2007年4月25日(水)「しんぶん赤旗」

福知山線脱線から2年

苦悩続く遺族

責任回避のJR西 後を絶たない事故


 「時空が止まり、花鳥風月や四季折々に、遺族・負傷者の被害家族の多くは…崩壊した家族の日常を取り戻そうと必死にもがいている」―二十四日、「JR福知山線尼崎脱線転覆事故4・25ネットワーク」が発表した声明文の一文です。JR事故から二年。苦悩しつつ立ち上がって歩き続ける「4・25ネットワーク」の活動と遺族の思いを追いました。(竃(かせの) 真里)


「原因分からない」

 「JR西日本の閉鎖的な体質は何もかわっていない」。JR西日本の福知山線事故で一人娘=当時(40)=を亡くした女性(67)の今の気持ちです。その女性らがよびかけて、「4・25ネットワーク」が結成されたのが事故直後の六月二十五日。「鉄道の安全のために余生を捧(ささ)げる」決意で「ネットワーク」とともにこの二年間を駆けぬけてきました。

 当時(二〇〇五年六月)、事故についての第一回説明会で、JR西日本の垣内剛社長(当時)は、「責任は百パーセントJR西日本にある。ご遺族のみなさまには誠心誠意対応する」と発言しました。

 しかし今年二月の国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の意見聴取会で浮き彫りになったのは、JR西日本の不誠実な姿勢でした。当時、国会などで、経営効率を優先させてATS(自動列車停止装置)の設置が遅れたことが事故の背景のひとつとして指摘されていました。

 ところが、丸尾和明副社長は「(ATSの)設置計画は妥当」などと反論。「事故の原因は分からない」とまでのべました。自らの責任を回避し、事故を運転士一人に押しつける意図がむきだしになりました。

 「JR西日本は手のひらを返してオオカミになった」。事故で長女=当時(21)=を亡くした男性(59)=兵庫県三田市=は、そんなJR西日本の態度をこんな言葉で表します。「何度原因解明を求めても、何も答えてくれない。JR西日本は運転士の過失致死で、被疑者死亡で済ますことを望んでいる」と怒ります。

 繰り返されるオーバーラン、ATSの設計ミス、〇七年一月の伯備線での死傷事故…。その後も続く事故は、JR西日本の根深い安全軽視の姿勢を示しました。しかも、責任をとって辞任した幹部が子会社へ天下りしていたことが発覚。遺族の心を傷つけつづけています。

「情報に励まされ」

 「4・25ネットワーク」は唯一の犠牲者の団体として、安全優先と、事故の真相解明をJR西日本に求め、精力的に活動を続けてきました。「二度とわたしたちのような犠牲者を出してはいけない」との思いからです。

 月に一度の例会では遺族同士で思いを交流し苦悩を共有してきました。参加する遺族たちは、約六十人にまで増えました。

 妻=当時(63)=を失った兵庫県西宮市で理容店を営む男性(66)はいいます。

 「仕事をしているためにネットワークにはなかなか参加できませんが、ニュースを届けていただいています。JR側からの情報ではなく、被害者側からの情報は貴重で、励まされて役立っています」

 前出の女性はいいます。「安全に終わりはありません。だからこの活動にも終わりはありません」


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