2007年5月24日(木)「しんぶん赤旗」

異常な米最優先

在日米軍再編促進法成立


 在日米軍再編促進法が23日、成立しました。国会審議の中では、基地周辺の住民・自治体の意思よりも、米政府との合意を優先し、そのためには巨額の税金をつぎ込むことも当然視する安倍政権の異常な対米追従姿勢があらわになりました。(田中一郎)


グアム移転追加負担も

 同法の柱の一つは、在沖縄海兵隊のグアム「移転」に伴う基地増強費を日本側で負担するための仕組みづくりです。

 グアムの基地増強は、太平洋地域を重視した米軍事戦略の一環です。政府は「沖縄の負担軽減のため」と繰り返しますが、銃剣とブルドーザーで住民から土地を強奪して基地を建設した米軍の「移転」費まで負担しなければならない道理はまったくありません。政府のやり方は、まさに“盗人に追い銭”です。

 衆院での審議でも政府は、外国領での外国軍の増強費を負担した国際的な前例を一つも挙げることができませんでした。日本側負担の法的根拠についても、安保条約も地位協定も「適用対象ではない」(麻生太郎外相)と述べ、まともな説明はできませんでした。

 さらに参院での審議では、こうした法的根拠のない無原則な税金投入が、今後も膨らんでいく危険まで浮かび上がりました。

 日米合意は、グアム「移転」費総額約一兆二千億円のうち、約七千三百億円を日本側負担としています。

 日本共産党の緒方靖夫議員は、米国防総省の報告書を示し、米海兵隊が、日米合意の約一兆二千億円以外に輸送費など年間約五百五十億円がさらに必要になるとし、その予算の手当てがついていないことを指摘。こうした追加経費まで日本側負担になることがありうるのかと追及しました。

 「基本的にない」とした防衛省の大古和雄防衛政策局長の答弁について、久間章生防衛相は「『基本的にない』とは、例外があったときの予防線」と“解説”し、追加負担の可能性を認めました。

 毎年二千数百億円もの「思いやり予算」に加え、米戦略を支えるためには、前例がなくても、根拠がなくても、際限なくとにかく税金投入する。首相が掲げる「かけがえのない日米同盟」路線の異常な姿があらわれています。

再編交付金地元は反発

 同法のもう一つの柱は、再編計画の対象になっている自治体に、計画の受け入れ度合いに応じて再編交付金を交付するというものです。再編交付金は、計画反対の自治体には、負担がどんなに増えても、交付しない仕組みです。

 受け入れた場合も、交付の上限額は決まってしまいます。緒方氏の追及に、大古局長は「上限額を上回る額の交付は考えられない」としつつ、「(受け入れ時に自治体が想定していた以上に)負担が増えることはあり得ないわけではない」と答弁。交付額はそのままで、基地負担だけ増える可能性を認めました。

 こんな仕組みになるのも、同法の目的が「(再編計画の)円滑な実施に資する」(第一条)などとして、反対自治体を屈服させるところにあるからです。

 しかし、これには各地で反発が相次いでいます。

 「基地の安定的な運用にも協力してきた」という山口県の井原勝介岩国市長は、「再編交付金はアメとムチのような手法」「交付金で地方の意思を左右しようというのは適切なやり方ではない」(衆院安全保障委員会)と批判しました。

 米国との合意であれば、問答無用で押しつける安倍政権の姿勢は、基地に対する立場を超えた国民的な怒りを広げざるをえません。



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