2007年1月29日(月)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論

市田書記局長の発言<大要>


 日本共産党の市田忠義書記局長は二十八日、NHK「日曜討論」に出演し、「政治とカネ」、格差問題、教育問題など通常国会の焦点について、自民党の中川秀直、公明党の北側一雄、民主党の鳩山由紀夫、社民党の又市征治、国民新党の亀井久興の各党幹事長と討論しました。司会は、NHKの影山日出夫解説委員。


政治とカネ―まず 説明責任を果たせ 

 鳩山氏は、選挙資金の不正処理疑惑で辞任表明した角田義一参院副議長の問題にふれ、「透明性を出す努力をしたい」と政治資金規正法の見直しに言及。中川氏も事務所費問題で「(党の)内規か法改正か総合的検討が必要」と発言しました。市田氏は次のようにのべました。

 市田 説明責任はまったく果たされていません。角田さんは辞任の記者会見で、惻隠(そくいん)の情で記者にこれ以上聞かないでくれといったそうですが、やはり疑惑について、きちんと調べて、国民、国会の前にきちんと明らかにする必要があります。

 それから佐田(玄一郎)前行革担当相の場合も架空の事務所、実態がない事務所という問題がありましたが、これも辞めてすむ話ではない。事実をきちんと国民と国会の前に明らかにするべきです。他の閣僚の疑惑も指摘されているわけで、首相の任命責任も問われています。ところが、安倍首相の施政方針演説を聞いていると、まるで人ごとのような感じでした。

 また、政党の幹部にも疑いがかけられているわけですから、政党としても、自浄能力を発揮すべきです。政党の責任として事実を明らかにする。(法改正も必要ですが)任命責任、政党としての責任を明らかにすることが先決だと思いますね。

 司会から制度改正の立場を質問された市田氏は次のようにのべました。

 市田 制度改正は当然です。現在でも、政治活動費は、五万円以上の支出に関しては領収書もつけての報告が義務づけられています。ところが事務所費など経常経費は総額だけでいいとされています。その抜け道をつかって、知られるとまずいようなお金を全部事務所費に入れるという疑いが今もたれている。これが一番の問題です。事務所費についても、当然領収書の添付と報告を義務づけるべきです。

 じゃあ政治活動費の報告は五万円以上(が領収書の添付)でいいのかということですが、ある新聞によると(支出が)全額五万円以下という閣僚もいるそうです。国民は透明性を求めているわけですから、金額の多寡にかかわらず、疑惑をもたれないようにすることが必要だと思います。

格差問題―労働法制の規制緩和を許さない 

 番組では、「格差が拡大していると思う」人が83%、「景気の回復が実感できない」という人が82%に達している世論調査結果が紹介され、格差問題の対応が焦点に。中川氏が「(大企業の)成長果実は確実に家計に回っている」などと述べたことに市田氏は次のように指摘しました。

 市田 いわゆる「成長戦略」というのは、大企業の収益をあげさせれば、それが全体に波及するという言い分だが、事実は全然違う。働く人、国民の所得は減っています。たとえば、政府が出している去年の法人企業統計を見ると、二〇〇〇年と〇五年の比較で見ると、資本金十億円以上の大企業の経常利益は一・五倍、役員報酬は一・七倍です。ところが、従業員給料だけが、〇・九五倍で、減っている。いわゆる労働分配率が減っています。

 どうして、大企業の利益が上がったかというと、正社員を非正社員に置き換えて、パート、請負、派遣などを正社員の半分ぐらいの給料で雇っているからです。さらに正社員は、成果主義賃金で追い立てられ、この人たちもたいへんひどい状態に置かれています。そういう犠牲のもとに大企業が利益をあげているわけです。

 内閣府の「ミニ経済白書」にもこう書いてある。「消費の動向が今後の景気の持続性にとってリスクとなる」。政府自身が消費が冷え込んでいる、国民の懐が温まっていないということをいっています。そこに手を打たなければならないのに、大企業だけ減税で庶民には負担増というそのやり方はやはり、まずいと思います。

 北側氏らが雇用問題について政府の施策を紹介しましたが、市田氏は、次のように述べました。

 市田 ぜんぜん評価できない。いま、貧困が広がり、年収百五十万円、二百万円以下という、働いても働いても生活保護水準以下の暮らししかできないという世帯は四百万世帯以上で特殊な例ではありません。多くの人々が、いつそうなるかわからないという不安にさらされている。最低賃金の問題でいうと、アメリカでも連邦最賃を四割引き上げました。EU(欧州連合)もベルギーやギリシャでは13%、スペインでは44%引き上げているんです。

 いま日本の最低賃金の平均は六百七十三円ですよ。しかも地域別になっている。全国一律になっていないのは、世界の先進国では、カナダとメキシコだけなんです。全国一律で少なくとも最小限の生活はやっていけるように、連合、全労連も時間あたり千円は支給するようにしようといっているわけですから、そういう方向を目指すべきだ。

 それから、現行でも製造業への派遣労働者は、一年以上働けば、それを受け入れている企業が正社員になるか(どうか)といわなければならない義務がある。それ以外の業種でも、三年以上たてばですよ。ところが、これをなくしちゃうというのを、経済財政諮問会議でも(日本経団連会長の)御手洗さんなんかがいっている。いわば、派遣労働の永久化のような動きもある。しかも、こういう派遣や請負が増えてきたのは、規制緩和の結果です。自然現象ではない。そのために千六百万人が非正規雇用になって、多くの人が給料は、二百万円以下ということになっているわけですからそういうところを底上げして、これ以上の労働法制の規制緩和を許さないことが大事だと思いますね。

教育―競争と管理ではなく、憲法にのっとった 教育を          

 教育再生会議が二十四日に決定した第一次報告について「社会総がかりで子どもの教育にあたるといっている。まったく大賛成」(北側氏)と評価したことにたいし市田氏は反論しました。

 市田 いまの教育が抱えている問題に答えを出していない。いま北側さん、「社会総がかりで」といわれました。ところが教育再生会議は非公開ですよね。国家百年の大計なんですから、もっといろんな立場、専門家の意見もきいてきちんと対応すべきだ。

 それから日本の教育が抱えている一番の問題は、競争教育と子どもの管理のしすぎです。これは国連からも、日本の競争教育はあまりにもいきすぎているといわれているわけですから。ところが今度の方向は全国学力いっせいテストでしょう。それの公表までやる方向です。いじめ対策では、出席停止といいますが、アメリカで出席停止をやったら、いっそう犯罪が増えたといわれているわけですよ。授業時間を10%のばすといっていますが、フィンランドなんて日本より授業時間が短いけど学力世界一ですよ。いじめの問題でも上から抑えつける、そういうやりかたではなく、もっと自主的、自立的な憲法にのっとった教育をやる必要がある。

 もちろん市民道徳をきちっと身につけさせることは大事なことだけれども、国家的な管理で上からの抑えつけで自主性を抑えるやり方では、本当の教育の再生にはならないと思います。


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