2007年2月26日(月)「しんぶん赤旗」

文化芸術の振興に関する第2次基本方針

「芸術立国」というが国の役割さらに後退


 安倍内閣は九日、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」を閣議決定しました。これは、二〇〇一年に制定された文化芸術振興基本法にもとづく国の文化行政の基本方針で、二〇〇二年に決定した第1次基本方針を改定したものです。「おおむね五年間を見通して策定」したとされています。第2次基本方針は、第一部「文化芸術の振興の基本的方向」と第二部「文化芸術の振興に関する基本的施策」からなっており、第一部で振興の基本的視点や重点事項を、第二部で個別の振興策をのべています。

 第2次基本方針は、「『文化力』が国の力」であり、「文化芸術で国づくりを進める『文化芸術立国』を目指す」ことが必要だとしています。しかし、内容的には第1次基本方針と比べても後退し、「文化芸術立国」にはほど遠いものとなっています。

「構造改革」の路線を前面に

 第2次基本方針は、第1次基本方針後、「国内外の諸情勢は急速な変化を続け、文化芸術を取り巻く状況にも大きな影響を与えている」といいます。しかし、まず強調されるのは、「規制緩和などにより新たな分野への民間の進出が可能となり、多様なサービスが効率的に提供されることへの期待が高まっている」などと、政府の「構造改革」路線の“賛美”です。

 他方、芸術・文化活動の状況をめぐっては、指定管理者制度の導入による「懸念」などが指摘されていますが、昨夏発表された文化審議会の「中間まとめ」にあった、専門家の地位向上が「十分でない」ことや、国民の芸術・文化を享受する条件に格差がある、といった記述は抜け落ちています。

 文化審議会の審議の過程では、「正規雇用の減少を背景とした労働条件の悪化で…若い世代を中心に勤労者から舞台芸術鑑賞の機会を奪っています」など、国民の芸術・文化を享受する条件の厳しさを指摘する意見がよせられました。昨年、芸団協が発表した調査でも、芸能実演家の年収が五年前より低くなっていることが明らかにされています。芸術・文化をめぐる状況はむしろ厳しくなっており、こうした現実にこそ目を向けるべきです。

いっそうの「効率化」狙う

 さらに、基本方針は、「官から民へ」、「地方分権」の名で、国の責務を投げ捨てようとしています。それは、「基本的視点」の「国、地方、民間が相互に連携して文化芸術を支える」という部分にあらわれています。

 ここでは、芸術・文化活動をどう支えるかについて、地方自治体に「主たる役割を担うことが期待される」とし、民間からの支援が「一層促進されることが望まれる」とのべる一方、国の役割については、芸術・文化活動を支援するというものの、「厳しい財政事情の下で適切な評価を行い、支援の重点化、効率化」をはかることを強調しています。

 政府は、この五年間で、国立美術館・博物館の「統合」や、独立行政法人の押しつけにみられたように、「効率化」の名のもとに、支援を切りすててきました。それを基本方針として確定しようというのです。

 芸術・文化を楽しむことは国民の権利であり、行政はその条件を整える責務があります。文化芸術振興基本法直後の第1次基本方針は、総花的でしたが、少なくとも国の役割について、「国民すべてが文化芸術を享受しえるための諸条件を整えること」や「自ら諸条件の整備を図る」ことを明記していました。今回の方針は、これに比べても後退していることは否めません。(辻 慎一、党学術・文化委員会事務局次長)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp