2007年5月17日(木)「しんぶん赤旗」

主張

後期高齢者医療

無慈悲な制度の抜本見直しを


 保険料は年金から「天引き」してきびしく取り立てる一方で、公的保険で受けられる医療は高齢者だからと格差をつけられる。こんな「後期高齢者医療制度」が、来年四月から導入される予定で準備が進んでいます。自民、公明の与党が昨年六月、強行成立させた「医療制度改革関連法」の一つです。

年金が三割も削られる

 「後期高齢者」とは七十五歳以上が対象です。制度が始まれば、現在加入している国保や健保を脱退させられ、高齢者だけの独立保険に組み入れられます。現行制度との大きな違いは、家族に扶養されている人を含め、すべての後期高齢者が保険料の負担を求められ、大多数が年金から「天引き」されることです。保険料は今後都道府県ごとに決められますが、厚生労働省の試算では平均月六千二百円です。介護保険料(平均月四千九十円)とあわせると月一万円を大きく超えます。

 二年ごとに改定される保険料は、後期高齢者が増えるのに応じて、自動的に保険料が上がる仕組みになっています。三年ごとに引き上げられている介護保険料の場合は、六年で平均月千円以上も上がりました。

 保険料の年金からの「天引き」は、六十五―七十四歳の前期高齢者の国保にも適用されます。日本共産党の小池晃参院議員が国会でとりあげたように、大阪市の一人暮らしの高齢者で年金額が一万五千円の場合で試算すると、介護保険料と国保料の合計は月四千四百十三円にもなります。年金額の約30%近くが強制的に奪われる悲惨な事態です。

 柳沢伯夫厚生労働相の「天引き額が年金額の二分の一を超えないように配慮する」との答弁は、「配慮」はみせかけだけで“二分の一まではむしりとる”との冷酷な宣言にほかなりません。

 支払えない場合の無慈悲な仕打ちも、「後期高齢者医療制度」には盛り込まれています。

 従来、七十五歳以上の高齢者は、障害者や被爆者などと同じく、“保険料を滞納しても保険証をとりあげてはならない”とされてきました。後期高齢者医療制度は、これをくつがえし、保険料を滞納すれば高齢者でも容赦なしに保険証をとりあげ、短期保険証・資格証明書を発行するようにしたのです。

 国保では、高すぎる保険料が払えず保険証がとりあげられ必要な医療が受けられないために死亡する事態をやめさせることが緊急に求められています。逆に、保険証のとりあげを高齢者医療に拡大するなど、絶対に許されません。

 政府は、病院・診療所に支払われる診療報酬を「後期高齢者」については“心身の特性にふさわしい”などという口実で別建てにして、格差をつけようとしています。高齢者は粗悪医療や病院追い出しを迫られる、医療難民を生み出すことにもなりかねません。

保険証一枚で安心を

 後期高齢者医療制度の導入は、七十五歳以上の医療を他の医療保険から切り離すことで、保険料値上げか医療水準の引き下げかという、どちらをとっても痛みしかない選択を、高齢者自身に迫るものです。

 しかも、後期高齢者医療制度の導入に並行して、七十―七十四歳の人の窓口負担の原則一割から二割への引き上げをはじめ医療改悪がおしすすめられます。

 保険証一枚でだれでもどこでも、どんな病気でも安心して受けられる医療にしていくため、無慈悲な制度の抜本的な見直しを求めます。


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