2007年1月14日(日)「しんぶん赤旗」

主張

安倍NATO演説

憲法度外視の危険な踏み込み


 安倍首相は日本の首相として初めて北大西洋条約機構(NATO)の意思決定機関である北大西洋理事会(NAC)で演説し、NATOとの安保協力の方針を表明しました。

 「世界のなかの日米同盟」路線にもとづき戦争することができる態勢づくりを強めつつある日本と、米・欧諸国の軍事同盟であるNATOとの安保協力は、孤立を深めているブッシュ政権の世界戦略を活性化させる役割をもちます。安倍首相の方針は、日本の憲法九条をふみにじり、国連の平和秩序をおびやかすことは避けられません。

米政府のシナリオで

 おどろくのは安倍首相が、「自衛隊が海外での活動をおこなうことをためらいません」と明言したことです。世界のどこにでも自衛隊を派兵すると宣言したのも同然です。

 「憲法の諸原則を順守しつつ」といいますが、それこそ憲法が世界各地で自衛隊が軍事活動するのを認めているかのようにいうものであって、戦争することを禁止し武力による紛争解決を禁じた憲法九条の先駆的意義をおとしめるものです。

 憲法九条をもつ日本が、集団的自衛権を行使し軍事介入するNATOと協力関係を結ぶこと自体許されるはずがありません。

 安倍首相の方針はNATOとの戦略対話という範囲にとどまらず、軍事分野での協力にまでおよんでいます。アメリカのアフガニスタン報復戦争支援としてインド洋でおこなっているNATO諸国軍などの艦艇への燃料補給活動だけでなく、NATO軍がおこなっている治安作戦についても「支援の強化」を表明しました。「非合法武装集団解体」も実施するといっています。

 昨年五月、同じ場所で麻生外相が「最後には政策協調のみならずオペレーショナルな面もどのような協力が可能かを見つける」とのべたことと重ね合わせると、「条約なき軍事協力」に向けた動きを加速しているのは明白です。ブッシュ大統領は昨年十一月のNATO首脳会談に先立つ演説で、NATOに日本との「統合訓練・演習、共通防衛計画の立案」にあたらせるとのべています。

 安倍首相は国連憲章についてはいっさい言及せず、もっぱら日本とNATOが世界的課題の主役であるかのようにのべています。「グローバルな課題の解決に向けた責任感を共有」といい、「互いに持てる能力を発揮しともに行動する必要がある」とNATOを説得さえしています。

 NATOはイラク戦争ではフランスやドイツなどが反対し、アフガニスタンでも激戦地の南部に戦闘部隊を送ることを拒否する国もあって、アメリカが求めるような機能を発揮できる状況にはありません。そのためブッシュ政権はNATOとその他の「機構間との協力を深めなければならない」(二〇〇六年三月「米国家安全保障戦略」)といい、NATOの機能強化をはかりつつあります。

 首相の演説は米政府の意向を代弁し、NATOにその軍事機能の強化を促すものであることはあきらかです。

平和の流れとの合流

 世界平和の課題は国連憲章にもとづき国連を中心にすすめるべき問題です。仮想敵国をもつ軍事同盟を強化することは戦争のない世界をつくるうえで有害無益です。いま世界は軍事同盟の時代から平和の共同体の時代に大きく変わりつつあります。

 憲法を生かして世界の平和の流れに合流することこそ日本が進むべき大道です。


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