2007年2月4日(日)「しんぶん赤旗」
高利装うが元本割れも
「ロコ・ロンドン」金取引にご用心
高齢者狙う新手の投資話
「元本保証」「高利回り」をうたい文句に、虎の子を奪い取る新手の“投資話”の被害者が急増しています。なかでも、投資の知識がまったくない高齢者がターゲットになっています。
「こちら社会部。」に被害を訴えたのは東京都内の団地に一人で住む女性(86)=仮名=です。
昨年七月の昼。「ピンポーン」。玄関チャイムでドアを開けると、そこにはスーツ姿の男性。落ち着き、誠実そうな身なりと口調。さし出した名刺には投資会社の「課長」とあります。
「利息がいいですよ」「確実にもうかりますね」。三十万円預けると利子だけで一年後には七万円、三年後には二十一万円にもなるという高金利です。
三島さんの年金は、二カ月で十五万円ほどです。働いていた時の貯金を「ちょびちょびと切り崩し」生活してきました。
手元に病院の支払いのために解約した定期預金四十万円がありました。いざという時や孫たちの祝い事のために手を付けずにおいたお金です。
翌日ふたたび訪れてきた男性に押し切られるように契約。迷いながらも三十万円を渡しましたが、不安になり息子に電話をしました。
あやしいと感じた息子はその日の夕方、会社に電話しましたが、「クーリングオフ(契約解除)はできない」と一蹴(いっしゅう)。三日後、同社を直接訪れ、契約の実態がわかりました。
■危険な取引
契約は、「ロコ・ロンドン」という名称の金の証拠金取引。ロンドン市場の金価格が期待通りに変動すれば、大きな利益を生み出すこともあります。しかし、損失が初めに支払った金額を上回ることもある危険な取引です。
三島さんは、金の取引をすることも、元本が割れる可能性があることも、まったく聞いていませんでした。会社側は、契約から三日後、しぶしぶと返金に応じました。しかし「元本割れ」を理由に返金されたのは十二万円だけでした。
国民生活センターは一月、ホームページに「ロコ・ロンドン」の項目を設け、特別の注意を呼びかけています。相談は二〇〇六年秋ごろから寄せられ、件数は最近だけで七十―八十件。高齢者が危険な取引のしくみを理解できないまま、百万円以上の高額の投資をするケースが多いといいます。「投資したお金のほとんどが戻らなかった」という場合も。相談事例に名前があがった会社は二十―三十社です。
■規制法なく
現在、「ロコ・ロンドン」金取引を規制する法律はありません。「担当する省庁もない」(経済産業省)という“法の抜け道”を利用した新手の手法。そのため、消費者がクーリングオフをすることや法的規制をかけることも困難です。
三島さんの場合は、契約時にうその説明がされたことなど、業者側にいくつもの問題点があり、消費者契約法や特定商取引法に違反するケースです。しかし、事実を認めさせるのは容易ではありません。三島さんと契約した会社も本紙の取材に、「事前の説明で理解していただいた」と主張。自らの非を認めません。
国民生活センターは、▽しくみが分からない場合は手をださない▽取引するつもりがないならば、はっきりと断ること▽契約した場合は速やかにやめること―とアドバイスします。
証拠金取引 消費者が業者に「証拠金」(保証金)というかたちで金銭を預け、業者がその金銭をもとに、その金額の何十倍もの取引をおこなうもの。金の現物が手に入るわけではありません。

