2007年2月6日(火)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい

「政治の堕落」招いた 政党助成金


 伊吹文明文科相、松岡利勝農水相はじめ、自民、民主両党の幹部などによる「事務所費」疑惑が大きな問題になっています。日本共産党の志位和夫委員長は「続発する『政治とカネ』の問題の温床に財界からの企業献金の野放図な拡大とともに、政党助成金頼みの政治の堕落がある」(一月三十日の衆院本会議)と指摘しました。政党助成金が一九九五年に導入されて今年で十三年。「政治の堕落」はどこまできたのでしょうか。


“税金漬け”で感覚マヒ

 昨年末までに支給された政党助成金の総額は三千七百六十億円に達します。この制度は一九九五年、細川内閣が「政治改革」と称して小選挙区制とあわせて導入しました。その目的は「民主政治の健全な発展に寄与する」(政党助成法第一条)ことでした。

 しかし、政党の活動は「健全」になるどころか、導入当初の目的に反して企業・団体献金は一向になくならず、日本共産党を除く各党は収入面で政党助成金への依存は強まるばかりです。(グラフ(1))

グラフ(1)

 一方で、民主党本部の個人献金は九九年の九百二十五万円をピークに年々減り続け、二〇〇五年はわずか二万七千円でした。(グラフ(2))

グラフ(2)

 支出でも特に自民、民主の両党は政党助成金なしに成り立たないといってもよいぐらいです。

 〇五年の本部支出をみると、民主党は人件費、光熱水費、備品消耗品費、事務所費で構成する経常経費の98%を助成金から支出。政治活動費のなかでも選挙関係費や宣伝事業費、購読料を取るはずの機関紙誌発行まで100%助成金です。自民党も人件費の92%、備品消耗品費97%、機関紙誌97%、宣伝事業費99%を助成金から充てています。

 政党の活動をするうえで不可欠の経常経費や政治活動の中心をなす費用の大半が助成金でまかなわれているのです。

 郵政民営化をめぐり解散・総選挙があった〇五年はCMやコンサルティング代に数千万円から数億円単位の政党助成金が使われました。候補者に配る公認料だけでなく選挙の供託金まで自民党二千百万円、民主党八千七百万円(没収分)を助成金から出していました。

 労せずして、何十億、何百億円もの資金が流れ込み、テレビCMから供託金まで野放図な使い方をされています。このことが、「政治とカネ」をめぐる感覚マヒにつながっているのは間違いありません。

使途の大半は“闇の中”

 細川内閣は政党助成金導入の目的について「政治腐敗事件が起きるたびに問題となる企業・団体献金については、腐敗の恐れのない中立的な公費による助成を導入することなどにより廃止の方向に踏み切る」(一九九三年八月)と説明していました。

 しかし、企業・団体献金は廃止どころか、助成金との“二重取り”が定着。日本経団連が「優先政策事項」にそって政党通信簿をつけるようになって、ますます野放図になっています。

 金権腐敗事件もなくならず、口利き疑惑や献金不正処理問題も後を絶ちません。

 政党助成金を原資にした事件も発生。〇三年十二月には自民党の新井正則衆院議員(埼玉8区)が助成金を原資にした買収容疑で逮捕されました。九八年にも政党助成金を買収資金の穴埋めに使った自民党衆院議員(故人)が逮捕される事件がありました。

 こうした背景には、助成金の使途の大半が“闇の中”という問題があります。政党助成金の使い道は「使途について制限してはならない」(政党助成法四条一項)とされ、規制を受けず当局に調査権限もありません。しかも、一件五万円以上の支出には個別の金額や支払い先などの報告が必要ですが、人件費と光熱水費名目の支出は総額だけですむため、詳細が見えません。

 また、政党本部が受けた政党助成金は、国会議員が代表を務め事実上の財布代わりとなっている政党支部にも支給されます。〇五年は自民党七十九億円、民主党五十一億円にもなりました。

 政党支部の収入は、個人献金や企業・団体献金とともに、政党本部や県連からの交付金が大半を占め、「事務所費」問題で注目されている政治家の資金管理団体との間で、資金のやり取りも頻繁に行われています。

 数百万―数千万円単位の政党助成金が使い道も問われず“つかみ金”状態で国会議員に還流することは、国民との地道な結びつきのなかで財政的基盤を確立する努力を放棄することにつながっています。

カネ目当ての新党・復党

 「政治の堕落」という点では、制度発足以来、助成金目当ての新党結成や復党劇が繰り返されてきたことがあります。

 “国会議員が五人以上集まるだけで一億円”といわれるように、政党助成金の分配は一月一日現在の政党所属の国会議員数などで決められます。そのため、制度発足以来、年末になると政党の離合集散が繰り返されました。

 一九九六年には新進党の一部の議員が年末に太陽党を旗揚げしました。九七年に新進党が解散したのも十二月三十一日。その結果生まれた六つの新党は九十三億円(九七年分)の助成金を山分けしたのでした。二〇〇〇年十二月には参院院内会派の「参議院の会」が衆院の無所属議員四人と新党「無所属の会」を結成し、二億二千七百万円を手に入れることになりました。

 昨年十一月、「郵政選挙」でいわゆる“造反組”とされた十一人が自民党に復党したのも、助成金が大きくかかわっています。無所属議員のままでは政党支部に配られる助成金の分配にあずかれないという事情がありました。自民党の側も、復党で二億六千万円もの“増収”となりました。


07年 319億円を分け取り

 赤ちゃんからお年寄りまで国民一人あたり二百五十円に人口数をかけた金額が毎年各党に配られます。五年ごとの国勢調査の結果に基づいて見直し、〇七年は前年に比べて二億一千万円も増え、過去最高の三百十九億四千百万円となりました。

 受け取りを申し出た各党への分配は、毎年一月一日現在の国会議員数と国政選挙の得票率に応じて決まります。

 〇七年の助成金決定額は自民=百七十一億円、民主=百五億円、公明=二十九億円、社民=十億円などです。それぞれの金額を国民一人あたり二百五十円で割ると、自民=六千八百四十万人分、民主=四千二百万人分、公明=千百六十万人分、社民=四百万人分に相当します。〇五年総選挙の比例得票数と比較すると、各党とも実際の得票数を上回る規模の助成金を受けとる計算です。(表)

表

憲法違反の制度

共産党は受け取りません

 日本共産党は、政党助成金が憲法で保障された思想・信条の自由を侵害するものと考え、制度導入以来一貫して受け取りを拒否し、制度の廃止を求めています。国民にとっては、自分の税金が支持しない政党に強制的にまわされる強制献金だからです。しかも、国家から独立した自主的組織としての政党本来のあり方をゆがめ、国家権力から政党への介入を招きかねません。

 なにより、国民の要求をくみ上げて政治を変える方向や政策を語り、支持を訴えるのが政党の活動です。日本共産党は一人ひとりの国民と草の根で結びつく中で、機関紙誌の購読や募金をお願いし、党費・個人献金・機関紙誌収入の自主財源で党活動をおこなっています。


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