1997年9月22日

第21回党大会にたいする中央委員会の報告(5)

 日本共産党第21回大会の1日目(22日)に、不破哲三幹部会委員長がおこなった「第21回党大会にたいする中央委員会の報告」(5)は、つぎのとおりです。


五、党建設と党活動を新しい発展水準に高める

 つづいて、党建設、党活動の諸課題について報告いたします。

党員と読者の拡大の到達点

 まず、党勢の拡大の問題ですけれども、この三年間に、多くの入党者を迎え、党員の規模は前大会を一万一千人以上上まわるものとなりました。(拍手

 現在約三十七万人という水準であります。これはまだ第一歩でありますけれども、そこには、新しい波が確実に起こっているということをつよく感じることができます。

 新しい党員をこの間に迎えた支部は四二%に達しました。これは、新しい党員を迎えるという仕事が、文字どおり全党のものになりつつあることのあらわれであります。

 私たちは、二〇〇〇年までに得票の一割の党員、党員の倍加という目標をかかげていますが、この三年間に文字どおり二倍以上の党勢を実現した支部が、全国で百四十七支部にのぼります。党員の倍加が現実に可能だということを、これらの支部の実践的な実績がしめしているのであります。(拍手

 またこれまで党がなかった地域、職場、学園に新しい支部が百九十三建設されました。

 こういう点で、いま新しい波が始まりつつあることに確信をもって、これをさらに大きくひろげ、より強大な党の建設に力をつくしたいと思います。なかでも、このなかで若い層の方がたの入党が拡大していることは、党とわれわれの事業の未来につながる頼もしい動きであります。

 読者の拡大の問題ですが、この半年間は、毎月増勢をほぼつづけてきました。九月一日現在で、「赤旗」読者の現勢は二百三十万をこえているというところで、いま拡大の努力中でありますが、読者の面では、まだ前大会当時の現勢を回復するにはいたっておりません。そのなかで、七つの県、八十二地区が大会水準を突破して、この大会を迎えました。その健闘を評価したいと思います。(拍手

 選挙戦での躍進と並行しての毎月増勢というこの半年間の活動には、重要な教訓があります。

 それは、毎月毎月、確実に増勢をかちとってゆくという地道な努力の重要性であります。二中総で、毎月の増勢に執念を燃やすべきことをおおいに強調しましたが、実際にこの仕事が全党的に確実にやりとげられていれば、そのつみかさねで、大会を迎えたこの時点でも、もっと大きな成果をかちえていたはずであります。

 現に一連の県や地区では、毎月増勢を着実につみかさねて、大会水準の突破をはじめ大きな前進をかちとってきたことが記録されています。ここで、毎月増勢の重要性という問題に新たに目をむけたい、ここに大切な教訓があります。

 目をひろげてみますと、読者拡大の現在の状況には、さらにいくつかの問題があります。

 読者の拡大は、党員拡大と同じような形の発展にはなっておらず、選挙戦の前進が先行して、拡大の活動がその後を追うという状況になっています。たとえば、いま党中央に電話で全国各地から「赤旗」を購読したいと申し込んでくる方が相当数にのぼり、全体としてかつてなく大きい数になっています。つまり、全国の多くの地域で、党のいまの状況をみて「赤旗」を読みたいと思っているが、身のまわりには声をかけられる党の支部も党員もみつからない、そういう方がたが遠方から電話で党本部に申し込んでくる、それが相当な数にのぼるということです。ここには、私たちがこれからの読者拡大の活動で目をむけるべき新しい問題があると考えます。

 一つは、激動的な情勢のなかで、激動的にふえている新しい党支持層にたいして、わが党の活動がまだおよんでいないという問題であります。

 これまでの読者拡大などの活動は、どちらかといえば、比較的党に身近な人びとのところに働きかけて着実に読者をひろげてゆくといった活動が、主流をなしていました。しかし、わが党への関心が大きくひろがっている最近の状況、“誤解の壁”がとけはじめたと実感できる状況のなかでは、そこで生まれている新しい党支持層のなかには、こういう活動だけではなかなか手が届きにくい人びとが広範にいます。そこに、党の活動をどうひろげてゆくのか、実際にそういう人びととのあいだにどういう形で結びつきをつくってゆくのか、これは新しい課題であります。こういう新しい党支持層のあいだに党との日常的な結びつきをひろげてこそ、これらの人びとの党への支持や信頼もより強いものとなり、より確かなものになる、それがまた新しい党の躍進を準備する力にもなる、そこにしっかり目をむけたいという問題であります。

