2007年3月20日(火)「しんぶん赤旗」
けいざい?
上げ潮ってなんだ?
大企業応援すること
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熊 てぇへんだ、てぇへんだ。
ご隠居 こんどはなんだ。
熊 津波がくるんだってよ。
ご隠居 津波だって。そんな警報はきかねえな。
熊 いや、違ったか。潮が押し寄せるんだったかな。
ご隠居 どうにも話が見えないね。
熊 老眼かい。潮だよ、潮。「上げ潮」がどうのこうの。
ご隠居 ははあ、「上げ潮」路線のことだな。
熊 なんだ、それは。
ご隠居 安倍政権の経済政策のことだ。「成長」路線ともいう。経済が成長すれば、すべてがうまくいくという考え方だ。家計も地域経済も。
熊 なんか、どっかできいたような話だな。“風が吹けば、おけ屋がもうかる”じゃなくて、水が落ちるだったかな。
ご隠居 トリクルダウンのことだな。
熊 なんだ、それは。
ご隠居 トリクルとは、しずくとか、したたりのこと。ダウンは落ちること。水が上にたまると、やがて下にしたたり落ちていく。つまり、大企業が大もうけをすれば、家計や地域に波及していくという考え方だ。
熊 大企業が元気になれば、この世はみんなハッピーになるってことか。なるほど。
家計は悪性風邪
ご隠居 おやおや、納得しちゃっていいのかい。たしかに、大企業は元気になったが、熊さんは元気になったか。
熊 おいらはカラ元気。家計は寒い、寒い。悪性の風邪だ。こいつがまた、長引いて、いっこうになおる気配がない。
ご隠居 だろ、大企業をいくら元気にしても、家計は元気にならない。
熊 なんでだ。
ご隠居 大企業のもうけ方に問題がある。
熊 というと。
ご隠居 自動車とか電機など輸出関連企業をみると、こうだ。アメリカや中国などへの輸出でもうけた。その輸出競争力も、労働者や下請けへのしわ寄せでつくりだしたものだ。
熊 そんなにいじめたのかい。
ご隠居 人件費と部品の調達コストを抑えに抑えた。正社員を減らして非正規の社員を増やしたのも、そのひとつだ。
熊 そういえば、町工場のおっちゃんも、下請け単価を下げろ、下げろと元請けからいってくるって嘆いたな。
ご隠居 こんなやり方で家計が元気になるはずがない。だから、経済協力開発機構(OECD)というところの主任エコノミストも日本の「成長」について、こう言っている。「企業収益と輸出に支えられており、賃金の上昇を欠いているため個人消費が低調だ」
熊 じゃあ、「上げ潮」って何なんだ。
ご隠居 まあ、大企業を、減税などでもっと応援する口実だな。
熊 こいつあ、たまげた。でも、「底上げ」とも言っていたな。おいらたちの生活を引き上げてくれるということだろ。
「底上げ」本当か
ご隠居 その宣伝は、「底上げ」ならぬ「上げ底」だな。
熊 なんだ、それは。
ご隠居 たとえば、最低賃金の引き上げだ。せめて全国一律で時給千円に引き上げてほしいという要求に、安倍首相は「非現実的だ」とそっぽを向いている。
熊 千円だって一日八時間で八千円だろ。月二十二日働いたとして…電卓貸してくれ、えーっと月十七万六千円か。これでも高いっていうのかい。
ご隠居 政府が目玉にしているパートタイム労働法の改定で、正社員との均等処遇の対象は、政府ですらパート労働者の4、5%だという。実際には1%にも満たないという。
熊 それが、「底上げ」の目玉なのかい。そいつあ、目玉が怒る。


