2007年5月12日(土)「しんぶん赤旗」

改憲手続き法案 採決強行

参院特委 自公が国民抗議の中


 「国民無視の採決は許されない」――。国会内外に抗議の声がうずまく中、自民、公明の与党は十一日の参院憲法調査特別委員会で、九条改憲と地続きの改憲手続き法案(国民投票法案)の採決を民主党とともに強行し、与党の賛成多数で可決しました。国民主権の行使にかかわる憲法と直結した重要法案であるにもかかわらず、国民各層の声を聞く中央公聴会さえ開催しないままの暴挙です。日本共産党は質疑打ち切りに強く抗議し、法案に反対しました。民主党、社民党、国民新党も与党案に反対しました。朝から国会前で廃案を求めて座り込みを続けた市民、団体は採決強行を受けて抗議集会を開催。日本共産党の志位和夫委員長は記者会見し、「中身の面でもやり方の面でも国民を愚弄(ぐろう)した暴挙だ」とのべました。


仁比議員反対討論

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(写真)反対討論する仁比聡平議員=11日

 特別委員会で反対討論に立った日本共産党の仁比聡平議員は、「なぜ中央公聴会すら開かずに採決するのか。そのような強引なやり方は、わが国の憲政史上に重大な汚点を残すものだ」と怒りに声を震わせて糾弾しました。

 その上で法案について、最低投票率規定がなく、有権者の一、二割の賛成で改憲ができる点や、五百万人にのぼる公務員、教育者の活動の自由を奪う点など、不公正で非民主的な内容になっていることを告発。安倍晋三首相がめざす九条改憲の政治スケジュールに法案が位置づけられているもとで「九条改憲と地続きの法案であることは明らかだ」と批判し、「九条を変えて再び『海外で戦争をする国』にすることを国民は絶対に許さないだろう」と強調しました。

 特別委員会では、十八項目からなる付帯決議が自民、公明、民主の賛成多数で可決されました。法案は十四日の本会議で採決されます。

 採決に先立つ質疑には安倍首相が出席。議員提案の法案の審議で首相が出席するのは異例です。国民の声を聞く中央公聴会は開かないまま、任期中の改憲を公言する安倍首相を招いた上での採決となりました。


中身もやり方も国民ないがしろ

志位委員長が批判

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(写真)記者会見する志位和夫委員長=11日、国会内

 日本共産党の志位和夫委員長は十一日、参院憲法調査特別委員会での改憲手続き法案の採決強行をうけ、国会内で記者団にたいし次のように語りました。

 、今回の一連の事態は、中身の面でも、やり方の面でも、国民をまったく愚弄(ぐろう)し、ないがしろにした暴挙であって、自民、公明に強く抗議をしたい。

 、中身の面では、国会の質疑を通じて、法案はぼろぼろの状態になっていた。とくに、最低投票率を設けず、有権者の一割台、二割台の賛成で憲法を変えてしまっていいのかとの私たちの追及に、法案提案者は答弁不能になった。さらに、なぜ、公務員や教員の活動の自由を制限するのか、この追及にも、合理的な理由は示せず、どの範囲が制約される内容かも示せなかった。法案の根幹、骨格の部分で答弁不能になったにもかかわらず、数の暴力で強行した罪は非常に深い。

 、やり方の面では、憲法という国の一番の基本法を改変する手続き法案を決めるというのに、国民の声を聞こうという姿勢が与党にまったくなかった。参院では中央公聴会すら開かないまま採決するという異常な事態となった。これだけの重要法案で中央公聴会さえ開かないで、国民の声を一切聞こうとしないで採決するというのは国会の歴史に重大な汚点を刻むものだ。

 、民主党は中央公聴会抜きの採決には反対だといっていたにもかかわらず、最後の局面で、自民、民主の間の筆頭理事間の密室の談合によって採決日程を合意した。この責任は重いということものべておきたい。

 、私たちは参院本会議でも最後まで反対を貫いて奮闘する。ただ、どんな改憲手続き法の仕掛けをつくったとしても、国民の多数がノーといえば改憲はできないわけで、憲法改悪に反対する揺るぎない、確固とした国民の多数派をつくるために力を尽くしたいと決意を新たにしている。

 、安倍政権は、改憲をめざすとともに、過去の侵略戦争を正当化する、正しい戦争だったと美化する、そういう勢力によって中枢が固められている“靖国派”政権だ。過去の戦争に反省のない“靖国派”政権が、憲法を変えて、海外で戦争をする国をつくるというのは本当に恐ろしいことであり、アジアや世界との矛盾、日本国民との矛盾をうんと広げる。そういう政権が暴走をはじめていることは危険だが、同時に、これに反対する人々を広げることになる。そういう展望をもって大いにたたかいを強めたい。



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