 この分野では、まだ党活動の大勢にはなってはおりませんが、これまでの党勢拡大の活動にはみられなかった新しい経験もずいぶん全国に生まれています。各地の積極的な経験をおおいに学び、すすんだ経験は全国にひろげ、知恵もつくしてこの新しい課題にとりくみ、情勢にふさわしい党勢の拡大をこの分野でもなしとげたいと思うのであります。

 もう一つは、配達・集金をはじめとする「しんぶん赤旗」の体制「しんぶん赤旗」を数百万の規模で発行し、維持・拡大するという体制を、党発展の今日の新しい段階にふさわしく、支部を基礎にして強化するという問題であります。

 “機関紙革命”というよび声でこの面で大きな改革をやってから、かなりの時日がたちます。現在党の地方議員や機関幹部の過重負担がなかなか解決されないとか、支部が地域や職場の読者と日常的に結びつき、配達や集金もしっかりつかむという問題が不徹底になるとか、いろいろな問題が惰性に流されて解決されないまま、先送りになっているという状況もあります。思いきって配達・集金をふくめた機関紙活動の体制の立て直しに新鮮な気持ちで緊急にとりくみ、初心にたちかえって今日の情勢にふさわしい機関紙活動の体制づくりを本格的にすすめることが、いま非常に大事になっていると思います。

 こういう点をふくめて、おおいに努力を強化し、六中総が提起し、決議案で今世紀中、つまり二〇〇〇年までと期限をさだめた目標、「得票の一割の党員、五割の読者」の実現をめざしたいと思います。

党建設の重点的な努力方向を提起する

 つぎに、新しい情勢にふさわしく党建設、党活動全体を発展させる問題でありますが、この点では、量的な発展と同時に党活動の質的な内容・水準の強化・向上に特別な努力をはらう必要があります。そして、そういう力をもった党支部と党機関の建設という問題が、いよいよ重大性をもってきていることを強調しなければなりません。

 その基本的な方向は決議案で明確にされておりますので、ここでは、課題ごとというよりも、全体にわたるいくつかの重点的な努力方向を提起したいと思います。

第一。その地方・地域で日本共産党を代表しての政治活動・大衆活動を重視する

 第一は、支部にしても機関にしても、その地方、地域で日本共産党を代表して活動する政治活動、大衆活動を重視するという問題であります。

 広範な人びとのあいだでの政治宣伝、また、住民の要求にこたえる活動、各分野の団体や個人との交流、あるいはシンポジウムの主催、さまざまな課題にもとづく共同戦線、共同闘争の展開、革新懇活動への参加など、支部の場合でも機関の場合でも、政治活動、大衆活動の比重は、この間、しだいに大きなものになってきています。その活動をもっともっと思いきって重視してひろげる必要があります。

 とくに地方政治の分野での活動は重要であります。いまでも、地方政治にとりくむのは四年に一度だけ、選挙のときだけだという党機関が一部にあります。現実には多くの有権者が、国政革新への期待もふくめて、身近な地方政治の分野で、日本共産党が何をやるだろうか、このことをひろく見まもっています。そこで起こってくる諸問題にたいして、住民の利益を代表して必要な対応をし、必要な努力をするというのは、党機関の重要な任務であります。ましてや地方議員、地方議員団への指導と援助が任務であるということは、党規約にも明記されているとおりであります。

 そしてこれは、党が有権者にたいして直接の責務を負っている問題であります。もしも、自分が責任を負っている自治体で何が起こっているかについて無関心で過ごしている党機関があったとしたら、これは、党を政治的に代表する機関としては失格だということを銘記していただきたいと思います。まさに、日本共産党の真価が、全有権者の規模でためされる分野として、地方政治へのとりくみを徹底的に重視することを強調したいのであります。

