2007年3月7日(水)「しんぶん赤旗」

石原都政 本当に変える立場・政策持っているのは誰か

福祉より大型開発

身内重用 都政私物化

憲法敵視 暴言数々


 乱脈、暴政の石原都政を続けるのか、都民本位の都政への転換に踏み出すのか―が焦点の東京都知事選挙(三月二十二日告示、四月八日投票)。現職の石原慎太郎知事が自民党の支援を受けて三選をめざすのにたいして、日本共産党が無党派とともに推す吉田万三候補は石原都政の転換を訴えています。前宮城県知事の浅野史郎氏、建築家の黒川紀章氏も石原氏の「対抗馬」として立候補の予定です。無駄遣いと都政の私物化、大型開発優先の一方、福祉を切り捨てる石原都政を本気で変える立場と政策、実績をもっているのはだれなのか。


政党の役割でみると…

共産党

石原知事を徹底追及

マスコミも“他の追随許さぬ”

 前回二〇〇三年の東京都知事選で三百万票を獲得し、自民、民主、公明各党などの「オール与党」に支えられ、“盤石”といわれていた石原慎太郎知事。しかし、「他の追随を許さないのが日本共産党都議団の調査だ」(日刊スポーツ昨年十二月十一日付)、「追及する赤旗に石原慎太郎が『白旗』?」(『週刊朝日』二月二十三日号)という記事がマスメディアをにぎわすほど、日本共産党と「しんぶん赤旗」の追及が石原知事を追い込んでいます。

 「共産党都議団と同党の機関紙『しんぶん赤旗』が昨秋から、石原氏の金銭問題などを徹底追及するキャンペーンを繰り広げ、しかも、一般メディアが追いかけた結果、石原批判報道が相次いでいる」。『週刊朝日』は、日本共産党と「赤旗」の追及を詳しく報じました。

 最近では写真週刊誌が、「石原慎太郎都知事(74)の豪華接待はすっかり有名になったが、先ごろ共産党都議団の調査で、庶民感覚を外れた“税金のがぶ飲み”ぶりも明らかになった」とし、「“税金”で飲みも飲んだり 総額しめて三十四万八千円!」と、共産党都議団の調査資料から作成した表を紹介しました。(『フラッシュ』三月十三日号)

 石原知事を「意気が上がらない」(『週刊朝日』)ところまで追い込んだ日本共産党は、「オール与党」体制が続く都議会で、石原知事の都政私物化や福祉・教育施策の切り捨て、大型開発偏重を正面から批判し、対決してきました。

 シルバーパスの全面有料化、老人医療費助成と老人福祉手当の廃止など福祉に大なたをふるう石原都政を追及。子ども医療費の無料化を小学校入学前まで広げるなど、都政を動かす働きをしてきました。

 大型開発優先の問題でも、石原都政が「都市再生」の名で都市計画や環境影響評価の「規制緩和」を進め、超高層ビルを林立させてきたこと、二〇一六年オリンピックの東京招致を機に、三本の環状道路の建設をはじめ総額八兆五千億円もの大型開発を計画していることを批判してきました。

 教育では、多くの都民が要望している三十人学級の実現を迫るとともに、石原都政が教育基本法の改悪を先取りして学校現場で行っている「日の丸・君が代」の強制をやめるよう要求。「(『日の丸・君が代』の扱いについて)事細かな規定でがんじがらめにすることは、民主主義国家にあってはならない」と、石原知事を追及してきました。

 毎年の予算都議会では、予算組み替え案を提出。都財政(一般会計で約七兆円)の数%の使い方を切り替えれば、福祉、教育、中小企業支援、環境など都民の願いにこたえることができることを示してきました。〇七年度都予算についても五日に組み替え案を発表しました。

 石原知事も「(民主党は)予算を今度は否決(反対)するようだ。それなら対案として、共産党のように組み替え動議を出すべきだと思う」(二日の記者会見)というほどです。

 いま、石原都政の転換を語る資格と実績、その裏付けを持っている政党は、日本共産党だけです。

自民・民主・公明議員の石原知事応援語録

自民党

 「(都立病院廃止・民営化計画について)このマスタープランを高く評価」(02年2月26日・本会議)

 「都立病院の新たな役割に照らせば、母子保健院の廃止はやむを得ない」(02年9月25日・本会議)

 「(三環状道路建設促進などをあげ)いま国が必要なのは、均衡ある国土の発展ではなく、首都圏のポテンシャルを高めること」(03年9月26日・本会議)

 「(『日の丸・君が代』強制を違憲とする判決について)わが党は、本判決が、学校教育、青少年の人格形成をゆがめる、歴史に残る不当な判決と考え、強く抗議をした」(06年10月27日・各会計決算特別委)

民主党

 「(障害者医療費助成の切りすてに反対する意見は)時代に即した福祉改革の足を引っ張る、何の益もない、ためにするもの」(02年9月30日・本会議)

 「都債の追加発行による投資的経費の増額も考慮すべき」(03年3月5日・予算特別委)

 「(大型開発推進の)都市再生に大きく期待し、その推進を強く望む」(02年6月19日・本会議)

 「(『君が代』で)多くの生徒が起立しなかった…これにかかわった教員は処分すべき」(04年3月16日予算特別委)

公明党

 「(石原都政の『福祉改革』は)私たち公明党の主張に沿う、時宜を得たもの」(02年2月26日・本会議)

 「(母子保健院廃止反対の運動に対し)一部の団体がいたずらに住民不安をあおって問題を政治化し、反対のための反対に終始している」(02年9月25日・本会議代表質問)

 「スピーディーな都市再生を図るために、アセス手続きの一部を合理化したことも理解いたします」(02年6月18日・本会議)

 「(『日の丸・君が代』の強制問題で)一部に喧伝(けんでん)されるような強制はなかった」(04年3月25日・予算特別委)

民主党

“にわか対決”の矛盾

8年間知事支えた事実消せず

浅野氏を支援

 民主党は自民、公明両党とともに、八年間にわたって石原都政を支えてきましたが、都知事選が間近になって、「必ず石原都政を倒す」(二月二十八日の同党都連パーティーで円より子都連会長)などと、にわかに「対決」ポーズを強めています。民主党は、浅野氏を支援する方針を決めました。しかし、民主党が石原氏との「対決」を強調すればするほど、都議会民主党の八年間の悪政推進のひどさとの矛盾を深めるだけです。

 「こういう思惑違いとか見込み違いは経営者の責任ではなく、銀行をつくろうという公約を掲げて当選し、トップダウンで指示した知事の責任ではないか」。民主党の田中良幹事長は二月二十二日の都議会予算特別委員会で、都が税金一千億円を出資し設立した「新銀行東京」が経営赤字に陥っていることにふれ、石原知事を“追及”してみせました。

 しかし、「非常に力強い、夢とロマンの持てる新銀行だ」(中村明彦都議)と熱いエールを送ってきたのが民主党です。新銀行への出資について同党は二〇〇四年三月都議会で「わが会派をはじめとした質疑を通じ、多くの懸念が払しょくされてきた」「挑戦に値する取り組みだ」(同都議)とまでのべ、予算に賛成しました。

 民主党の小沢昌也都議は二月二十三日の予算特別委員会で、石原知事が側近の浜渦武生副知事(当時)の海外出張について、「理屈をどうつけようが、実態は観光そのものではないか」と批判しました。ところが、ここでも石原知事から「観光ルートといえば、民主党も南米のイグアスの滝にまで行ったじゃないか」と切り返される始末でした。

 小沢氏は浜渦氏について「自民党のおかげでその後更迭され、ストップがかかったが、そうでなければもっとエスカレートしたかもしれない」とものべました。しかし、その浜渦氏との癒着が都議会で大問題になったのが民主党です。

 民主党は〇五年三月の都議会で、都施設の運営をめぐり、浜渦副知事の依頼を受け「やらせ質問」を行いました。この問題で都議会は三十五年ぶりに百条委員会(地方自治法にもとづく調査権限のある委員会)を設置しました。石原知事は「やらせ質問」について、「『自民党にでもやってもらったらどうか』といったが、どうも自民党も動きそうもない。で、民主党になった」(六月の記者会見)と自身の関与を認めています。

 民主党はこれまで、自民、公明両党とともに、都議会で石原都政の福祉の切り捨てや大型開発偏重に賛成し、推進してきました。

 福祉では、老人医療費助成や老人福祉手当の廃止に賛成し、「老人福祉手当という現金給付制度は、寝たきりを助長する」(〇三年三月)といい放つなど、都民に冷たい態度をとってきました。

 大型開発推進でも、破たんした臨海副都心開発について、「今さら後戻りをするわけにはいかない。ぜひとも頑張っていただきたい」(〇四年三月)と石原知事をあおってきました。石原知事が「今後も総力を挙げ、衆知を集めて開発に取り組む」と答えると、「知事の答弁に、臨海に対するもやは、少し晴れていくのではないか」と持ち上げる二人三脚ぶりです。

 教育基本法の改悪を先取りした石原都政の異常な「日の丸・君が代」強制を自民党とともに先導してきたのも民主党です。

 〇三年七月の都議会で民主党は「今後、都教委は、国旗・国歌の適正実施に向け、各学校や教育委員会、教職員をどのように指導していくのか」と質問。都教委はこれを受けて同年十月、「日の丸・君が代」の強制に従わない教職員を処分することを明確にした方針を通達しました。この通達は、昨年九月の東京地裁判決で、違憲・違法と断罪されました。

 石原知事が行う悪政の数々に、そのお先棒を担ぎながら、急に選挙目当てに石原都政と対決ポーズをとる―都民をあざむく、これほどひどい党利党略はありません。

表

候補者でいえば…

吉田万三氏

元足立区長 共産党と無党派推薦

都政転換へ確かな力

 憲法を都政に生かし、税金の無駄遣いをやめて、暮らし・福祉最優先の東京をめざす―。自民・民主・公明などの「オール与党」が支える石原都政を根本から転換できるのは、それと正面から対決してきた日本共産党と無党派が共同して推薦する革新無所属の吉田万三予定候補だけです。

妨害に屈せず

 吉田予定候補は、石原知事の豪華海外出張や公費での飲食、都事業に四男を重用する都政私物化を批判し、「無駄遣いを許さず、都民の声が生きる都政に転換を」と呼びかけています。

 この点で吉田氏は、足立区長時代に無駄なホテル計画をストップさせた実績があります。足立区では、与党の自民・公明両党がホテルの誘致計画をすすめ、「区の仕事ではない」と住民から反発を受けていました。一九九六年に足立区長になった吉田氏は、議会での激しい妨害にきぜんと立ち向かい、公約した同計画の撤回をやり抜きました。

 石原知事は「何が贅沢(ぜいたく)かと言えば、まず福祉」と公言し、八年間での都の税収が見込みより三兆円も多かったのに、「福祉と保健」費を四百五十億円減らしました(一九九九―二〇〇五年度決算)。その一方で、二〇一六年のオリンピック東京招致を名目に、三環状道路建設などの大型開発を促進し、毎年一千億円も積み立てています。

 吉田予定候補は「こんな税金の使い方は許せない。伸びた税収の多くを、都民の暮らし応援に使う」と訴えています。

 この点でも、吉予定田候補は足立区長時代に、税金の使い方を大企業中心から、暮らし第一に切りかえました。二年八カ月の間に、子ども医療費無料化の拡大や、特別養護老人ホームの三カ所同時建設を実現。不況対策融資は「万三融資」と呼ばれ、歓迎されました。

憲法を中心に

 「命がけで憲法を破る」という石原知事に対し、吉田予定候補は「人間が大事にされる憲法を、都政の中心にすえる」と強調。「日の丸・君が代」強制や学校現場への干渉を改めると表明し、憲法に基づいた教育行政の推進、三十人学級の実現などを公約しています。

 「石原知事の『独裁』的言動は許されません。これに対抗できるのは共産党推薦の吉田万三さんだと考え、応援することにしました」。財界の重鎮で経済同友会終身幹事の品川正治さんは、いいます。

 「私自身の戦争体験を通じても、平和憲法は二十一世紀の日本の進路の座標軸だと考えています。『憲法を認めない』と公言する都知事を変えるために立ち上がった吉田万三さんに強く期待します」

浅野史郎氏

宮城知事12年の“実績”

これで都政変えられる?

 都知事選への出馬を表明した浅野史郎前宮城県知事。浅野氏は、石原都政について、「基本的にはだいたい継承すべきだ」とのべました。「福祉日本一の宮城をつくる」を看板に掲げて県政を担った十二年の「実績」をみると、それもうなずけます。

 一九九三年、ゼネコン汚職で本間知事が逮捕・辞職したことによる知事選で、厚生省のキャリア官僚だった浅野氏は、新生党、日本新党などの推薦を受けて初当選しました。二〇〇五年までの、三期十二年にわたり知事を務めました。

船こない巨大港建設

 就任後、初の県議会で浅野氏は「確かに、今回の不祥事は、県民に大きな衝撃と不信を与えた。しかし、前知事が進めた諸施策は評価すべき点が多い」として、バブル経済時代につくられたゼネコン奉仕の大型開発(港湾・空港整備など)を盛り込んだ「総合計画」の継続を宣言をしました。

 浅野県政が推進した大型開発事業の代表格が、仙台港と石巻港の大規模な港湾建設(総事業費六千四百五十億円)です。両港はわずか五十キロしか離れておらず、そこに二つの巨大港をつくるという無謀な計画です。

