2007年3月4日(日)「しんぶん赤旗」

「5月3日」へ審議急ぐ

改憲手続き法案

安倍内閣 正面突破狙う


 安倍内閣と自民・公明の与党は、二〇〇七年度予算案を前代未聞の強行採決で衆院通過させたのを受けて、今国会で「最重要法案」と位置づける改憲手続き法案の「早期成立」に向けた動きを強めています。

 「私は総理と同時に自民党総裁でもあるがこの国会で早期に成立することを望みたい」

 安倍首相は一日の衆院予算委員会で、与党の改憲手続き法案の提出者の一人である葉梨康弘議員(自民)の質問に答え、こうのべました。二月二十六日には、自民党役員会で改憲手続き法案だけをあげて、「五月三日の憲法記念日までの成立を目指してしっかり議論してほしい」と指示しました。

支持率低下で

 自民党の中川秀直幹事長は二月二十八日の会合のあいさつで、党内に改憲国民運動推進本部を新たに設置し、四月に大集会を開く計画を明らかにし、それまでに改憲手続き法案の成立を期す考えを示しました。改憲を参院選の争点に掲げつつ、手続き法案の「早期成立」で国民の間に改憲機運を一気に広げようという狙いがあります。

 中川昭一政調会長は雑誌『諸君!』四月号で「下がった(政権)支持率は、政策によって上げていくしかない…何より安倍総理は憲法改正と集団的自衛権の保持を視野に入れていらっしゃる」と発言。貧困・格差問題、閣僚らの事務所費をめぐる疑惑や失言、「郵政造反」議員の復党問題などで下がる一方の支持率を、改憲を前面に掲げることで回復・突破するという危険な姿勢を明らかにしています。

 こうした流れを受けて、法案を審議する衆院憲法調査特別委員会では、与党側が動きを強めています。二月二十一日の理事懇談会では、日程こそ示さなかったものの、公聴会の開催をもちかけました。自民党関係者は「週半ばには(委員会を)開く」とし、委員会開会―公聴会開催へと流れをつくろうとしています。

国民との矛盾

 しかし、安倍内閣の改憲路線は国民との矛盾も深めています。

 自民党内で、民主党との「改憲合作」をすすめてきた議員たちからは、「与党単独採決を強行すれば将来の改憲での協力に禍根を残す」「この状況で参院へ送るのは怖い。審議に時間がかかり『廃案』となるのは一番まずい」という声も出されています。

 「合作」相手の民主党も混迷しています。衆院幹部は「合意ができれば円満な形で採決を」と言明していますが、参院側は二月二十日の憲法調査特別委員会理事会の初顔合わせで、同党理事が与党執行部の「五月三日までの法案成立」発言に「抗議」して退席。関係議員は「五月三日という『期限』は、昨年十二月に民主党の枝野衆院議員側から出された経緯もあり、正式に打ち消した」と説明しています。「法案を選挙前に成立させ安倍首相に花をもたせることはしない」というわけです。

 世論調査でも改憲手続き法案の今国会成立を求める声は少数。なにより国民は九条改憲を求めていません。法案の内容について民主党議員から「『過半数』の意義、最低投票率制度や有料放送広告の規制などで、もう一度議論する必要がある」という声も上がっています。法案の非民主的で不公正な内容に対する、弁護士会や市民団体などからの疑問、批判を反映しています。

 二日に東京で開かれた「STOP!改憲手続き法案」の集会では、“九条守れの声を広げるとともに、法案の問題点を急速に国民に知らせて廃案に追い込もう”との声が広がりました。


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