第二。党の内部生活で、「支部が主役」をつらぬく

 第二に、党の内部の生活では、「支部が主役」をつらぬくことが大事であります。

 決議案にも強調されているように、すべての支部が、その地域、職場、学園で多数者になることを大目的とし、その立場から大衆との結びつきをひろげ、大きな活力ある党の建設をめざす。そして、支部の「政策と計画」というものは、この大目的を積極的に計画的に実現してゆくための、そのときどきの「計画」であります。全国のすべての党支部が、そういう壮大な抱負と展望、そして真剣なとりくみをもって、まさに「主役」としての活動をすすめてほしい、これが第一の点であります。

 党機関の内部指導の問題でも、「主役」の役割を名実ともにはたす支部が党の大勢になるように指導する、このことを徹底して重視する必要があります。

 「支部の自主性や創意性をはげます指導」、「一人ひとりの同志に勇気と確信をあたえる政治指導」、決議案で強調されているこれらの方針を、けっして言葉だけのものにせず、実際の党の生活のなかに生かしてつらぬくことが大事であります。

 言葉では、「支部が主役」ということをはやり言葉のように口にするが、日常の党内指導では支部の状況もつかまず、数字的な課題を押しつけるだけでことをすませるといった傾向は、残念ながらまだまだ各地にみられます。こういう状況を打破してほんとうに支部が主役の指導を具体化する必要があります。

 その点では、

 これらが、指導にあたって欠かすことのできない眼目となります。

 こういう指導のためには、党機関自身が政治的・理論的な水準をたかめる努力が重要であって、これをなおざりにしてはなりません。

 理論水準をたかめるというのは、すべての幹部が論文の書き手になれ、ということではありません。党綱領の路線、科学的社会主義の理論についてより深くつかむ努力を不断におこなうことは当然ですが、日常の党の方針の問題についていうと、党機関の幹部・活動家として、党の方針について、自分の胸におち政治的な確信になるところまでしっかりとつかむということを、重視する必要があります。たとえば、ある方針がだされたときに、なぜこの方針がうちだされたのか、どこにこの方針の特徴があるのか、この方針で情勢を前むきに打開できるという根拠はどこにあるのか、そこまでふくめて方針を生きいきとつかみ、自分の確信となるところまで深める努力が大切であります。

 党機関で討議する場合にも、ひととおり読んで感想をだしあっておしまいというような程度にとどめず、党機関の胸におち確信になるところまで議論を深める、この努力が重要であります。

 「政治指導」とは何かということが、大会前によせられた意見のなかにいくつかありました。これも、根本はそこにあるのであります。党機関の幹部自身が努力してしっかり身につけた内容で、支部と党員に情勢と方針を徹底し、支部や党員が確信をもって当面する諸課題に自覚的にとりくむ状態をつくりあげること、ここに「胸におちる指導」、「元気のでる指導」ということの内容があります。その基本は第十一回党大会でくわしく解明されている「指導とは納得である」という精神であります。

 機関の指導のなかで、たとえば支部長会議という問題があります。これは、組織全体の状況をつかみ、情勢と方針について意思統一をするもっとも重要な節目をなす会議ですから、よく準備し、支部の同志たちが「参加してよかった」と実感できる会議にすることは絶対必要なことであって、そのためにあらゆる力をつくす必要があります。

 指導の問題でいいますと、いわゆる「中二階」の指導という問題も依然として残っています。これは、全国どこにでもあるということではありませんが、東京などの党組織にはかなり根深く残っている問題で、地区を地方議員の選挙単位などいくつかのブロックに分けて、日常の支部指導を選挙区あるいはブロックにまかせるというやり方であります。これを「中二階」といってきたのですが、地区委員会がもっぱら「中二階」をつうじて支部を指導するというこの体制が日常的になりますと、地区と支部が直結してのほんとうの全面的な指導はできなくなります。支部の活動や意見、気持ちも肝心の党機関に反映しないという官僚主義的な体制もそこから生まれます。この問題は長い慣例だからということで先のばしにすることなく、本気で解決する必要があると思います。

