2007年4月14日(土)「しんぶん赤旗」

改憲手続き法案

不公正うきぼり 世論で包囲を


 「ここにあるファクスだけでも二千近くもある」―日本共産党の笠井亮議員は十二日の衆院憲法調査特別委員会で、改憲手続き法案の廃案、強行反対などを求めて国民から寄せられた要請文書を積み上げ、採決に強く抗議しました。

 「これだけ重大な法案を審議も不十分なまま、国民の声を無視して、採決することは断じて許されない」―こう訴えると、委員会室に入りきれないほど集まった傍聴人から「そうだ!」「許されない」と力のこもった声援、拍手が起きました。

 それにもかかわらず、自民、公明の与党は、この日の委員会で採決を強行。十三日の衆院本会議でも強行しました。拙速をいましめ、徹底審議を求めるという国民の最低限の要求すら切り捨てた暴挙です。

疑問に答えず

 同法案をめぐっては、日本弁護士連合会をはじめ、多くの弁護士会が反対、慎重審議を求めています。NHKの世論調査では、法案に「賛成」する人はわずかに29%。その中でも、「今の国会にこだわらずに時間をかけて議論すべきだ」が71%にのぼっています。「今の国会で成立させるべきだ」という意見は全体の8%しかありません。拙速審議をいましめる地方紙の社説も日に日に増えています。

 国の最高法規である憲法に直結する法案です。ましてや、与党が法案整備の理由に「国民主権の具体化」をあげるなら、国民世論を無視することは到底できないはずです。

 与党の法案提出者は、「審議は尽くした」などと強弁しましたが、法案の審査時間は五十八時間。憲法にかかわる重大法案なのに、郵政民営化法案(約百二十時間)の半分にも足りません。なによりも、国民との関係では、なんの疑問にも答えていません。

 そもそも今、改憲のための手続き法が必要なのか。法律の専門家も不備を批判する最低投票率すら設けないのはなぜか。資金のある改憲派が圧倒的に有利になる有料スポットCMの仕組みは不公平ではないか。なぜ公務員が一国民としておこなう国民投票運動に対して制限が加えられなければならないのか―。

 わずかな審議でも、日本共産党の論戦と公聴会などで示された国民の声で、この法案は、国民の自由な運動を制限した上で、わずかな賛成でも改憲案を通しやすくする不公正・非民主的な仕組みだという本質が次々と明らかになってきました。

国民を恐れる

 改憲勢力が、国民の意見も聞かず、採決を急いだのも、法案のボロボロぶりが国民の中に広く知れわたるのを恐れているからです。

 法案のねらいも鮮明です。笠井議員が、特別委員会で、法案が九条改憲と地続きであり、安倍晋三首相の改憲スケジュールのために今国会でごり押しされようとしているものでしかないと指摘しました。

 「九条の会」などの運動の広がりの中で、国民は、アメリカとともに「海外で戦争をする国」づくりという九条改憲のねらいを見抜き始めています。

 読売新聞(六日付)の世論調査でも、九条「改正」不要・反対が56%、「改正する」の36%を大幅に上回り、一般論として改憲する方がよいという意見も年々減っています。

 先の大戦では、三百十万人の日本国民、二千万人のアジアの人々が犠牲になりました。憲法九条には、こうした人々の「二度と戦争はしてほしくない」という思いが込められています。これに依拠して、九条守れの共同を広げることと一体に、改憲手続き法案の不公正さ、反民主性を訴えれば、法案をごり押しする自民党、公明党を世論で包囲することは可能です。

 参院での審議は来週十六日から始まります。国民が法案の問題点を知る前に通してしまおうという与党の意図をくじき、“徹底審議の上、廃案を”の声をあげるときです。(藤原 直)



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