 仙台港は、外国コンテナ貨物を中心にした輸入基地へ、巨大ふ頭の建設や土地造成をすすめています。しかし、同港のコンテナ貨物の取扱量は数%です。石巻港は四万トン級の大型貨物船に対応するために、大水深のふ頭六つを含め十二ものふ頭をつくるというもの。九八年に大水深バースができたものの、大型船の入港はなく、昨年初めて四万トン級が入港しニュースになりました。

 仙台空港とJR名取駅間(七・一キロ)を結ぶアクセス鉄道(今年三月十八日開業)も無謀な事業(関連事業含め千二百億円)です。空港の利用客は横ばいなのに、過大な需要予測をもとに推進しました。

大型開発で借金倍増

 浅野県政の十二年で、宮城県の借金は約七千億円から約一兆四千億円(県民一人当たり約六十万円)に倍増しました。

 財政危機の原因の一つとして、浅野氏自身、「大型プロジェクトの推進が県債残高の増加に寄与したということは確かだ」(〇一年の県議会)と認めています。しかも「景気対策のため公共事業を増やせと、(国から)圧力がかかった。国策ですからやっていかなくちゃならない」(今月四日放映のテレビ番組)などと開き直っています。

国保証取り上げ急増

 県は九九年に「財政危機宣言」を出し、全体の公共事業費は縮減されてきましたが、無謀な大型開発は「聖域化」しているために、河川・道路改修など県民のくらしに直結する公共事業が大幅に減らされました。

 同時に、県民が切望する保健・医療・福祉の中核施設群の計画を中止したり、敬老祝い金などのささやかな事業まで廃止・縮小するといった福祉や教育切り捨てを進めました。

 介護手当の廃止、乳幼児や心身障害者、ひとり親家庭の入院給食費の切り捨て、民間保育所への補助や助成金の廃止、原爆被害者団体や民俗文化保存団体への助成金縮小、県立高校の統廃合、専修学校への助成金大幅削減、小中高校の教員大幅削減などを進めてきました。

 浅野氏は「(財政再建計画の削減リストに)いろいろ『福祉の浅野』が泣くようなものも入っている」「県民にとって痛みをともなう結果になることもあることも十分に認識しながら、県政運営に全力でとりくむ」といって強行してきたのです。

 実際、宮城県の一人当たりの民生費は、「日本一」どころか、浅野県政になっても全国最下位クラスを脱していません(別図)。

 国民健康保険証取り上げでも国の言いなり。本間前知事時代は、資格証明書も短期保険証も「絶対発行しない」と確約して「国保証取り上げゼロ県」でしたが、浅野県政のもとで、二千三百三十世帯(〇五年度)が国保証を取り上げられ資格証明書に替えられました。

 浅野氏は「介護は在宅が基本」を理由に、施設整備には消極的です。

 特別養護老人ホームの利用者の見込みを、県は国基準(高齢者人口比3・4%)より低い3%に設定。浅野氏は九九年、「在宅サービスが充実することによって、自宅生活継続の希望が増加するであろうと見込まれる」として、「3%はおおむね妥当」と言い切りました。ところが現在にいたっても、県内の特養ホーム入居希望者の平均待機期間は十八・七カ月(今年二月)。とても「妥当」とはいえません。

 浅野氏は、障害者と家族の多くが「これでは自立破壊法案だ」と反対した、障害者自立支援法にも賛成してきました。

9条改定「議論必要」

 平和の問題ではどうか。浅野氏は、県議会でイラク派兵と憲法改定について問われ、「今回のイラクへの自衛隊派遣については、人道支援を目的として実施されております」(〇四年三月)と評価しました。

 イラク派兵に「憲法の拡大解釈」との意見があるとして、憲法については「時代の要請に合わない部分が出てくれば、国民の中で十分に議論が重ねられることがまず必要ではないか」(同)と答弁。憲法九条を堅持する立場にありません。

 国策に忠実に従い、無駄な大型開発に熱心で住民のくらしには冷たい―浅野県政十二年をみれば、自民党政治と何ら変わらない姿がうきぼりになってきます。

表

黒川紀章氏

石原知事と親密 改憲団体の幹部

 建築家の黒川紀章氏は、石原都知事を「ごう慢な態度」「議会無視の側近政治」などと批判しますが、同氏と親密な関係にあることは自他ともに認めるところです。

 両氏とも、憲法改定や首相の靖国神社参拝などを求める改憲右翼団体の日本会議の代表委員をつとめています。

 黒川氏は「オリンピックの中止」を掲げていますが、同氏が加わる「渋谷・青山景観整備機構」は一昨年、東京・代々木公園をメーン会場にした東京・オリンピック開催を提案していました。開催とセットで首都改造を狙うもので「総予算は五兆円を大幅に超える」(「日経」〇五年十二月六日付)大事業です。


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