法案の趣旨説明も一方的に強行しました。

 採決後、日本共産党の穀田恵二国対委員長は記者会見し、「問題を不問にしたまま強行採決したのは許されない」と抗議しました。

 同委員会は与野党間で採決など合意されていないもとで開会。午後には安倍晋三首相が出席して質疑が行われました。安倍首相は年金記録ミスで「救済する特別立法について実現に努力していきたい」と表明。柳沢伯夫厚労相は該当者の調査を行う考えを示しましたが、その詳細は明らかにしませんでした。

 日本共産党の高橋千鶴子議員をはじめ野党議員は質問で「法案の問題は何ら解明されておらず、採決すべきではない」と重ねて求めましたが、自民党が質疑の打ち切り動議をいきなり提出。野党議員が委員長席に詰め寄り抗議し、桜田義孝委員長(自民)の「採決」をよびかける声も聞こえないなか、与党が一方的に起立して採決しました。

解体は新たなミス生む 高橋氏追及

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(写真)質問する高橋千鶴子議員=25日、衆院厚生労働委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は二十五日の衆院厚生労働委員会で、社会保険庁の外部委託がすでに大規模にすすめられている問題をとりあげ、社保庁の解体・民営化で個人情報漏えいや新たな年金記録ミスを生むことになるとただしました。

 国民年金、健康保険・厚生年金などの届出書の入力業務はすべて派遣会社に委託し、性格上ひんぱんに入れ替わりが避けられない派遣労働者が担っています。

 高橋氏は、届出書には基礎年金番号や職歴、滞納状況など三百六十一件にのぼる情報があり、神奈川から熊本県の業者にまで空輸している実態を紹介。すでに記録ミスや情報漏えいが起きていることをあげ、「大事な年金情報の処理を外部の不安定雇用のなかに委ねることは個人情報の流出や新たな年金記録の消滅をうむ」と追及しました。

 柳沢伯夫厚労相は「個人情報保護や業務の正確性を担保しなければならないが、業務の効率化のために外部委託もありうる」と答弁。高橋氏は、「効率化の域を超えている」と批判しました。

 高橋氏は、安倍晋三首相が「国が責任を持つ公的年金制度は破たんしたり、払い損になったりすることはない」と所信演説でのべていることについて、「今もこれからも変わりないのか」と質問。安倍首相は「国が責任を持つ」と答えました。

 高橋氏は、解体・民間委託では年金の安定運営と個人情報保護を危うくすることにしかならないと指摘。「これで国民の信頼を取り戻すことはできない。国民の情報と年金を民間企業に開放し、切り売りすることは許されない」とのべました。

穀田国対委員長が抗議

 自民・公明両党による社会保険庁解体・民営化法案の強行採決後、日本共産党の穀田恵二国対委員長は二十五日夕、記者団に対し、「強行採決に断固抗議をしたい」と述べました。

 穀田氏は、五千万件にのぼる対象者が分からない年金記録などずさんな実態が明らかになったと指摘。「その問題で、今日は首相が出席して審議がおこなわれたが、解決策の内容や、めどについても何も出さず、質問にまともに答えず、質疑を打ちきる暴挙というのはまったく許せない。この問題の責めは与党側が負うべきだ」と述べました。

 その上で、「今度の法案は、社会保険庁の解体・民営化の路線であり、重大な問題をはらんでいる。問題点を不問にふしたまま強行採決したのは二重に許せない」と主張しました。


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