2007年4月19日(木)「しんぶん赤旗」

国連安保理

温暖化で初の公開協議

取り組みの緊急性で一致


 【ワシントン=鎌塚由美】国連安保理は十七日、地球温暖化問題を安全保障の観点から議論するため、初めて温暖化問題で公開協議を行いました。

 討論には五十カ国以上が参加。各国代表は、六日に発表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)報告が地球温暖化の影響が予想以上に早く広範囲に及ぶとした警告の内容にも触れながら、取り組みの緊急性を強調しました。ただ、紛争予防としてこの問題を安保理でとりくむかどうかについては各国の意見は分かれました。

 潘基文国連事務総長は、温暖化対策には「長期的な地球規模の対応」が必要だと強調。市民社会や企業の関与とともに、安保理が「起こりうる紛争の根本原因に対処するため他の政府間機構とともに果たすべき役割がある」と指摘しました。

 温暖化の影響が顕著な島しょ国やアフリカ諸国は、その実態に触れ、早急な対応を求めました。太平洋の島しょ国を代表して発言したパプアニューギニアのアイシ大使は、温暖化は「太平洋の島々にとっては単に環境問題の懸念ではなく、経済、社会、政治的問題だ」と強調しました。

 インド洋の島しょ国・モルディブのシャヒード外相は、名指しは避けつつ、米国とオーストラリアに京都議定書の批准を要求。アフリカ南部のナミビアのムベンデ大使は、温暖化によって途上国が「低強度の生物・化学戦争にさらされてきた」と指摘しました。

 温室効果ガスの最大の排出国で京都議定書を離脱した米国のウォルフ代理大使は、「気候変動は深刻な課題を提示している」と述べたものの、米国独自の取り組みを挙げることに終始し、気候変動枠組み条約や京都議定書には触れませんでした。

 バングラデシュやオランダなどは、国連事務総長のイニシアチブで地球温暖化問題での首脳会議を開催するよう求めました。

 今回の協議を主導した安保理現議長国の英国のベケット外相は、「不安定な気候が個人および集団の安全保障に影響を及ぼすことを共通の理解にするために、安保理は独自の貢献ができるし、しなければならない」と語り、紛争予防問題として安保理で論議する必要性を強調しました。

 これに対し、途上国で組織する「七十七カ国グループ(G77)+中国」諸国からは、英国のイニシアチブを歓迎しつつも、安保理での議論自体に強い異論が続出しました。これらの国は、温暖化について先進国と途上国が「共通だが差異ある責任」を有しているとの気候変動枠組み条約の原則を強調し、同条約と京都議定書が最も適切な議論の場だと指摘しました。 



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