2007年5月11日(金)「しんぶん赤旗」
ビラ配布処罰は不当
世田谷国公法弾圧 公訴棄却求める
弁護側冒陳
休日に職場と関係ない場所で「しんぶん赤旗」号外を集合住宅に配った厚生労働省職員の宇治橋眞一さん(59)が、住居侵入罪容疑で逮捕され、不当に国家公務員法違反罪に問われている「世田谷国公法弾圧事件」の第十一回公判が十日、東京地裁(小池勝雅裁判長)で開かれました。弁護側が冒頭陳述を行い、「宇治橋氏の一市民としてのビラ配布は処罰できない」などとして公訴棄却と無罪を求めました。
今後の法廷で、弁護側の立証が本格的に展開されます。この日の法廷では小林容子主任弁護人をはじめ、十人の弁護人が約三時間半にわたって陳述しました。
弁護側はまず、警視庁による逮捕とその後の捜査の経緯について陳述。宇治橋さんが住宅敷地に立ち入ったのは「赤旗号外の投かんが目的で、政治的言論の自由の行使である」「立ち入ったのは集合ポストまでで、居住者のプライバシーを侵害していない。住居侵入罪にあたらず、逮捕は違法」と主張しました。
宇治橋さんが住宅内で現行犯逮捕されたとする検察側の主張に対し、弁護側は「時間をさかのぼって現行犯逮捕を『ねつ造』した」と指摘。弁護士による接見を警察が妨害したことも挙げ、「違法な逮捕・捜査による資料をもとに起訴された。公訴棄却されるべきだ」と主張しました。
事件では、警視庁公安部公安総務課の寺田守孝係長(当時)が世田谷署に急行し、発生直後から実質的に捜査を指揮していたことが、これまでの公判で明らかになっています。
弁護側は「国家公務員が共産党関係者だから身柄を確保され、捜査が開始された。日本共産党に対する弾圧を意図した差別的な捜査だ」と批判しました。
弁護側は「猿払事件最高裁判決(一九七四年)にとらわれる限り、公正な判断ができない」として、国公法と人事院規則により公務員の政治的行為を禁止していることは、憲法二一条の言論・表現の自由を侵害し、違憲無効であると指摘。宇治橋さんが号外を配布したのは勤務時間外で、職場から離れた場所で私服で行ったことを示して「行政の中立的運営が侵される危険はなかった」「行為ではなく『危険な傾向』を理由に罰する誤りをおかしてはならない」と述べました。
次回公判は六月二十二日に開かれます。