2007年1月16日(火)「しんぶん赤旗」

第3回中央委員会総会決定の用語解説 (上)

第1章


戦後五十周年にあたっての「村山談話」

 第二次世界大戦終結から五十年の一九九五年八月十五日に、当時の村山富市首相が発表。この中で、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」とし、「心からのお詫(わ)びの気持ちを表明」しました。談話は、「侵略戦争」という言葉を避けた点では不十分でしたが、ともかく「植民地支配と侵略」が日本の誤った「国策」で進められたことを認め、「反省」の意思を示した点では、それまでになかったものでした。後継内閣も継承。就任前、再検討を示唆していた安倍晋三首相も、日本共産党の志位和夫委員長の質問に「継承する」と表明しました。

「従軍慰安婦」問題での「河野談話」

 第二次世界大戦中の旧日本軍によるいわゆる「従軍慰安婦」問題について、日本政府が一九九一年十二月から調査した結果を、九三年八月四日に発表した際の官房長官談話。このなかで、従軍慰安婦は「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」こと、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」ことなどを認め、「歴史研究、歴史教育を通じて…永く記憶にとどめ、同じ過ちを繰り返さない」と約束しました。この談話に対し、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」などが猛攻撃、事務局長だった安倍晋三氏も「談話の前提は崩れた」と攻撃しました。しかし、首相就任後、安倍氏は談話を「受け継ぐ」と答弁しました。

「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」

 前身は、一九九七年二月に結成された「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」。同会は、日本の侵略戦争を美化し、とくに従軍慰安婦問題を否定する立場から歴史教科書を書き直させることを目的に設立されました。発足当時の代表と事務局長は中川昭一現自民党政調会長、安倍晋三現首相です。二〇〇四年、会の名前から「若手」を削除し、現在の名称になりました。昨年十二月には会の中に従軍慰安婦問題を検証する小委員会を設置し、従軍慰安婦募集と移送についての旧日本軍の関与と強制性を認めた一九九三年の河野官房長官談話を否定して新たな政府談話を発表させようとしています。メンバーには、下村博文官房副長官や山谷えり子首相補佐官ら首相側近が名前を連ねています。

日中、日韓首脳会談で合意された、歴史認識の基本を共有する仕事

 二〇〇一年四月に、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学校用歴史教科書が検定合格となり、中国、韓国と外交問題になりました。

 昨年十月の日中首脳会談で、歴史の共同研究を進めることが合意され、十二月に、日中歴史共同研究委員会の第一回会合が北京で開かれました。日中平和友好条約締結三十周年にあたる〇八年中に研究成果が発表される予定です。

 日本と韓国の間では、〇二年五月に日韓歴史共同研究委員会が発足し、研究が開始されています。韓国側は研究結果を歴史教科書に反映させるよう主張し、日本側は検定制度を理由に拒否するという状況もありましたが、〇五年六月の研究報告書では、近現代史で双方の意見が対立したものの、「日韓関係史研究の第一段階を画した」と評価。同月の首脳会談で、第二期歴史共同研究委員会を発足させ、傘下に教科書委員会を設置することで合意。昨年の首脳会談では、その合意を再確認しました。

集団的自衛権の行使

 「集団的自衛権」とは、“自分の国が攻撃されていない場合でも、密接な関係のある外国が攻撃を受けた場合、いっしょに武力で攻撃できる権利”とされています。日本はこの権利は保有するが行使はできないというのが、歴代政府の憲法解釈でした。しかし、アメリカが、集団的自衛権の行使をくりかえし要求してきたことに応え、安倍首相は、憲法解釈を変えてある程度その行使ができるようにし、さらに憲法そのものを変えて天下御免で行使しようとしています。その目的は、米軍が地球規模でおこなう戦争に、自衛隊が何の制約も歯止めもなく参加できるようにすることです。