 もちろん、地方選挙のときに、候補者単位の選挙対策の組織を、関係支部をまとめてつくることは、選挙戦の普通のやり方であります。しかし、このやり方が選挙戦の時期の、活動形態にとどまらず、日常普段の党の組織体制として固定化されて、地区委員会と支部とのあいだの直接のつながりを弱めるものになってしまうと、そこにやはり危険な弱点があらわれるわけです。この問題の解決にもしっかりと今後あたってゆきたいと思います。

 最後にいいますと、「支部が主役」という活動を発展させるうえで、党中央委員会の決定など党の全国的な方針を、中間の機関での具体化を待たず、支部自身が方針をつかんで活動することの重要性を、いままで強調してきました。この点では、支部が党の全国的な方針を早くつかみ、自主的に支部の活動に生かして活動するという活動態度が重要です。そのためにも、発表された方針を早く読み討議することはもちろんですが、リアルタイムで全国的方針を全国に伝える衛星通信の活用を今後さらに重視したいと思います。

 この大会の報告も、みなさんと同時に、多くの県・地区でたくさんの同志が、現在同時刻で視聴しています。前大会以来、県・地区委員会に受信設備を設けて、中央委員会での報告や節目をなす演説、講演などを送信してきました。しかし、実情をみますと、利用状況には、地方ごとに非常に大きな開きがあります。今後、これを党活動の大事な問題として位置づけて、より多くの党員が衛星通信を視聴することができるように、この体制の充実を今後さらにはかってゆきたいと思います。

第三。選挙戦の推進・指導に熟達する

 第三の問題は、選挙戦の推進・指導に熟達するという問題です。

 党の重要なたたかいでは、支部にたいする日常の指導だけではなく、党機関の政治指導の力量が、根本から問われる場合が少なくありません。とりわけ、選挙戦へのとりくみは、それぞれの機関の政治指導の力量が試される最大の試金石ともなります。

 実際に、国政あるいは地方政治のレベルの選挙戦は、多数派をめざすわが党の活動のなかで、もっとも重要な節目をなすたたかいであります。全国的にほぼ共通の情勢のもとでも、党機関の指導の良しあし、強さ弱さで、前進もあれば後退、失敗も生まれるということは、あらゆる選挙で痛感されていることです。

 この点で、どうしても必要なことをいくつかあげておきますと、一つは、党の全国的な方針を正確に深くつかむということです。党の決定でくりかえし確認されており、全国の選挙戦の無数の経験で試されていることで、もう選挙戦の常識的な方針になっているはずだと思われることでも、選挙戦をたたかってみると、案外、徹底していないとか、方針とは反対のことがおこなわれているということに気づくことは、少なくありません。

 全国の党組織は、活動家の新陳代謝が不断におこなわれていますから、そういうものは意識的に徹底して、自覚的な方針にしていかないと、確立しません。そういう点をしっかりつかんで、徹底する。これが一つの問題です。

 また、その立場で、地方・地域の情勢を分析し、その情勢にかなった形で方針を具体化するということは、その地方・地域の党機関ならではの仕事であります。党の全国方針というものは、その地方の情勢にかみあって具体化してこそ、生きた力を発揮します。政党状況をふくむ政治情勢、住民の要求からみた政治的争点、住民の要求と運動の状況、相手陣営の状況と問題点など、選挙戦をめぐる具体的な情勢を研究するのは政治戦をたたかうもっとも基礎的な活動の一つであって、それをなおざりにしては、選挙戦の生きた政治指導はありえないのであります。

 さらに、そういう分析・方針にもとづいて、党と後援会の意思統一をおこない、活動を積極的に組織することも、大事な仕事であります。だいたいどんな方針も出しっぱなしではだめなのであって、その方針にもとづいてどれだけの規模で党と後援会の自覚的な立ち上がりに成功するかが要です。そのためにも支部、後援会の実態をどれだけつかんでいるかが問われるし、かぎられた期間内に必要な手だてを機関が指導性を発揮して、どれだけうってゆけるか、等々で、党機関の政治的指導性が具体的に試されます。選挙戦のたたかい方についても、どん欲な研究精神をもって事にあたることを望みたいと思います。

 以上は要をなす問題の一部をのべたにすぎませんが、そういう問題もふくめ、わが党が多数者になる過程でくりかえしたたかわれる選挙戦で、熟達した指導性をそれぞれの地方・地域でいかんなく発揮するよう、おおいに努力をもとめたいのであります。

第四。党活動を財政的にささえる計画的活動

 第四に強調したいのは、党活動を財政的にささえる計画的な活動という問題であります。一口にいえば、財政活動を軽視しないということです。この仕事はどこかで専門の裏方の人がやってくれている仕事で、党全体にはあまり関係がないなどの思い込みがあるとしたら、これは一掃して、党全体でこの活動にとりくむという問題であります。

 だいたい、企業・団体の政治献金や政党助成金を拒否し、大衆とともに歩む財政活動で党活動全体をささえているというのは、日本共産党の積極的な伝統であり、党によせられる信頼の重要な源泉の一つともなっています。

 先日、九六年の「政治資金収支報告書」が公開されました。この報告書について、マスコミでもさまざまな反応がありました。今回の反応の一つの特徴点は、企業・団体の政治献金を拒否し政党助成金も受けとらないでとりくんでいるわが党の財政活動について、多くの積極的な評価がよせられたことであります。ある新聞は、「政党は資金で自立の努力を」と題した社説を発表しました。そこでは、「国民の税金に頼って政治活動をする現状は、健全な政党の姿とはいえない」と、政党助成金に依存している各党の現状に批判をくわえると同時に、「主要政党のうち、資金面で完全に自立しているのは、機関紙収入に大きく依存する共産党だけだ」という評価が率直に語られていました(東京新聞九月十九日付)。ここに、わが党の財政活動の、まさに政党の根本にかかわるものとしての値打ちがあり、輝きがあるのであります。

 この活動は、全党の意識的な努力の集中によってのみ、維持し発展させうるものであります。財政を、党の裏方だとか、党活動の後始末程度に位置づけて、真剣なとりくみを欠いたら、重大な失敗、弱点を生みだしかねない、この点が大事であります。四中総で、全国の経験のなかから、党費納入を、党建設の「すぐれて政治的な問題」と位置づけ、県委員長・地区委員長が先頭に立って、真剣な努力をはらってきたいくつかの先進的な経験を評価したのは、その立場からでした。この位置づけを全党のものにしたいと思います。

 全党には、この点でしっかりした前進ができる本来の力があります。昨年の総選挙にあたって、九億円の供託金をみごとに全国で成功的に達成したのは、政界を驚かせたすばらしい成果でしたが、わが党のこの力のいかんのないあらわれでした(拍手)。そしてこれは、日本共産党が国民とともに歩むかぎり、広大な財政的基盤が国民のささえのなかにあることの実証であります。

 この成果を一時的な成功にとどめず、この成功をふまえて、財政活動の健全な発展への一段の努力をすすめることが重要であります。

 党機関の財政には、いろいろ困難な条件があります。しかし、近年の活動上の特徴の一つをみますと、きわめて困難な状況に落ち込みながら、自主的な努力でそこから抜け出した一連の地区機関が生まれてきていることです。この経験をよくみてみますと、それはなにか特別な手だてをこうじてえられたという成功ではありませんでした。

 ある地区は、年に数百万円の赤字をうみ、一千万円の未払い金をもつというかなりきびしい条件に落ち込みました。それを二年たらずで、年間の財政赤字を克服するところまで前進したのです。何がその要となったかを聞くと、党費納入を重視してその納入率を引き上げたこと、支部中心に機関紙集金体制を確立したこと、支部が主役の大衆募金を徹底したこと、この三つだということでした。

 また、ある地区は、三年前には借金・未払い金・滞納などを三千万円もかかえるという大変な状態でしたが、いまは、借金も未払い金もない健全財政に三年間で立ち直りました。そこの教訓も、党費納入、対読者一〇〇%集金、割り当てでなく支部の自主性をひきだす募金活動だったと聞きました。

 結局どこでも、「財政三原則」の本格的な実行が決め手だったのであります。ここには全党がくみとるべき大きな教訓があります。

 財政問題を党活動の柱と位置づけて大きな光をあて、この面でも確固として前進できる体制をきずきあげたいということを、強調するものであります。

第五。幹部・活動家の系統的な育成後継者問題

 第五に、幹部・活動家の系統的な育成、後継者問題についてのべたいと思います。

 党機関でも、支部でも、大衆組織のグループでも、党活動のあらゆる分野で長期の展望をもった活動をするためには、後継者問題への系統的、意識的なとりくみが大切になっています。新しい党員を大きな規模で迎えいれつつある躍進の時期にこそ、意欲的にその推進にあたる必要があります。党中央としても、二十代、三十代の地方幹部活動家を対象にした党学校の開催などをひきつづき計画してゆくつもりですが、この分野に一つの力をそそぎ各地方で努力を強化することをもとめるものであります。

 党全体としていえば、前大会で強調したように、青年層を大きく党に迎えいれること、民主青年同盟の発展を援助することが、後継者問題を解決するもっとも大局的でもっとも重要な課題であります。中央でも地方でもそのとりくみをさらに一段と強化したいと思います。

第六。党の質的な水準の問題

 第六に、党の質的な水準の問題であります。いまわが党は躍進の第一歩、第二歩を記録しているとはいえ、政治革新をめざす闘争の前途に、今後さまざまな局面がおこりうることは、当然予想されることであります。わが党の今日を考えるとき、六〇年代の覇権主義との闘争とか、七〇年代以降の第二次反動攻勢との闘争とか、そういうなかで党がきたえられたこと、それが党の今日の発展段階を準備したことは、多くの同志が実感をもって感じていることだと思います。

 そしていま迎えている党の躍進の時期に、大きな党を建設すると同時に、反動派のどんな攻撃をもうちやぶる力量をもった党、もっともっと広大な国民諸層としっかり結びつく力をもった党の建設をめざし、理論、政治、組織の各分野で、質の高い党をつくる特別な努力が重要であります。

 また、社会生活のゆがみは意識的な努力がないと、やはり党のなかにもあれこれと浸透するものであります。新しい社会、新しい政治の建設者をめざす党として、社会的・階級的道義にかかわる問題はもちろんのこと、よりひろく市民道徳に属する分野の問題でも先進的な役割をになうということは、当然の立場であります。この点は、政治の舞台で党を代表する議員、議員団の活動でも、特別に留意する必要があることも強調しなければなりません。あらゆる面で、新たな躍進にふさわしい質をもった党の建設に全党の努力をもとめたいと思います。

統制委員会・監査委員会・訴願委員会からの報告について

 なお、中央委員会は、九月二十日の第九回総会で、統制委員会、監査委員会および訴願委員会の三つの委員会からこの三年間の活動についての総括的な報告をうけ、それぞれ報告を承認しました。そのことを報告します。

 統制委員会の報告のなかでは、この三年間の党規律をめぐる状況の一つの特徴として、わが党の路線への確信のなさと結びついた党規律違反が前期よりはるかに少なくなったことが指摘されました。これは、党の躍進という情勢の、党の政治的思想的団結への反映として、重要な点であります。また、秘密警察などによるスパイ工作がひきつづき執ようにおこなわれている状況がある、しかし、党員の側に秘密警察の本質にたいする認識が弱い場合があったということも、報告されました。この間、この問題では、当時の緒方国際部長宅への盗聴事件での裁判闘争の勝利など、大きな成果がありましたが、公安警察はこの事件からなんら教訓をくみとることなく、スパイ工作などを依然としてつづけています。そういう状況のもとで、この面での教育的な指導はひきつづき重要であります。

 監査委員会からは、中央委員会の財政活動と財産管理、および党の国会会計について監査がおこなわれ、それぞれ適正におこなわれている旨の報告がありました。

 訴願委員会は、前大会でその位置づけを規約にも明記し、重要性をあらためてはっきりさせた委員会であります。報告では、訴願は、年間平均して百件にのぼっていること、内容は多岐にわたるが(1)迅速、(2)正確、(3)責任性の三点を活動の基準として誠実に処理にあたってきたこと、その経験からも、訴願の問題の解決は党の団結の前進の契機となる、そういう確信をつよめていることが報告されました。


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