2007年2月18日(日)「しんぶん赤旗」

改憲迫る対日提言

米元高官ら

海外派兵恒久化も


 【ワシントン=山崎伸治】アーミテージ元国務副長官とナイ元国防次官補を中心とする米国の超党派のアジア専門家グループが十六日、西暦二〇二〇年までを見通した日米同盟についての提言を公表しました。日米同盟を引き続き米国のアジア戦略の「核」とするよう強調。日本が軍事面で、より積極的な役割を果たせるよう、改憲や海外派兵恒久化などを迫るものになっています。

 これは二〇〇〇年十月にアーミテージ、ナイ両氏らがまとめた提言に続くもの。第一期ブッシュ政権ではアーミテージ氏らが政権入りを果たして、提言の具体化を図りました。

 今回の提言は日本に対し、安保問題で政策決定の迅速化を求めるとともに、「日本の憲法問題の議論はわれわれを勇気づける」と歓迎。こうした議論は地域的・世界的規模の安全保障問題での日本の利害を反映している、と指摘しました。

 また、米国が日本での海外派兵恒久化の議論を歓迎し、短期間で兵力を海外に展開できる同盟国を求めていると強調。日米同盟について、兵器の共同開発など軍事安保協力の促進とともに、「核の傘」の維持を主張しています。

 さらに、日本が軍事費を国内総生産(GDP)比でさらに拡大する、国連安全保障理事会の常任理事国となり、軍事的貢献も行う―ことを盛り込みました。

 このほか、北朝鮮の核問題に関し、将来の朝鮮半島統一を視野にいれながら対処していくことなど、地域情勢に言及しています。


解説

日米同盟提言

軍事一体化 露骨な圧力

宇宙の軍事利用など次々

 「二〇二〇年」に向けて日米同盟の強化を提言した「第二次アーミテージ報告」は、二〇〇〇年秋に作成した「第一次報告」について「ブッシュ政権の対日政策の青写真になった」と自画自賛しています。

 実際、憲法改悪=集団的自衛権の行使、自衛隊海外派兵の拡大、在日米軍再編などを提言した「第一次報告」は日本政府や自民・民主両党の国防族議員に大きな影響を与え、結果的に同報告に沿った形で日米同盟の強化が進みました。今回の報告も、同様の政治的効果を狙ったものといえます。

 「第二次報告」の大きな特徴は、日本国内での憲法改悪や自衛隊海外派兵恒久法などの「議論」を絶賛し、これをいっそう促進させようとしていることです。その狙いは、同報告が示しているように、自衛隊の速やかな海外派兵と米軍との統合軍化、つまり米国とともに海外で戦争できる態勢づくりです。そのための日米の軍事的融合・一体化のための方向をより露骨に示しています。

 一つは、日米制服組レベルの一体化です。ハワイの米太平洋軍司令部への自衛隊員常駐と、東京の自衛隊統合幕僚監部への米軍人常駐です。米統合参謀本部に将校を置いている英国やカナダなどを念頭に置いているものとみられます。「日米共同作戦体制」の確立にも言及しています。

 また、「武器輸出三原則の撤廃」「宇宙の軍事利用」「航空自衛隊次期戦闘機の導入」など、日米軍需企業の要求を強く反映しているのも大きな特徴です。イージス艦の共同開発など、軍需企業レベルでの一体化も盛り込んでいます。

 これら軍事一体化の前提条件である「機密情報の保護」や「軍事情報の共有」も挙げています。

 露骨な「第二次報告」は、自民・民主両党の「改憲論議」を後押しし、対アジア政策の核としての日米同盟強化と、米国軍需企業の利益拡大という米国の国益を図ろうというものです。(竹下 岳)


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