2007年3月3日(土)「しんぶん赤旗」

障害者自立支援法 政府の「特別対策」

運動が政治を動かす “応益負担の撤回こそ”


 重い利用料負担のために施設からの退所が相次いでいる障害者自立支援法。政府は二〇〇六年度補正予算、〇七、〇八両年度予算で総額一千二百億円になる「特別対策」を打ち出さざるをえなくなりました。障害者・家族、関係者の運動、これと結んだ日本共産党のとりくみが政治を動かしました。

◇   ◇

 国の「特別対策」の第一の柱は利用者負担の軽減策です。今年四月から、障害者の通所・在宅、障害児(入所・通所)の福祉サービスの一割負担の月額上限を、従来の国基準の二分の一(社会福祉法人利用の非課税世帯のみ)から、NPO法人も含めて四分の一に引き下げます。(表参照)

 市町村民税課税世帯は、新たに所得割十万円未満世帯が軽減対象になります。軽減の資産要件を単身世帯の場合、現行三百万円以下を五百万円以下まで広げます。入所施設利用者(グループホームを含む)は、年間二十八・八万円までの工賃なら、利用料、食費、水光熱費負担をなくします(通所と同様の資産要件)。〇七、〇八両年度当初予算で計二百四十億円を計上します。

 第二は、通所施設への激変緩和措置です。

 通所施設では、日払い化で報酬が激減。施設職員の労働条件が悪化し、事業所が閉鎖される事態が広がっています。こうした事態をふまえ、新体系に移行済みでも、未移行でも、法導入前の九割の収入と現行収入の差額を補てんします。また、通所施設の送迎費用が一事業所三百万円以内で助成されます。

 第三には、新体系への移行のための緊急的な経過措置です。

 新体系に未移行の小規模作業所へ百十万円の補助金を復活します。デイサービスに百五十万円、精神障害者地域生活支援センターに三百万円が補助されます。

 第二、第三の施策には、〇六年度補正予算で九百六十億円を計上し、都道府県に基金をつくります。

 政府の「特別対策」は一定の改善ですが、〇八年度までの限定措置であり、肝心の定率一割の応益負担には手をふれていません。さらに抜本的な見直しが必要です。

 何よりも、応益負担はそのままとされているため、低所得者世帯ほど負担が重い、障害が重い人ほどさらに負担が重くなる逆進性にかわりありません。

 そして、自立支援医療、補装具は、今回の軽減措置の対象外です。

◇   ◇

 応益負担導入による国の負担の減少は年五百十億円ですが、利用料軽減のための予算は、年百二十億円で23%をあてるにすぎません。

 施設への収入保障も、日払い制度の中止と報酬単価の見直しをおこなわないかぎり、根本的な解決になりません。

 小規模作業所への補助金の復活は、切実な声の反映ですが、同じ「地域生活支援事業」の中のニーズが高い「移動支援事業」にはなんら措置がなく、自治体まかせです。

 地域生活支援事業には〇七年度も年四百億円が交付されるだけであり、財源不足から自治体は持ち出しをしいられ、自治体間の格差拡大が懸念されます。

 自治体は、国の「特別対策」を理由に、独自施策を縮小させるようなことがあってはなりません。

 昨年十八都府県と22・3%の市区町村に広がった独自軽減策(きょうされん、〇六年十月調査)のさらなる拡充が、ますます大事になっています。

 和歌山県の御坊福祉圏域の一市五町は、通所施設の利用料を四月から無料にします。

 京都市では、福祉サービスと自立支援医療、補装具の重複利用をする在宅の世帯に、市が独自に設定した月額上限額を超える額を償還する「総合上限月額負担制度」を、〇七年度も引き続きおこないます。

 自立支援法は事業所の報酬を増やすと、利用者にとっては負担増になって利用抑制や断念につながるという、事業所と利用者を対立させるような根本的な矛盾を抱えています。

 政府は、障害者や施設を苦しめている元凶である応益負担の撤回こそ、ただちにおこなうべきです。(日本共産党政策委員会 秋山千尋)

表

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