改憲手続き法

 与党と民主党は九条改憲の条件づくりを目的に、憲法九六条で定められた憲法改正の手続きを整備するために、昨年五月、それぞれの法案を国会に提出しています。臨時国会では継続審議となっています。憲法九六条は、憲法「改正」について「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議」し、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」で「過半数の賛成」を得て初めて承認されると定めています。

 与党案、民主党案とも改憲勢力に有利な制度にする点では本質的な違いはなく、昨年十二月には“修正”で大筋合意しています。安倍首相は改憲手続き法案の通常国会での成立を期すと宣言。また、改憲を夏の参院選の争点にする考えを示しています。

「ネオコン」グループ

 米国における「新保守主義者(ネオ・コンサーバティブ)」。このグループはもともとは民主党に属していましたが、七〇年代後半に共和党に移り、現ブッシュ政権の中枢に登用されました。強大な軍事力で「民主主義」=米国の価値観を世界に広めるべきだと主張。単独行動主義路線や先制攻撃戦略、イラク侵略・占領、中東「民主化」政策などは、ネオコンの考えに基づいたものです。ウルフォウィッツ国防副長官、ファイス国防次官、ボルトン国連大使(いずれも前職)が代表格でしたが、イラク侵略の泥沼化と並行して風当たりが強まり、ブッシュ政権二期目にはウルフォウィッツ氏らが政権から外され、昨年十一月の中間選挙での共和党敗北を受けボルトン大使も辞職しました。

六カ国協議

 北朝鮮の核問題解決のため、韓国、北朝鮮、日本、中国、アメリカ、ロシアの六カ国によって二〇〇三年八月から開始された多国間協議。〇二年一月にはアメリカがイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難し、翌年三月にはイラク戦争を開始するなかで、北朝鮮核問題については周辺諸国の努力もあって外交的解決をめざす枠組みがつくられました。〇五年九月には朝鮮半島非核化とその後の平和体制の基本を確認した共同声明を採択。しかしアメリカによる対北朝鮮金融制裁で協議は中断され、〇六年十月には北朝鮮が核実験を実施しました。同十二月に再開された協議では、共同声明に立ち返った朝鮮半島非核化への真剣な努力が各国に期待されています。

憲法二五条に保障された生存権

 憲法二五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と「生存権」を規定し、これを保障・拡充することは国の責務であると明記しています。これは、「人間の尊厳にふさわしい権利」を提起した世界人権宣言を先駆的に定めたものであり、国民が生活の改善や社会保障の拡充を求めていく大切なよりどころです。一九五七年に朝日茂さんが生活保護基準の改善を求めて起こした裁判に対し、東京地裁は、憲法二五条にいう最低限度の生活水準とは「健康で文化的な水準」を維持することであり、予算の有無で決定されるものではないとしました。

「偽装請負」を合法化する方向での労働者派遣法の改悪

 偽装請負とは、請負(委託)契約の形式をとりながら、実態としては労働者派遣であるものをいい、違法です。請負と派遣の違いは、請負の場合には派遣先(発注者)と派遣元(受託者)の労働者との間に指揮命令関係が生じないというのがポイントです。労働者派遣法では、受け入れ期間に制限がない業務でも、三年(製造業は当面一年)を超えて継続して派遣労働者を受け入れる場合、派遣先企業は雇用契約を申し込まなければなりません(請負契約にはこうした義務がない)。日本経団連の御手洗会長は、これでは「コストは硬直的になってしまう」とのべ、この規制を撤廃し、請負であっても指揮命令を可能にする方向で労働者派遣法などの改悪を要求しています。

最高裁大法廷判決

 一九七六年の学力テスト問題での判決。ここには弱点も含まれていますが、国家と教育のあり方について注目すべき論点がありました。憲法二六条を子どもの学習する権利ととらえ、教育は「本来人間の内面的価値に関する文化的営み」であり、教育内容に対する国家的介入は抑制的であるべきであることを憲法の要請として明らかにしました。また、法令にもとづく教育行政機関の行為であっても「不当な支配」になりうるとし、国が教育内容を何でも決められるという見解をしりぞけました。政府は、この最高裁判決を基本法改悪正当化の根拠にしようとしましたが、それが判決の趣旨をゆがめるものであることが、わが党の追及で浮き彫りになりました。

