2007年3月26日(月)「しんぶん赤旗」
知事選終われば88議案すべて賛成
愛知県議会 民主党
“選挙のときだけ野党”
「反対しないのか」自民ヤジ
二月の愛知県知事選で推薦候補が敗れ「野党」となった民主党県議団は二月県議会で、自民、公明が推した神田真秋県知事提出の二〇〇七年度予算案を含む八十八議案すべてに賛成しました。知事選後「建設的野党」を宣言し県政チェックの強化を訴えた同県議団ですが、実態は選挙のための「にわか野党」でした。(唐沢俊治)
二月四日投票の愛知県知事選から一カ月半たった今月二十日、県予算案が、共産党議席空白の県議会で全会一致で原案通り可決されました。採決の瞬間、起立した民主党県議団に対し、自民党席から「反対しないのか」など激しいヤジが飛びました。
民主党県議団は、予算案採決に先立ち、組み替え動議を提出。動議が否決されても予算に賛成する方針を決めていました。
動議の反対討論に立った自民党県議は、知事選から一カ月で民主党が“対決色”を急速に後退させたことを指摘した上で、「この動議は私たちにも分かりにくい手法。県民には全く理解できない」。賛成討論に立った民主党県議が「動議は、予算案のすべてに反対する性格のものではない」と述べると、自民党席からは苦笑が漏れ「賛成か反対かしっかりしろ」。
民主党の片桐清高県議団長は本会議終了後、「予算案は及第点に届いており一定の評価ができる。(予算組み替え動議の提出は)分かりやすいものとは思わないが、総合的な政治判断」と述べました。
「対決」を演出
民主党本部は、都道県知事選で「相乗り禁止」を打ち出しました。
同党愛知県議団は「オール与党」として自民、公明とともに現在三期目の神田知事を二期八年間支えてきましたが、「八年間の任期中、神田知事と協力してきた私たちにとっては、情けにおいては忍びない」(昨年九月議会)としながらも、知事選で同党の方針に従う形で、対立候補として石田芳弘前犬山市長を推薦しました。
「三十二年ぶりに主要政党の相乗り体制が崩れた」(中日新聞など)と言われた愛知県知事選。石田陣営の第一声に、民主党の小沢代表、菅代表代行、鳩山幹事長の三トップが勢ぞろいし、自民、公明との「対決」を演出しました。
知事選直後、民主党は「建設的野党」を宣言しておきながら、結局、予算案に賛成した最大の理由は県議選(四月八日投票)をはじめ、いっせい地方選への影響でした。
民主党県議団内には、「野党として対立軸を鮮明にすべきだ」と予算案に反対する声が出る一方、「道路や橋の建設を含めた予算に反対したら、相手に攻撃材料を与える。選挙がたたかえない」との意見が出て対立しました。
トヨタに厚く
愛知県の二〇〇七年度の一般会計予算は、二兆二千四百五十億円。国の社会保障改悪・国民負担増路線に追随し、暮らし・福祉の独自施策の切り捨て縮小の一方で、トヨタ自動車のテストコース建設の造成調査費に十四億三千四百四十万円支出するなど、企業奉仕の開発推進が盛り込まれています。民主党県連関係者は、「トヨタ出身が多い民主党が、トヨタに手厚い予算に反対できない」と言います。
神田知事は「議論はいいことだが、民主党県議団の対応は少し分かりにくい」と冷静なコメント。一方、神田知事の「対立候補」だった石田氏は「民主党の組み替え動議は正論。きちっと筋を通した」としながらも、「予算賛成は現実論。団長の心中を察します」。
最大会派・自民党県議団の岩村進次団長は「知事選で民主党推薦候補に投票した有権者に対する裏切り行為だ」と厳しく批判する一方で、同県議団内には民主党の「与党入り」を見越す意見も多数を占めます。
自民党のベテラン県議は「民主党が予算に最後まで反対し切れなかったのは、神田マニフェストも石田マニフェストも、(実現までの期間が)早いか遅いかの違いしかなかったからだ。しかし、今すぐ与党になったのでは政党としての大義名分が通らない。(与党入りの)チャンスをうかがっている」。
事実上の与党
「石田さんへ投票した有権者は、民主党を支持して投票したのではなく、神田県政の転換を求めての投票だったと確信しました」と言うのは、日本共産党推薦で革新県政の会から知事選に立候補した阿部精六さん。「民主党の予算賛成は、県民に対する欺まんです。今度の統一地方選では、県政だけでなく政党自身のあり方も問われている」
愛知県議会の共産党議席空白の克服を目指す林のぶとし氏(名古屋市緑区)は「『選挙が終われば、オール与党のさやに納まる』と私たちが主張した通り、民主党は事実上、与党に復帰しました。知事選前のオール与党体制と何ら変わらない県政に必要なのは、確かな野党、日本共産党の議席です」と訴えています。
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