2007年2月16日(金)「しんぶん赤旗」
社会リポート
家賃滞納で市営住宅強制退去
吹きさらしの土手 2週間生活の夫婦
共産党尽力、住まい確保
家賃滞納を理由に、群馬県前橋市の市営住宅から退去の強制執行をうけ、吹きさらしの土手の下で二週間以上の生活を強いられた夫婦が、日本共産党の早川まさえ県議、前橋市議団らの尽力で生活保護を申請し、暖かい住まいも確保することができました。
群馬・前橋
暖冬とはいえ、深夜の冷え込みは厳しく、まともな食事をとることなく衰弱した夫婦が工業団地で寝ているのを発見したのは、犬を連れ散歩していた近所の人です。一月三十一日のことでした。
「土手の下で寝ている人がいる」。午後十時半、以前この夫婦の面倒をみていた人から連絡を受けた早川県議はただちに関口敏明・前橋市議団事務局長とともに現場に急行しました。
ぐったりしていた夫婦に「こんなところに毛布一枚で寝ていたの」と声をかけた早川議員。宮本恒夫さん(62)=仮名=は「団地を追い出された。もうどうなってもいい。死んでもいい」と最後の力を振り絞るように言いました。
「何をいっているの。このままここにいたら本当にそうなるのよ。二度とこの世にもどれないのよ」。早川議員の必死の説得でその日は、現場から五キロ離れている小林久子市議の事務所に二人を連れていきました。布団を運び込み、煮込みうどんをつくり、当座の空腹感を癒やし、寒さから解放されました。
翌日、田村とも子市議が本人とともに市役所の社会福祉課に出向き、生活保護受給の手続きを行いました。同時に知り合いの家主にお願いして、1DKのアパートを確保しました。とりあえず雨露をしのげる住居に落ち着いた宮本さん夫婦は初めて笑顔をみせました。
石屋の職人だった宮本さんは、養豚の仕事に就きましたが、倒産で失業。ここ数年は空き缶集めをしていました。収入は月二万円程度。夫婦二人の食費がせいぜい。電気、ガスは止められ、コタツ台の上にしちりんを置き、調理し暖をとっていました。
「煙が出ている」との近所からの苦情で市の建築住宅課の職員が訪問。しかし、「しちりんで火をおこすのはやめろ」というだけで、生活事情を聞くこともなく立ち去ったといいます。
前橋市では、家賃を滞納する世帯に対する市営住宅退去の強制執行が急増。地元の上毛新聞にも報道され、市当局のひどい仕打ちに市民の批判が広がっています。
「これは宮本さんだけの問題ではない。冷たい行政を正さなければならない」。日本共産党前橋勢多地区委員会の生方秀男委員長は六日、党市議団と相談し、高木政夫市長にホームレスをつくりだす市営住宅退去の強制執行の中止とホームレスとなった市民の救済措置を求める「緊急申し入れ」を行いました。
市長も「社会福祉課と建築住宅課の横の連携を深め、今まで以上に対応していきたい」と答えざるを得ませんでした。
宮本さん夫婦が落ち着いたアパートを、早川県議、田村市議らが十日に訪問。「生活保護ももうすぐ出るよ。あら、毛布で寝ているの。布団、持ってきてあげる。落ち着いたらもう少し広いところを探してあげるからね」と早川県議。「地獄に神様や。あの日は寒かった」と宮本さんは声をつまらせました。(高瀬康正・党国民運動委員会)