「やらせ質問」の告発と追及

 二〇〇六年九月の教育改革タウンミーティング(青森県八戸市)で文部科学省・内閣府が、教育基本法改定に賛成する会場質問をひそかに依頼していました。日本共産党が十月末の衆院教育基本法特別委員会で暴露したのをきっかけに政治問題化しました。

 共産党は、別の会場でのタウンミーティングで「やらせ」があり、文科省の教基法担当幹部が直接「やらせ」に関与していたことや、別の教育改革フォーラムでの集団「やらせ」も暴露。教育基本法改悪の大義のなさを明らかにしました。

 政府は教育改革以外も含む過去のタウンミーティング全百七十四回を調査、「やらせ」が十五回、内容を指定しない「さくら」質問が百五回あったことを発表しました。

混合診療解禁

 「必要な医療はすべて保険でおこなう」という公的保険の原則を崩し、保険診療と保険外診療の併用を認めることです。「患者の選択」などを口実に、二〇〇六年の健康保険法改悪で制度化され、保険外の患者負担が高度医療技術や病室料金などに広く適用できることになりました。これでは、新しい技術や新薬を利用できるのはお金のある人だけという「治療の格差」「いのちの格差」をつくり出しかねません。混合診療解禁は、医療を営利企業のもうけの場にしようというアメリカや財界の要望に沿ったものです。しかし、医療関係者の反対や日本共産党の追及で政府も「必要な医療は保険で」と言わざるを得ず、具体化を許さないことが重要になっています。

市場化テスト法

 市場化テスト法は、行政機関と民間企業で、公共サービスの担い手を競争入札で決める制度を導入するもの。すべての公共サービスを対象に、民間企業からの提案を受けて政府は毎年「公共サービス改革基本方針」を作成します。日本経団連が要望し、昨年五月に自民、公明、民主の賛成で法律が成立。安倍首相は「市場化テストの積極的な実施」を強調し(臨時国会所信表明演説)、ビジネス誌が「百年に一度 五十兆円のチャンス」と書くように大企業のもうけの対象として狙われています。来年度は、年金保険料の収納事業、ハローワークの人材銀行、パスポートや国民健康保険の窓口業務、地方税や国保料の徴収業務など二十七事業で実施しようとしています。

アジア政党国際会議

 アジアの合法政党が与野党の区別なく一堂に会する会議。二〇〇六年九月のソウル会議には、三十六カ国から九十政党の代表が参加しました。アジアはかつて戦争や対立が多発し、現在でも宗教や歴史の多様性も大きい地域ですが、アジアに広がる「平和の流れ」にそって、他の地域にはない、政党間の協議機構として発展しています。第一回は二〇〇〇年にマニラで、その後は二年ごとにバンコク、北京、ソウルで開催。バンコク会議には緒方靖夫国際局長、北京会議には不破哲三議長(当時)、ソウル会議には志位和夫委員長が参加し、会議の成功に貢献するとともに、各国の政党代表と幅広い交流をおこないました。ソウル会議には、日本から自民、公明、民主、社民の代表も参加しました。

非同盟諸国首脳会議

 大国主導の軍事同盟に加わらず、世界平和と民族自決権の確立、公正な世界秩序の樹立などをめざす国々の首脳が集まる国際会議。第一回会議は一九六一年、旧ユーゴスラビアで開かれました。この運動は、アフリカ諸国の独立を促すなど多くの成果をあげ、ソ連崩壊後も、イラク戦争など米国の横暴があらわになるなかで、世界平和と国際ルールの尊重を訴え、重要な役割を果たしています。〇六年九月にキューバで開かれた第十四回会議は、非同盟運動の目的の第一に多国間主義の促進・強化、国連の中心的役割の強化を掲げ、単独行動主義や覇権主義をきっぱりと批判しました。加盟国は現在百十八カ国で、第一回会議の五倍近くに発展しています。


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