2007年3月16日(金)「しんぶん赤旗」

高齢者襲う孤独・貧困

全日本民医連

2万人実態調査


 全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が十五日に発表した高齢者実態調査(二万人)などから、高齢者をおそう孤立と貧困の深刻な実態が明らかになりました。孤独死に追い込まれているケースも多くありました。


貧困 月収10万円未満4割

 調査は、高齢者の生活の厳しさを示しています。本人の月収入のうち40%が十万円未満でした。まったく収入がないが5・3%、一―五万円未満が12%、五万―十万円未満が22・7%となっています。(表)

 おもな収入は、公的年金がもっとも多く、うち国民年金が22%を占めていました。低い国民年金が高齢者の収入の低さにつながっています。4%は無年金でした。

 この結果、35・7%が生活が「大変苦しい」「やや苦しい」と訴えています。しかも42・7%がここ四―五年のうちに暮らし向きが悪化したと感じていました。二〇〇六年に実施された国保・介護保険料の引き上げなどが大きく影響し、生活費を一段と切り詰めている様子がわかります。

 切り詰めている生活費の上位は衣服費、食費、教養・娯楽費となっていました。

 四割が健康状態の不調を訴え、外出や仕事・家事の障害となっています。収入が低いほど不調を訴える割合が多くなり、介護保険改悪による自己負担増で利用を制限したり、施設を退所したりするなど深刻な事態を招いていました。

表

負担 医療・介護難民生む

 同日、全日本民医連が発表した孤独死実態調査は、高齢者の貧困、孤立が孤独死という痛ましい事例につながっていることを明らかにしています。

 調査は、〇六年一―九月までに全国の事業所で経験した孤独死の事例について報告を求めたもの。九十九例の報告がありました。

 このうち六十歳以上は七十八人で、五十四人が男性でした。死因は病死が五十八人。通院状況は、通院中五十三人、中断二十五人などでした。

 東京都監察医務院によると東京都の一人暮らしの死亡は、〇二年の三千八百五十八人から〇五年には四千七百二十九人に増加。〇五年の死因は病死三千二百八十四人、自殺六百四十七人などとなっています。

 調査は、孤独死が増える原因について、医療制度と介護保険の改悪によって自己負担が国民年金を超えるものになり、療養難民、介護難民をつくりだしていることなどにあると指摘しています。

 孤独死を予防するために国・自治体に生存権を保障するセーフティーネットづくりを求めるとともに、民医連としても介護サービスとの連携や「気になる患者訪問」を強めていくとしています。

孤立 「外出しない」3割も

 調査は、高齢者が貧困によって外出をはじめ社会的活動を抑制させ、孤立していく実態を明らかにしています。

 回答した高齢者の32%が「ほとんど外出しない」「まったく外出しない」と答えています(表)。

 理由は「身体の具合が悪い」「特にいくところがない」をあげています。

 近所とのつき合いが「ない」と答えた人は11%、「会ったときあいさつする程度」は21・5%です。収入が低い人ほど「外出なし」と答えています。月五万円未満では40・4%が「外出なし」でした。「外に出かけると金がかかる」と回答しています。医療保険未加入、生活保護、無年金者のそれぞれ四割強が「外出なし」でした。

 回答した高齢者の61・2%は自分や家族の健康、外出時の転倒事故、収入が足りない―など日常生活で心配ごとが「ある」と答え、81・2%が将来の不安を抱え、10・2%は相談相手が「いない」と答えています。

表

 調査は65歳以上の医療生協組合員、友の会員(入院・入所者は除く)7万人を対象に、職員が訪問し聞き取り、2万769人の実情を集約しました。62%が女性。一人暮らし25.4%、夫婦のみ世帯30.7%でした。



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