2007年2月2日(金)「しんぶん赤旗」
JR西は説明責任果たせ
福知山線事故で遺族ら陳述
追加調査求める声相次ぐ
意見聴取会
百七人が死亡したJR西日本の福知山線脱線転覆事故で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は一日、「意見聴取会」を国交省で開催しました。事故原因を究明する最終報告書の作成に向けてのもので、航空事故では過去七回開かれましたが、鉄道事故では初めてです。
学識経験者や遺族・負傷者三人とJR西日本の労組代表を含む計十三人が公述人として出席。運転士による危険な速度超過運転、「日勤教育」、新型自動列車停止装置(ATS)整備、運行計画、安全管理体制などについて意見陳述しました。
「ふたつのものを私から奪った」と切り出したのは、大学生だった長男、慎太郎さん(当時十九歳)を亡くした土木技術者の山中秀夫さん。JR西日本幹部らと九回にわたっておこなった意見交換を踏まえ、「余裕のないダイヤでの定時運行を運転士に強要した」とのべ、JR西の「組織としての欠陥」の究明を求めました。
妻と妹を失い、遺族らでつくる「4・25ネットワーク」世話人を務める浅野弥三一さん=技術士=は、JR西が一九八九年の経営会議で決めたATS整備が九三年の経営会議で大幅後退し、投資額も計画的でなかったことをあげ、「後退の経過を明らかにし、究明してほしい」と訴えました。
二両目に乗って重傷を負った小椋聡さんは、連絡がついた負傷者からの聞き取り調査でわかった乗客の乗車位置などのデータを提出。事故報告書案との食い違いを指摘し、すべての被害者への聞き取り調査を求めました。「列車は命を運んでいる。ものを運んでいるわけではない。JRの安全は国民の安全でもある」と、国民への説明責任を果たすよう求めました。
JR西の三つの労組代表は、乗務員の再教育の実態、過去の重大事故の教訓と会社の対応などについて意見を述べました。
関西大学の安部誠治教授は「なぜ速度超過をしたのか、それを抑止する保安施設の整備をなぜ怠ったのかを究明することが重要」と指摘。「稼ぐを第一にかかげた企業体質」とともに、ATS義務付けが遅すぎた「国土交通省の安全責任、体制に言及することが望ましい」と訴えました。
JR西日本の丸尾和明副社長(鉄道本部長)が「日勤教育」を擁護する意見をのべたことに対して、事故調の佐藤淳造委員長が苦言を呈す場面もありました。
意見聴取会 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が事故原因を特定し、最終報告書を作成するのに先立ち、学識経験者から参考意見を求める手続き。事故調設置法第一九条は「一般的関心を有する」事故について開催するよう規定。事実経過をまとめた「事実関係報告書」を基に、公述人が一人ずつ見解を示す形式で進められ、委員は公述人に質問することができます。同法は公述人について、事故を起こした関係者か学識経験者と定めています。

