2007年2月1日(木)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が、三十一日の参院本会議でおこなった安倍晋三首相の施政方針演説に対する代表質問の大要は次の通りです。


女性の人格と尊厳否定する暴言

柳沢厚労相の罷免を求める

写真

(写真)代表質問する市田忠義書記局長=31日、参院本会議

 私は日本共産党を代表して安倍総理に質問します。まずお聞きしたいのは、政策を論じる前提ともいうべき、二つの問題です。

 第一は、柳沢厚生労働大臣の、「女性は子どもを産む機械」という発言についてであります。この発言は、女性の人間としての人格と尊厳を根本から否定する暴言であり、「厳重注意」で済む話ではありません。問われているのは、総理の人権感覚、憲法感覚であり、柳沢厚生労働大臣の、罷免を求めます。もし罷免できないというのなら、安倍内閣全体の人権へのモラルが、柳沢大臣と同じレベルだということになるではありませんか。

閣僚の事務所費疑惑に国民の批判

任命者として具体策取れ

 第二の問題は、「政治とカネ」についてであります。

 現職閣僚や、政党の幹部にまで広がった「事務所費」疑惑に、いま国民の大きな批判が高まっています。

 政治資金規正法には、政治資金が国民の浄財であり、その透明性を確保し、いやしくも国民の疑惑を招くことがあってはならない、と明記されています。

 わが党以外の政党が、国民の税金である政党助成金をますます重要な政治活動資金にしている現状では、政治資金の中身の透明性について、国民の目はとりわけ厳しいものがあります。疑惑をかけられた閣僚や政治家は、保管が義務づけられている領収書と帳簿を公表するなど、自ら率先して事実を国民の前に明らかにすべきではありませんか。

 総理は、「政治家は常に襟を正していかなければなりません」「各党・各会派において十分議論されることを期待します」と、まるで人ごとのようにのべられました。しかし、ことは、自分が任命した閣僚の疑惑です。首相として、なにをどうするつもりか、具体的にお答えください。

戦争のない世界へ―輝く憲法9条

首相は根底から否定するのか

 さて、あなたの施政方針演説から伝わってきたもの、それは、現憲法のもと、第二次世界大戦後、日本国民が営々として歩んできた営みへの、根本からの否定そのものであります。

 戦後世界は、第二次世界大戦を経て、再びあのような戦争をしてはならないという、痛切な思いから出発し、それが国連憲章に結実しました。それらと、直接響きあい、二度と悲惨な戦争の当事者にはならないと宣言したのが、憲法九条でした。そして、その値打ちが、いまほど日本でも世界でも輝いている時はありません。

 イラクから帰国した陸上自衛隊のある幹部は、「犠牲者がゼロだったのは憲法のおかげだ。憲法九条はかえない方がいい」と語っています。

 アメリカのイラクへの先制攻撃とひきつづく軍事占領は、いよいよ破たんにひんしています。イラク国民の死者は数十万人。米兵の死者も三千人をこえました。一月二十七日にはイラクからの撤退を求める大規模な集会がワシントンでひらかれました。

 今日の国際社会は、アメリカを含む世界の諸国民と大多数の政府が、イラク反戦と国連憲章にもとづく平和への大きな流れをつくりだしたように「戦争のない社会」をつよく求めています。どんな超大国でも軍事の力だけで世界を支配することはできない――このことが世界の前であきらかになりました。

 総理は、こうした一連の事実をどのようにうけとめておられますか。

 さきごろ、ナイロビで開かれた世界社会フォーラムでは、「戦争のない世界」への先がけとして憲法九条の役割が注目され、世界にとっても戦争と軍隊を放棄する九条が有効だとの考えが共有されました。

 総理は、「国際社会においてあらたな模範となる国になりたい」とのべましたが、そのために必要不可欠なのは、アメリカにつき従って海外への自衛隊派兵を続けることではなく、憲法九条にもとづく政治をすすめることではありませんか。

 その憲法にもとづく戦後体制を時代にあわなくなったとする総理の立場は、まさに、世界の流れに反した逆流でしかありません。それは国際社会の模範どころか、アジアと世界からの孤立の道ではありませんか。

 日本共産党は、憲法改悪反対、九条を守れの一点で、国民的な多数派をつくるために力をつくすとともに、九条改定と一体の改憲手続き法案の廃案を強く求めるものであります。

国民の暮らし守るのは政治の責任

貧困と格差拡大に何をなすべきか

 国民のくらしはどうでしょうか。総理は、大企業・大資産家への応援はこれまでに例を見ないほど、明確にのべられました。「四十年ぶりの減価償却の見直し」であり、証券課税の優遇措置の延長であります。空前の利益をあげて、わが世の春を謳歌(おうか)する巨大企業と大資産家に、その利益にふさわしい負担を求めることこそ、政治の責任ではありませんか。

憲法25条に明記された最低限の生活もできない

 ところが、国民には高齢者への課税強化に加え、定率減税の半減につづく全廃で一層の負担増が押し付けられています。この負担増は所得税だけにはとどまりません。昨年六月に起きた住民税負担の大幅増が再び繰り返されようとしています。

 大企業は、内閣府の「ミニ経済白書」ですら指摘するように、空前の利益を役員と株主で独占し、その富をつくりだした従業員・労働者への分配をへらしています。

 その結果、憲法二五条に明記されている最低限度の生活すら破壊する、格差と貧困が広がっているのであります。

 とりわけ、いま急速に広がっている若者の貧困は、日本社会の未来にかかわる重大な問題であります。少なくない若者が、アパートも借りられず、「インターネットカフェ」といわれる、パソコンといすがおいてあるわずか一畳ほどの空間に寝泊まりしているという衝撃的な実態が生まれています。懸命に仕事を探し、ちゃんと働いているのに貧困から抜け出せないのです。総理は、世界第二の経済大国である日本でこんな事態がおきていることを異常だとは思いませんか。

 働いている人の三人に一人、若者や女性はその半分が、パートや派遣、請負、アルバイトなど不安定な働き方を強いられています。そのほとんどが年収百五十万円以下だといわれています。

 これは自然現象ではありません。これまでは認められていなかった派遣労働が合法化され、最初は限られた職種だけだったのが、ほとんどの業務にまで広げられるという、自民党・公明党の政治がおこなってきた雇用のルールの規制緩和が原因でした。

 そして、この規制緩和を最大限に利用して、空前の利益をあげたのが巨大企業群でした。

雇用ルール違反は取り締まる―首相は言明実行を

 昨年の本院予算委員会でも取り上げましたが、労働者派遣法にもとづけば、とうの昔に正社員となっていたはずの人たちが、身分は派遣のままで、正社員と同じような仕事をしているのに、正社員の半分以下の賃金で、違法に働かされています。しかもそれが、松下電器やキヤノンなど、日本を代表する企業にまん延しているのであります。

 総理は、「いわゆるワーキングプアといわれる人たちを前提に、コストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それはもう大変な問題であろう」と、答弁されました。

 この答弁は大変重要であります。問題は、それをただすために何をなすかであります。

 総理は、「法違反は厳正にとりしまる」とも言明されました。法律が厳格に運用されれば、製造業では一年、その他の業種では三年、同じ事業所で派遣労働者として働いてきた人たちは、数万人単位で、正社員への道が開かれます。総理の言明どおりに、法律を厳格に実行し、正社員への道を開くよう求めるものであります。

 日本経団連の会長で、違法な偽装請負が大問題になっていたキヤノンの御手洗会長は、私と総理が議論をしたその日の夕方の経済財政諮問会議で、自らの違法行為を反省するどころか、法律の方を変えるべきだと主張しました。飲酒運転でつかまった運転手が、法律が厳しすぎるから、飲酒運転を認めるような法律に変えてくれ、といっているのと同じことであります。

 総理はこうした主張に絶対にくみするべきではありません。不退転の覚悟で、法律の厳正適用を求めるものであります。

 いま内政でも外交でも、その行き詰まりの根源にあるのは、憲法を頂点とするシステムではなく、逆に憲法をないがしろにしてきた自民党政治そのものであることを指摘して、私の質問を終わります。


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