2007年3月26日(月)「しんぶん赤旗」

いすゞ期間工の願い

雇い止め不安。正社員にして


 「雇い止めが怖い。安心して働きたい」―いすゞ自動車が、派遣労働者を期間工として直接雇用したのに、わずか二カ月の細切れ契約を繰り返しているため、雇い止め(解雇)の不安が労働者に渦巻いています。その一人、Aさんが本紙に不安な思いを語りました。

 労働者派遣法では、製造業で期間制限(現行三年。二月以前は一年)を超えた場合、受け入れ企業が、派遣労働者に対して直接雇用を申し込まなければなりません。

 派遣労働は臨時・一時的なものだという派遣法の考え方に基づき、常用労働の代替とならないようにするために設けられたのが、この規定です。

 いすゞでは昨年、この規定に抵触する藤沢と栃木両工場で働く千五百人の派遣労働者を期間工として直接雇用しました。

 採用時期によって最初の契約期間はそれぞれ違いますが、その後は二カ月契約を更新しており、すでに十カ月以上働いている人もいます。

二交代残業毎日

 勤務は、午前八時すぎから午後五時の昼勤と、午後八時半から翌朝の午前五時すぎまでの夜勤を一週間交代で繰り返します。残業があるため定時に帰れることはほとんどありません。休日出勤も月一、二回はあります。

 「ラインの仕事は緊張感を強いられるし、ずっと立ち作業なのでハードです。新しく入ってきた人のうち、十人中八、九人は一カ月ともたずやめていく。半日でやめた人もいるんですよ」

 そういうなかでもAさんは頑張って働くので、いすゞのチームリーダーから「ずっと働いてほしい」といわれるほど信頼されているといいます。

 期間工になって、夜勤手当が派遣のときより多くなり、通勤手当も出るようになりました。それでも日給九千円。何年たっても上がらず、これだけだと月収二十万円にもなりません。「これじゃ結婚できるわけがない。仕事も正社員と変わりなく働いているんだから、もっとあげてほしい」

 Aさんがいすゞで働くようになったのは、製造請負の会社に雇われてから。その後、同じ会社の派遣労働者として、いすゞに派遣されて働く契約に切り替えられました。

 「本当は請負でやらないといけないんだが、仕事の面倒はいすゞがみるから派遣にするんだ」という説明を聞いて、これまでは「偽装請負」だったんだと気付きました。

 しばらくすると、「派遣は一年までしか使えないので、期間工にする」といわれ、直接雇用になりました。最初は「契約更新はしない」といっていましたが、二カ月契約が更新されています。生産台数が増えているためですが、雇い止めの不安は消えません。

 「雇い止めになれば寮も追い出され、職も住まいも失ってしまう。以前いた請負会社の担当者が『派遣に戻らないか。祝い金として十万円を出すから』と誘ってきます。それを見ると、会社は雇い止めする気ではないのかと不安になります」

慰労金大幅減額

 短期契約を更新しているため、「慰労金」が減るのも大きな不満です。

 慰労金は、契約満了まで働いた人に支給され、契約期間が長いほど金額も多くなります。例えば六カ月働くと四十二万円もらえます。ところが、二カ月契約を三回更新していると十八万円にしかならず、二十四万円も減ってしまうのです。

 「出稼ぎの人は、いすゞはケチだといってカンカンです。他社では契約更新しても勤務期間を通算して慰労金を払っている。これじゃ、いすゞにくる人はいなくなる」

 短期契約の繰り返しについて同社は「契約期間は生産状況を見て決めている」と説明します。しかし、Aさんは「毎日残業するほど仕事はあるのに短期契約にしているのは、慰労金を減らし、いつでも辞めさせるためですよ」と憤ります。

正社員化の動き

 この問題では、日本共産党の小池晃参院議員が「派遣労働者を直接雇用する場合は長期雇用にすべきだ」と追及。柳沢伯夫厚労相は「必ず長期雇用を申し込まなければならない義務があるというのが直接雇用の趣旨だ」と答弁しています。

 いすゞのやり方は、この派遣法の趣旨に沿っているとはいえません。

 偽装請負が指摘されたキヤノンでは、派遣・請負労働者の一部ながら千人を中途採用の正社員として採用します。トヨタ自動車は来年度、今年度より三割多い千二百人の期間工を正社員に採用。技能伝承や品質確保が理由で、労働組合も要求していました。しかし、いすゞでは、期間工を期間の定めのない正社員にする動きは出ていません。

 「こんな不公正な扱いが許されるのか、社長に直訴したいくらいだ」とAさん。「期間工は長期間の契約期間にし、派遣から切り替えた人は正社員に採用するなど安心して働けるようにしてほしい」と話しています。



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