2007年2月16日(金)「しんぶん赤旗」

主張

最低賃金

大幅な引き上げで貧困打開を


 政府は、今国会に最低賃金法の改定案を提出する予定で準備を進めています。安倍首相は、「四十年ぶりの改正」や「生活保護水準との整合性」には言及するものの、抜本的引き上げの要求にはまったくこたえようとしません。

報われる社会の否定

 最低賃金で問われているのは、貧困と格差を土台から正す抜本的な引き上げです。日本の地域ごとの最低賃金の平均は、時給にしてわずか六百七十三円です。フルタイムで働いても月十二万円程度にしかならないこんな低い賃金では生活が成り立たず、掛け持ち労働を強いられる労働者も少なくありません。

 全労連や連合の労働団体は、時給千円以上に引き上げるよう要求しています。この要求を日本共産党は強く支持しています。

 現行の最低賃金は、労働者の平均的所得の32%ですが、時給千円というのはおよそ五割にあたります。

 世界で広く採用されている国際基準では、平均的所得の五割以下を貧困世帯としています。欧州諸国では最低賃金は労働者の平均的所得の四割台、五割台ですが、これをさらに引き上げ、六割をめざしています。日本でも最低賃金で働いても貧困にならない社会を目標に抜本的な引き上げが求められています。

 最低賃金の大幅引き上げを拒否する安倍首相の態度は、最低賃金で働いても貧困にならない、報われる社会の否定です。首相のいう“再チャレンジ社会”の空虚さを垣間見る思いです。

 “時給千円に引き上げたら、中小企業の経営を圧迫する”という首相の議論にも道理がありません。

 日本共産党の志位和夫委員長が、衆院予算委員会の総括質問で指摘したように、最低賃金の抜本的引き上げを中小企業の経営を応援する政治と同時並行ですすめれば、安倍首相のいう矛盾はおこりません。

 トヨタのように日本一大もうけをしている巨大自動車会社が、下請けに対して最低賃金をまったく無視して低い単価を押し付けている無法をやめさせればいいのです。タクシー業界で、最低賃金よりはるかに低い水準の賃金での労働を余儀なくされているのは、規制緩和の結果であり、これを正せばいいのです。中小企業を支援する政治の責任を果たさない一方で、中小企業を人質に、最低賃金の抜本的引き上げを拒むのは、本末転倒です。

 中小企業を持ち出して、最低賃金の大幅引き上げと対立させる議論は、大企業より中小企業の方が労働者を犠牲にしているという思い込みを前提にしています。

 実際は、労働者の賃金・年収が八年連続で減少しているもとでも、中小企業は労働分配率を上昇させており、逆に大企業は労働分配率を減少させています。パートの時給も大企業より中小企業の方が高くなっています。労働者を犠牲にして大もうけをしているのは大企業です。

まともな単価の根拠に

 中小企業の経営と最低賃金の大幅引き上げは両立できるものです。

 「最低賃金の大幅引き上げは逆に、下請け中小企業が親会社に、それに見合ったまともな単価を堂々と要求する有力な根拠になります」と、東京都大田区の金属加工業の経営者は語っています(日曜版二月十一日号)。

 労働者の賃金の底上げは、個人消費を活発にして、商店街を元気にしていく源にもなります。

 最低賃金の抜本的引き上げと全国一律の制度をめざして、国民が力をあわせるときです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp