2007年3月24日(土)「しんぶん赤旗」

連載 働けど… 若者たちは (1)

トリプルワーク

朝から深夜まで 月15万


 働けど、働けど…。貧しさと過酷な労働にほんろうされながらも懸命に生きる若者たちの姿をおいました。(菅野尚夫)


 東京・杉並区の高円寺。家賃二万六千円の四畳半のアパートに住む難波仁郎さん(24)=仮名=は、三つのアルバイトを掛け持ちして働く「トリプルワーク」です。

×……×

 広告チラシ配布、サラ金のティッシュ配布、夜は遅くまで居酒屋のウエーターをしています。

 時給は、チラシ配布千三百円、ティッシュ配布千五十円、居酒屋九百円。三つ合わせても月十五万円から二十万円。

 一人住まいの難波さん。自室には台所、トイレ、風呂もありません。日当たりも悪い。暖房器具もなく、寒さをしのげるのは布団に潜り込むときだけです。銭湯は週一回。あとは、ホームレスや内風呂のない若者たちが利用するコインシャワーで体の清潔を保ちます。

 「♪赤い手拭(ぬぐ)い マフラーにして…」。銭湯帰りに、テレビやラジオから流れたフォークグループ「かぐや姫」の歌った「神田川」を口ずさみます。自分を鼓舞するために坂本九の「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」も歌います。

 六〇年代から七〇年代にヒットした歌。集団就職で東京に出てきた少年少女たちが青春時代に歌った歌が現代の若者にも「うけています」。「貧しさ」からただがむしゃらに働かされたあの時代に今の若者たちの心情が戻ったのか?

 難波さんの朝食はパンと牛乳。昼はコンビニ弁当かパン二個と缶コーヒー。夕食はバイト先の居酒屋で出る「賄い丼」。

 朝から夕方の時間帯は冬の寒さ、照りつく夏の暑さの中、広告チラシ配布とティッシュ配布のバイトです。居酒屋でのバイトは夜七時から十時まで、夜九時から深夜一時までなど、その日のシフトで決まります。労働基準法では、午後十時から翌日午前五時までの労働には割増賃金を支払わなければなりません。多くの居酒屋の時給は割り増しされていないのが実態です。

×……×

 「僕の働く居酒屋は割り増しが午前零時から。不満がいっぱいあって『組合つくろうか』というバイト仲間もいるんです」と難波さん。「深夜まで働くのに時給が安すぎます」といいます。

 店の都合で、バイトがカットされることもしばしば。収入が不安定になり、月収が減ります。

 国民年金保険料も国民健康保険料も自分の収入からは払えません。

 「おとなたちは若者の貧しさの実際を知っているのでしょうか。若者を盛り上げて、引っ張っていくことを知らないおとなたち。『人生は暗いよ。つらいよ。甘くない』と説教する。夢を見させてくれません」

 最低賃金の時給を千円に上げるという日本共産党の政策提案に「大賛成です」と、まっとうな主張には正面からこたえる若者です。

 (つづく)



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