2007年2月20日(火)「しんぶん赤旗」

世界でも異常

日本の医師不足

閣議決定で「抑制策」推進


 日本共産党は「深刻な医師不足を打開し、『医療崩壊』から地域をまもる提案」を発表(七日)し、全国で対話をすすめています。日本が世界でも異常な医師不足の国となったのはなぜか。責任はどこにあるのか考えました。(秋野幸子)


国際水準に12万人足りず

グラフ

 日本の現場の医師数は、人口十万人あたり二百人です。経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進国三十カ国中、二十七位(グラフ)で、OECD平均の三百十人を大きく下回っています。この水準からみると、日本の医師は約十二万人足りません。

 しかし、柳沢伯夫厚労相は国会で「ただちに医師が不足して国民の健康や寿命に影響している状況ではない」(参院厚生労働委員会、二〇〇六年十一月)と答弁。厚労省は一貫して“問題は、地域や診療科によって偏りがあることだ”と主張しています。

 実際には、都道府県別にみて人口十万人あたりの臨床医の数が多い東京都(二百六十四人)、徳島県(二百六十二人)でも、OECD平均には届いていません。一番少ない埼玉県では百二十九人です。とても「医師は足りている」などと言える状況ではありません。


「世紀の誤診」と関係者批判

 「自民党や連立与党が推進してきた“医師養成抑制策”と“医療費抑制策”という医療政策の誤りを劇的に示したのが、医師不足問題だ」。医療政策に詳しい東北大学の日野秀逸教授は、こう指摘します。

 政府は一九七〇年代まで「一県一医科大学設置の推進」など、医学部の定員増をすすめてきました。その方針を変えたのが八〇年代です。

 福祉切り捨ての「行革」路線のもとで、八二年、政府は医師数の抑制を閣議決定。これを受けて八六年には、厚生省の「将来の医師需給に関する検討委員会」が「一九九五年を目途として医師の新規参入を最小限10%程度削減する必要がある」との見解を発表しました。

医学部定員の削減を決定

 九三年には、医学部の入学定員は八六年と比べて7・7%減の七千七百二十五人になりました。しかし政府は“もっと減らせ”と、公立大学医学部をはじめ大学関係者に「最大限の努力」を要求。九七年には再度、閣議で医学部定員の削減を決定しました。

 これが医師不足を深刻にした「世紀の誤診」だと、全国公立病院連盟の邊見公雄会長は指摘します(『月刊ガバナンス』〇六年九月号)。

 四半世紀にわたって、政府が医師数抑制に躍起になった最大の理由は、「医師が増えると医療費が膨張する」というものです。

 こうした政府の医師抑制策が、全国各地で「医療崩壊」を引き起こし、住民の命をおびやかす結果をもたらしました。マスメディアにも、「医学部定員削減の古証文はほごにすべき」との声が広がっています。

表

7割の市町村 分娩施設なし

奈良

 産科医の不足は、一刻も放置できません。

 昨年八月、奈良県の大淀町立病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明になった産婦が、十九の病院から受け入れを断られて死亡する不幸な事態が起こりました。県南部を中心に約七割の市町村に分娩できる施設がないという、貧弱な医療体制が背景にあります。

 奈良県では、昨年四月から県南部の県立五條病院(五條市)が産科を廃止、同年六月には大和高田市立病院が妊婦の受け入れ制限を始め、同年十月からは済生会御所病院(御所市)も分娩の取り扱いを休止しました。

 さらに今年四月からは、大淀町立病院も産科を閉鎖する予定で、産科不足が加速しています。

 「奈良県に小児・母子保健センターの建設を求める会」の井戸芳樹会長(医師)は、「全国的に深刻な医師不足に加えて、奈良では、県が産科医療、とりわけ周産期医療体制の整備に対する公的責任を果たしてこなかったという問題があります。県立奈良医大では産科志望が極めて少ないのですが、興味を持っていても産科の過酷な状況をみて希望が持てないという悪循環になっています」と指摘します。

 日本共産党の提案について、井戸会長は「公的責任をしっかり果たせという主張が一貫しており、大いに賛同できる内容です。運動の参考にしていきたい」と語っています。


「打開の道筋示す」 共産党の提案に反響

 日本共産党は、命の平等を保障するための幅広い共同を呼びかけ、全国の九千病院に提案を郵送(十七日)しました。各地で党の地方議員らが医療関係者と懇談するなかで、幅広い人たちから賛同の声が寄せられています。

 滋賀県では、県内二十二の病院に提案を届けて対話をすすめています。ある病院の院長からは「いい提案で、ほとんど賛成できる。政府は国民の命を守るというなら、自衛隊の費用を削減して医療予算を抜本的に増やすべきだ。共産党にぜひがんばってほしい」との激励が寄せられました。

 党本部にも「問題を打開する道筋を示したすばらしい提案で、勇気をいただいた。医療関係者の集まりでぜひ配布したい」(埼玉県内の病院副院長)などの意見が届いています。

日本共産党提案のポイント

1、産科・小児科確保の緊急対策
○公的病院の産科・小児科切り捨てをやめる
○診療報酬引き上げ、出産一時金の大幅増額
○国の責任で周産期医療の拠点整備

2、医師数抑制路線をあらため、医師を抜本的に増員する
○医師の計画的増員
○医学部定員の抜本増

3、勤務医の労働環境整備、医療の安全を高める
○看護師等の増員による勤務医の負担軽減
○女性医師の働く環境の整備
○医療事故に対応する制度の創設

4、公的保険・公的医療の拡充で地域医療を立てなおす

5、不足地域・診療科への医師の派遣と確保
○全国的な医師派遣システムの確立
○都道府県への国の財政支援


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