2007年5月15日(火)「しんぶん赤旗」

改憲手続き法

自公、成立強行したが…

憲法原則逸脱の問題山積


 十四日の参院本会議で可決・成立した改憲手続き法(国民投票法)は、憲法九六条に定められた憲法改正の手続きを整備するという建前ですが、憲法の基本原則を逸脱した重大な問題点を残しています。また、国民投票施行までの三年間で整備・検討する事項も多く、今後、憲法改悪反対の一点での多数派づくり、国会発議を許さないたたかいと一体に、主権者である国民の自由な意思表明と運動を縛らせないとりくみが大切になります。

最低投票率

 憲法九六条は改憲案の承認について「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」としています。

 手続き法は、この「過半数」を有効投票の過半数としたうえ、一定の投票率を超えないと投票自体を無効とする最低投票率の制度も導入されていません。このため、少数の有権者の賛成で承認されかねない、投票率が極端に下がれば最高法規としての信頼性が得られないなどの意見が、法案の賛否を超えて出され、圧倒的な世論になりました。

 このため、「付帯決議」で、「憲法審査会において本法施行までに最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること」とされました。すでに日本共産党の仁比聡平参院議員の追及で、同制度を設けない憲法上の根拠がないことも明確になっており、同制度導入は不可欠です。

公務員・教員

 手続き法によれば、改憲の発議は「関連する事項ごとに区分して行う」とされていますが、何が関連するのかは明確にされていません。また、投票権者は本則で「満十八歳以上」とされていますが、付則では公選法や民法などの関連法で必要な措置が講じられるまでは「二十歳以上」とされるなど、今後措置が必要な事項が山積しています。

 なかでも、公務員法上の「政治的行為の制限」にかんする措置は「憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう必要な法制上の措置を講ずる」とされ、三年間「検討」されます。

 審議では、この「検討」の中身について仁比氏の追及で「国民投票運動が、国家公務員法・地方公務員法上許される、自由だということをきちっと整理する」(法案提出者の保岡興治衆院議員)と答弁させました。しかし、“靖国派”議員を中心に、「労働組合の活動を野放しにしたら改憲阻止法になる」という意見もあり、三年間の「検討」で公務員の手足を縛る規制を課してくる危険もあります。これを許さず、運動の自由を確保することが重要です。

 公務員・教育者の「地位利用」に関しても、▽大学の授業における意見表明▽市民団体の集会での意見表明▽パレードへの参加―などは該当しないことを明確にさせていますが、さらに規制そのものを許さないとりくみが重要です。

広告・広報

 テレビ、新聞の有料広告は、投票日二週間前までは自由となりました。しかし、国民の判断にとって、重大な影響を及ぼすだけに、マスメディアにとっては、賛否の扱いが平等になるような自主的ルールづくりが不可欠となります。

 国会に設置される広報協議会では、日本共産党の笠井亮衆院議員の追及で賛否の無料広告は平等に扱うことになりましたが、協議会自体が行う解説の残余部分とされています。同協議会が賛否を公平に扱うかどうかの監視も必要となります。

 なにより、国会の発議を許さないとりくみが重要です。同時に憲法改悪を許さない声を国民のなかでゆるぎない多数派にしていく運動が求められています。



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