2007年2月27日(火)「しんぶん赤旗」
女性に産むことを強要
世界の流れに反する
あまりにひどい!
柳沢厚労相の人権感覚
自己決定権は国際的な合意
女性を「産む機械」に例えた柳沢伯夫厚生労働相の発言は、国際的に合意された基本原則に反したもの―。女性の地位向上をすすめる世界女性会議に参加してきた日本共産党の吉川春子参院議員に聞きました。(江刺 尚子)
日本共産党参院議員
吉川 春子さんに聞く
柳沢大臣の発言はあまりにひどい人権感覚です。さらに結果として、女性に産むことを強要するような発言をしたことは、世界の流れに反するものです。そういう発言を大臣がすることの意味を柳沢氏はまったく理解していません。柳沢氏をかばい、罷免しない安倍首相も同罪です。
すべての個人とカップルの自由
一九九四年の国際人口開発会議の「カイロ宣言」は、「リプロダクティブヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康と権利」を規定しました。子どもをいつ産むか、どんな間隔で何人産むか、産むか産まないか、それはすべてのカップルと個人が自由に決めるのが基本的権利だというものです。
自己決定権というこの考え方は、翌九五年に北京で開かれた世界女性会議でも国際的な合意として確認されました。会議とNGOフォーラムには世界中から百九十カ国、五万人が集いました。日本からも二十五人の国会議員を含め、約六千人が参加しました。私も参加者の一人です。
最も議論が難航したのが、性と生殖に関する権利を含むセクシャルライツ(性に関する権利)でした。会議は長時間に及び、行動綱領の採択までに予定を一日延長した。それぐらい大問題だったのです。大議論の末、中絶を認めないローマ・カトリックなどの国は「女性と健康」の節を全部保留することになりました。しかし、国際社会全体としては、差別や強制を受けずに産むかどうかを自由に決めることは女性の権利であることが合意されました。
女性が苦しんできた長い歴史が
産む性として女性たちが苦しんできた長い歴史があります。日本では、江戸時代は、「女三界に家なし」「嫁して三年子なしは去る」「石女(うまずめ)」などという言葉までありました。子どもを産まない女は価値がないというふうにいわれてきました。
「兵隊さんがね、私のおなかに最敬礼するのよ」。第二次大戦後になって、母が弟を身ごもっていたときのことを苦笑しながら話してくれました。戦中は、男児を産んで戦場に送り出せといわれ、戦死しても泣くことさえ禁じられました。産めば産んだで悲しい思いをし、産まなければ産まないで離縁されてもいいという扱いを受けました。
それは世界中同じ。女性は人口政策の対象となり、肌の色も言葉も違う女性たちが産む性として同じ苦しみを味わってきました。そうした時代を過去のものにしようという運動が、カイロ宣言を生み出しました。十三年前です。
この人が少子化担当責任者では
日本政府も、「リプロダクティブヘルス/ライツ」は確認していますから、いろんな施策を講じるときの前提となる原則となっています。現在の「男女共同参画基本計画」にも明記してあります。少子化問題を考えるときは、とりわけ大事です。
柳沢大臣は、こんな経過も到達点も、何も踏まえていません。日本政府も確認した、国際的な大原則に反する考え方を改められない人が、少子化担当の責任者ということでは、まともな施策を講じることはできません。

