2007年3月16日(金)「しんぶん赤旗」

「臨界」隠し

あわや原子炉暴走

運転資格問われる北陸電力


 東京電力の二百件に及ぶ法定検査時のデータねつ造や不正。東京電力に続いて東北電力でも明らかになった原子炉緊急停止隠し。そして今回の北陸電力の臨界事故隠し。次々と明らかになる原発での不正は、深刻さを増しています。

 北陸電力が隠していた志賀原発1号機の事故は、原子炉暴走につながりかねない重大な事故でした。

 原発の燃料や核兵器に使われるウランやプルトニウムは、中性子が当たると核分裂反応を起こす性質があります。核分裂反応で複数の中性子を放出するため、ある条件のもとで次々と連鎖的に核分裂反応を起こす臨界状態に達します。

 一九九九年九月に茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シ・オー(JCO)で起きた臨界事故は、ウラン化合物を狭い場所に集めすぎたために起きました。

 原発の原子炉の中では、中性子を吸収する物質でできている制御棒を使って連鎖反応を制御しています。原子炉を停止しているときは制御棒が完全に挿入された状態になっています。

 制御棒の引き抜きが意図せずに起こることはあってはなりません。しかも、臨界状態となり自動停止信号が発信したにもかかわらず、自動停止しなかったことは、いざというときの安全装置も働かなかったことを意味します。

 引き抜かれた制御棒の数がもっと多かったり、挿入に時間がかかったりしていれば、どうなっていたかわかりません。放射性物質の放出を防ぐ原子炉圧力容器や格納容器のふたも開いた状態でした。

 このような重大な事故を隠したまま、再発防止策もとらないできた北陸電力はもちろん、同じような体質を示しているすべての電力会社に原発を運転する資格があるのか、厳しく問われています。(前田利夫)


過去の主な原発施設事故

1967年11月日本原子力発電の東海発電所で火災事故。 1人死亡、 4人負傷
 73年 3月美浜 1号機で燃料棒の破損事故(76年末まで隠ぺい)
 74年 7月美浜 1号機、蒸気発生器細管の損傷で運転停止
 81年 4月敦賀原発の放射性廃液流出事故が明るみに
 89年 1月福島第二原発 3号機で再循環ポンプ破損事故
 91年 2月美浜 2号機で蒸気発生器細管の破断事故
 93年 2月福島第二原発の廃棄物処理建屋で蒸気噴出事故。 1人死亡、 2人負傷
 95年12月高速増殖炉原型炉「もんじゅ」でナトリウム火災事故
 97年 3月東海再処理工場アスファルト固化施設で火災・爆発事故。37人被ばく
 99年 6月北陸電力志賀原発1号機で臨界事故(07年3月まで隠ぺい)
    7月敦賀 2号機で冷却水漏れ事故
    9月東海村のジェー・シー・オー東海事業所転換試験棟で臨海事故。3人被ばくし、うち 2人死亡
2002年2月女川原発 2号機の原子炉建屋地下から出火。 2人に放射性汚染物質が体に付着
 04年 8月美浜 3号機で蒸気噴出事故。 4人死亡、 7人負傷

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